アイコン 最大4.4兆円/東日本大震災による民間情報通信関連資本の損害額

情報通信総合研究所が試算した東日本大震災による民間ICT関連資本の損害額は最大4.4兆円-情報通信(ICT)関連復興投資のGDP押上げ効果は0.6%、雇用創出効果は35.7万人に-
先日、内閣府より東日本巨大地震による住宅や工場、道路などのインフラ(社会基盤)の被害額が16兆~25兆円にのぼるとの試算が公表された。
これを受け今回、情報通信総合研究所では民間企業の情報資本設備及びICT産業の資本設備の損害額の推計、ICT復興投資によって生じる経済波及効果を算出した。

<東日本大震災のICT経済への影響>
1.東日本大震災によるICT産業の設備損害額と民間企業の情報資本設備の損害額の合計は2.5兆~4.4兆円。
2.復興需要としてICT関連の損害額4.4兆円(最大値)の復興投資がもたらす経済波及効果は、GDP2.9兆円、2010年の名目GDPの0.6%にあたる押上げ効果を持ち、雇用を35.7万人創出。
3.民間企業の情報資本設備(コンピュータや通信施設及びソフトウェア等)のうち、通信施設建設とソフトウェアの投資に関して復興投資1兆円当たりのGDPの押し上げ効果は一般資本設備より大きい。
4.つまり、通信インフラやソフトウェアを充実させるように復興投資を行うことで、日本全体のGDPと雇用に対する波及効果はより大きくなると言える。

【東日本大震災のICT経済への今後の影響】
 東日本大震災がICT経済に与えた影響が徐々に明らかとなってきた。2011年1-3月期のICT生産は前年同期比マイナス2.0%と6四半期ぶりに減少した。
東日本大震災により、シリコンウェハ等のICT部品生産で世界シェアの大きい事業者の複数の工場が被災し、部品関連工場の操業停止や生産ラインの縮小が川下の生産減少をもたらした。
東日本大震災によるICT産業の設備(通信サービス機器や建築物等)の損害額は2.8兆円、ICT産業以外の民間企業の情報資本設備の損害額は1.6兆円と試算されるが、サプライチェーンを通じたICT産業以外への影響も含めればその被害額はさらに拡大。また、ICTサービスも、東日本大震災の影響で、企業のソフトウェア受注が滞り、2011年1-3月期以降の減少トレンドにさらに拍車がかかりそう。

 需要面ではICT消費が減少した。東日本大震災の影響で、家電エコポイント制度の終 了を見越した駆け込み需要が液晶テレビを中心に伸びなかったことが大きく響いた。
ICT機械受注は、金融・保険業や通信業向けに電子計算機が好調だったことや、世界的なスマートフォン需要の増加を背景に半導体製造装置が堅調であったことが寄与し5四半期連続で増加した。しかし未曾有の震災による企業の業績悪化によって設備投資マインドが落ち込んでいることを鑑みれば、今後のICT投資活動の推移には注視が必要。
 一方、今後、復興活動が本格化するにつれてICT設備投資面でプラスの波及効果が生まれることが期待できる。
情報通信総合研究所による試算によれば、ICT産業の設備と民間企業の情報資本設備が受けた損害に対する復興投資がもたらす経済波及効果は、GDPで2.9兆円と、2010年の名目GDP(480兆円)の0.6%の押し上げ効果がある。震災により、クラウドコンピューティングやテレワーク、スマートグリッド等のICTを活用した技術やサービスへの期待が高まりつつある中で、それらを支える設備基盤の重要性も再認識されつつある。
 
実際、今回の試算ではソフトウェア等利活用分野が大いに関係する復興投資については単位当たりの波及効果が大きくなった。つまりICT利活用分野への復興投資がポイントとなり日本全体のGDPと雇用に対する波及効果はより大きくなりうると言える。復旧・復興過程でICT利活用を積極的に推進した様々な取り組みが行われ、新しい利用者層や利用シーンが生まれることが期待される。

 通信インフラ整備などのICT産業の設備の蓄積をもたらすような官民あげての復興投資の活性化が、ICT経済のみならず日本経済の救世主となりそうだ。
以上
 

[ 2011年6月17日 ]
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