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京都大の高折晃史教授(血液学)らのチームは27日までに、血液のがんの一種「多発性骨髄腫」の悪化や抗がん剤への耐性化に、特定の酵素の増加が関与しているとみられると、英科学誌「Scientific Reports」電子版に発表した。

がんは経過とともに遺伝子変異を蓄積しクローン進化を引き起こす。多くのがん患者では当初有効であった抗がん剤治療に対して抵抗性になることに、このクローン進化が関与していると考えられているが、その分子メカニズムは解っていなかった。
増加を抑制できれば、抗がん剤の効果を維持するなどの治療法開発につながる可能性があるとしている。
この酵素はAPOBEC3B。チームは、多発性骨髄腫の一部の患者でこの酵素が過剰に増え、治療成績も悪いことに着目した。

骨髄腫患者の細胞を使用した体外での実験で、APOBEC3Bがあまり作られないようにすると、病状の悪化や抗がん剤への耐性化の原因になるとみられる遺伝子変異の蓄積が見られなくなった。APOBEC3Bが普通に作られる場合は遺伝子変異が蓄積した。

チームによると、APOBEC3Bは約10種類あるAPOBECのうちの一つ。
APOBECは乳がんや肺がん、子宮頸がんなどでも遺伝子変異を引き起こす要因の一つとして報告されている。

多発性骨髄腫は、骨髄で作られる血液細胞の一つ「形質細胞」ががん化し、骨髄の中で増え続ける疾患。出血や骨折をしやすくなり、感染症にもかかりやすくなるほか、腎臓障害などを起こすこともある。
以上、