アイコン 長寿の秘訣は免疫細胞「CD4陽性キラーT細胞」にあった

 

 

110歳以上の特に長寿の人たちについて、血液を詳しく調べると、通常の人にはほとんどない特殊な免疫細胞が多く含まれることを理化学研究所などが突き止めました。長寿のメカニズムの解明につながるとして注目されている。
理化学研究所と慶応大学のグループは日本国内に約140人いる110歳以上の人たちのうち、健康な男女7人の血液を詳しく調べた。
その結果、110歳以上の人たちの血液にはがん細胞などを攻撃する免疫細胞「キラーT細胞」が多く、中でも、特に「CD4陽性キラーT細胞」と呼ばれる細胞は20~70代までの45人の平均と比べて、約10倍含まれていたという。
特に長寿の人たちでは、感染症やがんなどに対する免疫が強く働くことで、健康が維持されているとみられ、研究グループでは今後、「CD4陽性キラーT細胞」がどのような役割を果たしているのか明らかにしていきたいとしている。

研究成果は、科学雑誌「アメリカ科学アカデミー紀要」のオンライン版に発表された。

2015年12月21日の理研のリリース
理化学研究所(理研)統合生命医科学研究センター免疫シグナル研究グループの斉藤隆グループディレクターらの共同研究グループは、特別なキラーT細胞の分化にタンパク質「CRTAM」が重要であることを発見した。リンパ球の1種であるT細胞は、CD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞とに大別され、CD8陽性T細胞はウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷する「CD8陽性キラーT細胞」に分化し、CD4陽性T細胞は、さまざまな免疫応答を助ける「CD4陽性ヘルパーT細胞」に分化する。

CD8陽性キラーT細胞は、強力な細胞傷害活性によりウイルス感染細胞を殺傷できるが、感染が慢性化した場合などには、徐々にその活性が弱まることが知られている。このような状況下、CD4陽性T細胞の一部が、細胞傷害活性を持つキラーT細胞(CD4陽性キラーT細胞)に分化して働きを補うことや、高い抗腫瘍効果を持つようになることなどが報告されている。
しかし、CD4陽性T細胞の一部がどのようにCD4陽性キラーT細胞へと分化するのか、そのメカニズムは分かっていなかった。

共同研究グループは、一部のCD4陽性T細胞にCRTAMが発現していることに注目し、その機能を調べた。
その結果、CRTAMが発現しているCD4陽性T細胞がCD8陽性キラーT細胞と似た性質を持ち合わせること、また、CD4陽性キラー細胞に分化することを突き止めた。
さらに、人為的にCRTAMの遺伝子をCD4陽性T細胞に発現させたところ、CD4陽性キラーT細胞へと効率的に分化した。
これらの結果から、CRTAMが発現しているCD4陽性T細胞がCD4陽性キラーT細胞に分化するには、CRTAMが重要な働きをしていることが示されたとしている。

CRTAM
CD8陽性キラーT細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などが活性化されて細胞表面に発現するイムノグロブリン(Ig)ドメイン(領域)を2つ持つ接着レセプターの1種。結合するリガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)はCADM1で、表皮細胞や樹状細胞などに発現している。CD8陽性キラーT細胞では、リンパ節から末梢に成熟分化する過程を制御していることが知られる。

CD4陽性ヘルパーT細胞
ヘルパーT細胞はリンパ球の一種で、さまざまなサイトカイン(細胞間の情報伝達を担うタンパク質の総称)の産生を誘導し、抗体を分泌するB細胞の活性化を促進する。CD4は、ヘルパーT細胞や樹状細胞などに発現している膜貫通糖タンパク質で、MHCクラスIIに結合する。
CD4陽性ヘルパーT細胞は、主にCD4陽性T細胞から分化し、産生するサイトカインによってTh1(IFN)、Th2(IL-4)、Th17(IL-17)などに分類され、それぞれ機能分化を誘導するサイトカインや転写因子も知られる。Th1、Th2、Th17はそれぞれウイルス感染、寄生虫感染、真菌感染に対抗する免疫応答を起こす。

CD8陽性キラーT細胞
キラーT細胞はリンパ球の一種で、感染細胞やがん細胞を特異的に殺傷する。CD8は、T細胞受容体の共受容体として働く、膜貫通糖タンパク質で、MHCクラスIに結合する。
標的である感染細胞やがん細胞を抗原特異的に認識し、キラーT細胞が接着し、細胞傷害を誘導するタンパク質であるグランザイム(gzmB)やパーフォリン(pfr)などを放出して標的細胞を殺傷する。
 

[ 2019年11月13日 ]

 

 

 


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