アイコン テスラからパナソニックが協力要請を受けた「4680」バッテリーとは

Posted:[ 2020年10月31日 ]

米EVメーカーのテスラからパニソニックは開発協力要請を受けたと発表した。テスラは9月、価格を現在の半値程度に下げつつ性能を改善した「4680」バッテリーを3~4年以内に生産すると発表していた。「4680」バッテリーは、基幹部品であるセルの規格を従来の2170(直径21ミリ・長さ70ミリ)から4680(直径46ミリ・長さ80ミリ)に大型化した製品で、工程の改善により価格は56%下がり、走行距離は54%伸びるという。

テスラは「4680」規格のバッテリーを2~3年以内に量産し、2022年には100ギガワット/時、2030年には3テラワット/時の生産能力を目指すとしている。

テスラが、2~3年のうちに100ギガワット時の生産能力を立証するという具体的な計画を示したことがバッテリー業界に注目されている。100ギガワット時はEV向けバッテリー市場で世界シェア1位に立ったLG化学の生産能力に匹敵し、2~3年でこれほどの能力を構築すればバッテリー業界にとって十分に脅威になる。
テスラは数年かけて大規模なバッテリー生産能力を確保し、バッテリーメーカーへの依存度を下げようとしている。そうすれば需給バランスから競争関係に変わるとみられている。



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一方で、短期間に大規模な製造設備などを整備することは不可能に近く、象徴的に提示した数値である可能性も高く、それほどバッテリーの供給不足が深刻だという意味にも捉えられている。
テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は9月、22年にバッテリー供給が不足する可能性を挙げながら、パナソニック、韓国のLG化学、中国のCATL(寧徳時代新能源科技)など従来の供給元からの購入を増やす考えを示している。

そして、テスラは、「4680」バッテリー開発に従来からのパナソニックに協力を要請した。
パナソニックはテスラとの合弁でネバダ州にバッテリー製造工場の「ギガファクトリー」を開設している。工場は3階建で1階はパナソニックがセルを生産、2階でテスラが製品化している。2018年までに20ギガワットのバッテリーを生産している。
「ギガファクトリー」の総敷地面積は3200エーカー(13平方キロメートル)もあり、工場はいくらでも建設できる。

車両用バッテリーメーカーは半導体のように生産会社が現在は限られているが、大手自動車メーカーも車両価格に対するバッテリーコストが高く、当然、バッテリーメーカーと合弁生産もしくは自社生産してくることになる。
(スウェーデンのノースボルト社は自社製品工場とともにVWとの合弁工場を建設中でもある)

現在、欧州の環境規制強化もあり、欧米メーカーが今年に入り急速にEV生産体制にシフトしており、バッテリー不足が懸念されている。そうしたことから自動車メーカーは、バッテリーメーカーから安定供給を受けるため、高値で長期契約を締結している。韓国のバッテリー御三家(LG化学+サムスンSDI+SKイノベーション)はその恩恵に授かっているが、これまでの先行投資額は大きく、回収段階が続く。

韓国の御三家は、日本のサラリーマン経営者と異なりオーナー企業、戦略的な投資には積極的過ぎるほど積極的、製造業もグローバル化した時代、日本の経営者も、先を読み世界に視野を持つ経営のプロにバトンタッチさせる時期に来ているのかもしれない(米国のITを除く既存大手のほとんどは経営のプロが経営し、数年単位で成果を出さなければ株主から首を切られる)。

EV価格はバッテリー価格が高いため高く、普及させるには各国政府の補助金が必要だとされている。しかし、新コロナ事態により各国政府は財政が厳しくなっており、生活者や企業向けの支援はあってもEVに対する購入補助金支出には限界があると見られている。
また、先行したテスラや日産は経験からEVの火災問題などをほとんどクリアーしているが、韓国御三家のように納品自動車メーカーの車両火災問題を引き起こしてしまえば、今後、EVを購入する側も安全面で疑心暗鬼になり、普及が遅れる可能性もある。

さらに、現在のリチウムイオンバッテリーは、近い将来、出力がより大きいリチウム硫黄電池や安全で出力が大きな全固体電池などに置き換えられる可能性も指摘されており、リチウムイオンバッテリーはそうした新製品群との競争にもさらされ、開発への先行投資も続くものと見られる。

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↓富士経済の市場規模調査
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