アイコン 「敵は建築家にあり」⑯/福岡の設計デザイン会社の住宅瑕疵問題

北九州市の施主が、建築ジャーナル社の本に掲載されていた福岡市の有名な設計デザイン事務所のS建築家に、デザインから施工会社手配まで住宅建築すべてを依頼。

しかし、住宅が完成して住んだものの、補修工事が2年以上発生し続け、しまいには床下浸水、建築基準法違反内容なども発覚、そのため訴訟を起こしたものである。施主の奥さんが「敵は建築家にあり」というブログで、ブログ閲覧者からアドバイスを得ながら裁判を闘っている記録を追った。
訴状を記したブログである。

訴       状

請 求 の 趣 旨

1 被告らは、原告に対し、各自×万×円及びこれに対する平成17年10月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
 との判決並びに第1項につき仮執行宣言を求める。
                請 求 の 原 因
1 本件プロジェクト契約の締結
 原告は、平成16年1月12日に被告株式会社設計デザイン事務所(以下「被告 設計デザイン事務所」という)と「R邸(仮称)新築プロジェクト契約」(以下 「本件プロジェクト契約」という)を締結した(甲第1号証)。
  その内容は、原告が別紙物件目録1~4記載の土地上に別紙物件目録5記載の居宅建物
(以下「本件建物」あるいは「本件居宅」という。甲第3号証)を新築するにあたり、被告設計デザイン事務所が業者の選定を含む基本構想をまとめると共に、設計・監理を行い、原告は被告設計デザイン事務所に対し報酬金×万円(消費税込み。甲第1号証)を支払うというものである。
本件プロジェクト契約を結ぶにあたっての原告との交渉は、被告設計デザイン事務所の代表取締役の一人である被告S(以下「被告S」という)が専ら行ったが、被告Sの説明によれば、被告Sが責任をもって本件プロジェクト契約に関する計画策定や設計、監理等を行うとのことであった。
被告Sは、建築雑誌等に著名な建築家として取り上げられていたことに加え、被告S自身が設計、監理を行うとの説明を被告Sから受けていたため、原告は、被告Sが一級建築士であると信じ、被告設計デザイン事務所と本件プロジェクト契約を結んだものである。
2 本件請負契約の締結
被告設計デザイン事務所による施工業者選定の結果、被告株式会社施工会社(以下「被告施工会社」という)が原告の本件居宅新築工事を施工することに決まり、平成17年3月8日に原告を注文者、被告施工会社を請負人、被告設計デザイン事務所を監理者として、下記約定により工事請負契約が締結された(甲第2号証)。
(1) 工期   平成17年3月10日着工、同年9月10日完成
(2) 請負代金 ×万円(消費税込み)
  請負代金×万円については、工事途中で被告施工会社から前倒しで先に支払ってほし 
いと懇願され、原告は全額を支払済みである。
(3) 引渡時期 検査合格後7日以内
(4) 履行遅滞違約金(甲第2号証17条)
  被告施工会社が上記工期内に工事の完成・引渡ができない場合、原告は、遅滞日数1日あたり請負代金額(工期内に部分引渡があったときは、その部分に対する請負代金額を控除した金額)の1万分の4の違約金を被告施工会社に対し請求することができる。
3 本件建物新築工事の遅滞と瑕疵の一部修補
 被告施工会社は、平成17年3月10日頃に本件居宅新築工事に着工したが、完成予定日である同年9月10日を過ぎても本件建物は一向に完成に至らなかったため、原告は、工事途中の同年10月25日に本件建物に入居した。
 原告が入居した後も本件建物の建築工事が続いたが、その一方で、本件建物が床下浸水していることや、木造部分のY軸方向耐力壁が施工されていない等の様々な瑕疵が判明したため(甲第4号証28頁、29頁、6頁~14頁)、原告は被告施工会社及び被告設計デザイン事務所に対し補修を求め、補修工事と新築工事が並行して行われた。      
4 本件建物の瑕疵、未完成
 漸く平成19年11月末頃に被告施工会社が対応可能な箇所についてのみ本件建物の工事を終えたものの、以下の未完成部分や瑕疵については、原告が繰り返し新築工事の続行及び補修工事を求めたにも拘わらず、被告施工会社及び被告設計デザイン事務所は、
   (中略、)  
5 被告らの責任
(1)被告施工会社の責任
①被告施工会社は、本件建物新築工事の施工業者であるが、本件請負契約の工期が大幅に遅れたことに加え(後述のとおり、未だに本件建物が完成したとはいい難い)、本件建物には完成前から多数の瑕疵が発見され、原告が補修を求めたにも拘わらず、建築関係法令違反が明らかである重大な瑕疵を含む瑕疵の多くについて未だに補修がなされておらず、又、アプローチの壁開口に乳白ガラス5mmが入っていない、食品庫の手洗いに給湯がきていない、2×4部分1階主寝室の軒天井及びベランダの軒天井と外壁の間の隙間を塞いでいないといった未施工箇所も残っている。
 本件建物に多数の瑕疵(建築法令違反や契約違反)、
 未施工部分があることに鑑みれば、本件建物は未完成であるといわざるを得ないから被告施工会社は、原告に対し請負契約の債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。


②上述のとおり、本件建物には多数の瑕疵が存在しており、被告施工会社は、原告に対し請負人の瑕疵担保責任に基づく瑕疵修補に代えての損害賠償責任を負う(民法634条2項)。
(3) 本件建物の瑕疵は、被告施工会社の手抜き工事や施工上の初歩的なミスが原因であり、被告施工会社は、故意又は過失によって原告に対し下記損害を与えたものであるから被告施工会社は、原告に対し、不法行為による損害賠償責任を負う。

(2)被告Sの責任
被告Sは、被告設計デザイン事務所の代表取締役であるが、一級建築士の資格を有していない。にも拘わらず、被告Sは、あたかも自分が一級建築士の資格を有しているかの如き言動を弄し、被告S自らが本件建物の設計・監理を行うものと原告を誤信させて本件プロジェクト契約を結んだばかりでなく、一級建築士である被告O(以下「被告O」という)の名義を借りて、被告Oが設計・監理を行うように虚偽の届出をし、実際には無資格者である被告会社従業員に設計・監理を行わせた。
そのため本件建物については杜撰な設計・監理しか行われず、その結果、本件建物に多数の設計上の瑕疵、施工上の瑕疵が生じるに至ってしまった。
以上からすれば、被告Sは、故意又は過失によって原告に対し下記損害を与えたものであるから、原告に対し、被告Oとの共同不法行為による損害賠償責任を負う。
(3)被告Oの責任
 被告Oは、被告設計デザイン事務所の代表取締役であり、被告設計デザイン事務所の役員や従業員の中で只一人一級建築士の資格を有している者である。
しかし、被告Oは、本件建物の設計・監理に全く関与していないにも拘わらず、被告Sと共謀して、いわゆる名義貸し建築士として本件建物の建築確認申請書類に自己の名前で届出をし、実際には無資格者である被告会社従業員に設計・監理を行わせた。そのため本件建物については杜撰な設計・監理しか行われず、その結果、建物に多数の設計上の瑕疵、施工上の瑕疵が生じるに至ってしまった。
 以上からすれば、被告Oは、故意又は過失によって原告に対し下記損害を与えたものであるから、原告に対し、被告Sとの共同不法行為による損害賠償責任を負う。
(4)被告設計デザイン事務所の責任
①被告設計デザイン事務所は、本件建物についての設計及び監理の契約当事者であるにも拘わらず、設計業務及び監理業務を行うにあたり善良な管理者の注意義務を尽くさず、無資格者に設計・監理を担当させた上、勝手に設計・仕様変更を行ったり、本件建物の設計上の瑕疵、施工上の瑕疵を見過ごした。
 従って、被告設計デザイン事務所は、原告に対し、債務不履行に基づく損害賠償責任を負う。
②被告設計デザイン事務所は、代表取締役である被告S及び被告Oの上記共同不法行為について、原告に対し、会社法350条に基づく損害賠償責任を負うものであるし、無資格従業員につき使用者責任を負う。
(5)被告らの責任の関係
 本件建物の瑕疵には、設計上の手抜きやミス、及び、監理上の手抜きやミスに起因するものと、施工上の手抜きやミスに起因するものとがあるが、前者については、施工業者である施工会社が容易に気付いた筈であるのに被告施工会社は、被告設計デザイン事務所(被告S及び被告Oは、無資格の従業員に丸投げ)にいわれるがままに施工を行っている。
 又、後者については、被告設計デザイン事務所(被告S及び被告Oは、無資格の従業員に丸投げ)は、監理業務を怠って被告施工会社の施工上の手抜きやミスを見過ごしている。
 従って、本件建物に認められる各瑕疵の主たる原因が設計・施工・監理のいずれによるものであるかに拘わらず、被告ら全員が原告に対し損害賠償責任を負わなければならない。
被告ら各々の原告に対する損害賠償債務は、不真正連帯の関係となる。
以上

 

[ 2010年1月21日 ]
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