京都大学の垣塚彰教授らは、アルツハイマー病の進行に対して抑制効果のある成分を見つけたと科学誌に発表した。
アルツハイマー病を発症するマウスに、植物のホップの雌株の花に含まれる成分を薄めた水溶液を飲ませたところ、記憶力の低下を防げたという。
アルツハイマー病は、酵素によって作られた「アミロイドベータ」(タンパク質)が、脳内で凝集したり・蓄積することで神経に悪影響を及ぼし、発症する。
「ヒシュカ」(=ホップの雌株の花に含まれるエキス)にアミロイドベータを作る酵素「γセレクターゼ」の働きに対する抑制効果があることが分かった。

実験は、アルツハイマー病を発症するように改変したマウスに、生後6週目からヒシュカ0.2%を含む水を飲ませ続けた結果、生後9ヶ月の段階で、迷路を用いたテストで調べたところ、飲ませなかったマウスは9ヶ月には記憶や学習能力の低下が見られたが、飲ませたマウスでは15ヶ月目以降に低下が始まり、抑制効果が実証されたとしている。垣塚教授は、Aβが溜まり始めるとされる40代から摂取するのが望ましいのではないか。予防に加え症状が軽い場合に進行を遅らせる効果も期待できると話しているという。
なお、当研究にはサッポロビールが協力し、今後商品化する予定。

「ホップ」予防効果が確認されたのはホップの雌株の花に含まれるエキス。
中国では、「ヒシュカ」という生薬として鎮痛薬として販売されており、西欧ではハーブとして用いられている。
当研究は、2011年に公表されていたが、あらためて2014年1月30日付の米オンライン科学誌「プロス・ワン」に掲載された。

<アルツハイマー病>発症する過程  100年前から研究されている課題
早い人は40歳代後半に始まり5年で重症化する
1、βタンパク(アミロイドベータ)増加
βタンパクは神経細胞によって産生され、周囲に放出されるとすぐネプリライシン(酵素の中性エンドペプチドの1種)と言う酵素で分解される。しかし、分解が弱まるとβタンパクが塊になる。
2、「中性エンドペプチド(酵素)」が減少
3、微小管を安定化させる為に働く蛋白質のタウタンパクが増加、脳脊髄液中で確認。
βタンパク が溜まりすぎるとタウタンパクに異常を来し、微小管に結合出来なくなってしまった異常なタウタンパクが増加。
4、神経原線維変化=「神経細胞死」の固まり発生
5、アルツハイマー病発症

<自己診断>
初期症状
○職場で手紙の住所や日付を書き間違える。
○つじつまが合わない文章を書くようになる。
○人の名前を忘れる
○モノをしまった場所を忘れる
○約束を忘れる

進行症状
○通勤の道を間違える。
○家の中でトイレと台所を間違える。
○自分の年齢が分からない。
○言葉の最後の数語を反復させる。
○1語を反響させるかのように何度も繰り返す。
○人形を子供と信じてなでたり、あやす。
○食事をしたことを忘れ、食べたばかりなのに“食事はまだ?”と催促する。
○乾いた洗濯物を、また洗濯機に入れて洗おうとする。
○鏡に映った自分を他人と思って話しかける

重症化
○人格が変化し、
○感情的に不安定になり、徘徊したり、
○環境に適応出来ずに様々な問題を引き起こし、
○ついには精神の荒廃状態に陥り、
○言葉を発することも出来なくなり、寝たきりになる。