建設現場小泉政権時代、政府はゼネコンの談合体質に圧力をかけ、それを受け、ゼネコンの団体である土工協は談合廃止宣言を行った。談合係のセクションは全国の支店で廃止され、プールしていた裏資金も本社に吸い上げられた。
官庁も民間工事より官庁工事が割高だとして、入札価格の下限をなくした。その結果、入札ではタタキ合いになり、落札価格が予定価格の7割という落札価格が大量に出現した。また、官庁の積算単価も大幅に見直された。
(官 庁工事が高いのは、(1)建築設計士の高級資材を大量に持ちいらせる大盤振る舞いの設計仕様に大きな問題がある。(2)また、官庁建物は民間で考えられな いぐらい、公団仕様など細かな建築規定があり、それに準拠する必要がある。そのため割高となる。一概に官庁工事は利益が出るというものではない。バブル時 代とは違う。土木工事はその限りではないが・・・)

例えば、A種労務費の日当積算単価18,000円が2割カットされ15,000円となった。入札ではタタキ合いになり、7割で落札した場合、10,500円となる。ゼネコンはそれから利益(ゼネコンの営業費用)を1割以上差し引き、9,000円前後で下請けに発注する。

建設下請業界は、見る見る間に工事の現場予算がなくなり、3Kの工事現場から若者がいなくなった。
その後、官庁工事は少し見直され、官や議員が談合しやすい総合評価制度を導入、予算価格の82~90%前後で落札されるようになった。しかし、積算単価はさらに大幅に落ち、3Kでも重労働で技術を要する鉄筋や鉄骨・型枠工などでの若者の大幅減少が続いた。転職しにくい年配者ばかりが残った。
下請け会社の現場作業員は、ほとんどが日給月給制である。働いた日数分だけ収入となる。通常、日曜日以外仕事はあるものの天候にも左右され、雨が降ったら仕事にならず、収入が減る。晴れが続けば、日曜日以外仕事が続き休暇が取れない、工期遅れが発生すれば、日曜日でも仕事をすることになる。・・・故に3Kなのだ。

国交省は、公共投資が平成9年を境に減っていたことから、建設労働者数を大幅に減らすことが求められていた。国主導で、建設業界へ異業種参入など働きかけていた。しかし、なかなか減らず、積算単価予算を減らすことで、建設労働者を減らしてきた。若者が減り、就職の宛てのない高齢者が残った。
そうした、国策により、建設労働者が若年層を中心に減り続けてきた。特にリーマン・ショック前は仕事はあるが予算がない現場ばかりで忙しいばかり、大幅に若年層が減った。
ここにきて3.11の復興工事、アベノミクスの景気回復の為と称する公共工事の全国タレ流し、黒田日銀丸の超低金利下における資金のタレ流しが続き、消費税増税で減るはずの建築投資が減るどころか増え続けている。2020年の東京5輪まで続くことは、過去のオリンピック開催国の歴史がし用命している。
その結果、現在、建築技能労働者の絶対数が足りず、大幅賃金上昇を招いてきた。公共事業も、大幅に賃金が上昇していることなどお構いなしの現実離れした官庁工事の積算予算に対して、応札者が現れない入札案件が多発してきた。

安易に外国人技能労働者を受け入れることより、圧倒的に少なくなった若年技能労働者の賃金上昇と育成が求められている。
東京5輪までに高齢者のかなりの部分がリタイアすることになり、東京5輪以降も若い建築技能労働者の食い口はあろう。
日本総研の見解は、外国人建築労働者を受け入れ、東京5輪後、ゼネコンは海外へ展開せざるを得なくなり、そのときの建設労働要員になり、一石二鳥だと説明していた。だが、日本のゼネコンは造りがバカ丁寧・地震もあり屈強に造る体質から、海外での受注競争力は国の紐付きでない限りまったくない。韓国勢はプラント建設まで入れ、本年は8兆円の受注が予定されている。まったくは歯が立たない。中国勢も台頭して生きている。
ゼネコンは20年までは国内で喰っていけようが、その後はゼネコンそのものが危うい。
外国人建設労働者については、研修生(現実には実務労働者)の期間を3年から5年にする案が検討されているが、それくらいは是認する必要がある。しかし、大幅緩和策は、賃金を下げることになり、基本をなす日本人の若年労働者が育たない。
安倍政権は、財界が言うことを丸呑みするばかりで、何ら知恵を出していない。派遣労働者の増加政策もしかりだが、労働者賃金の総賃金が減れば、需要が減り、デフレに至ることは必然だ。それも増税ときたら、デフレを推奨するようなもの。10年・20年先も考えた執行が求められる。
当記事は、元建設業に従事していた記者によるもの。