アイコン 玄海1号機老朽化問題 脆性遷移温度高く 緊急冷却時に破損の恐れ/金属専門家指摘

運転開始から36年目となる「玄海原発1号機の安全性を考えるシンポジウム」が7月17日、唐津市で開催された。
シンポジウムの講演で、井野博満 東京大学名誉教授(金属材料物性)は、運転開始から36年目を迎える玄海原発1号機の安全性について、金属疲労の専門家の立場から講演した。
井野教授は、原子炉圧力容器の劣化を判断する目安とされる1号機の「脆性遷移温度(ぜいせいせんいおんど)」について「2003年に九電が提出した予測よりも高い温度が確認されていて、緊急時に冷却すると、圧力容器が損傷する危険性がある。原因を解明して安全性が確認されるまでは運転を停止すべき」と講演した。

「玄海原発1号炉は、日本一危険な原子炉と言っていいでしょう」
 メルトダウンした福島第1原発より、停止した浜岡原発より、玄海1号炉の方がはるかに危険性が高いと指摘している。
 
その根拠として井野教授があげるのが、九電が公表している「脆性遷移温度」の推移。
 35℃(1976年)、37℃(1980年)、56℃(1993年)、今回発表した98℃(2009年)。

井野教授
「一言で言えば、『圧力容器そのものが劣化し、いつ“破断”してもおかしくない』状態なのです。
 冷えたガラスのコップに熱湯をいきなり注ぐと、コップは割れるかひびが入ってしまう。これはコップの内側と外側で急激に温度が変わり、その差にガラスが耐えられなくなってしまったからです。
 原子炉の圧力容器の場合は逆で、常に高温に晒された原子炉に冷えた水がかかると、やはり急激な温度差に耐えられず、金属が破断してしまうのです。
 
この変化にどこまで耐えられるかが『脆性遷移温度』です。要は、98℃の水が原子炉にかかると、破断する危険性があるということです。
 
私(井野教授)は、わかりやすい例として、タイタニック号の沈没をあげるんです。タイタニック号の船底や外板の鉄は質が悪く、27℃程度で破断する状態だった。冷え切った海を航海していて、そこに氷山がぶつかった。その衝撃が想像以上に船を破壊したため、世界最大の船があっという間に沈んでしまったんです。
 
原子炉は、常に炉心から放出される中性子が炉壁に当たっています。このダメージが積もり積もって、圧力容器がどんどん脆(もろ)くなっていくのです。

玄海原発1号機の原子炉は、陶器のようなもので、簡単にひび割れ、破断してしまう恐
れが高い状態です。
 
もし現実になれば、炉心の燃料棒が吹っ飛ぶような大爆発を引き起こす可能性もあります」
と金属材料物性が専門の井野教授は問題提起している。
 
一方、玄海原発1号機の脆性遷移温度が98℃と発表した九州電力は、当該温度では、今後25年間(通算60年)使用できる状態であることが確認されたと全く異なる発表を行っている。
 当発表については、国の原子力安全委員会も保安院も承認している。
 
しかし、金属の専門家が具体的に問題を指摘しているのも現実である。
 
 未曾有の福島原発事故を見ても原発推進を司る海江田経済産業相は、先般、玄海原発再稼動運転の安全を保証した。当然老朽化している1号機の保証も含まれている。
しかし、そうした指摘に日本国政府は、国民のために、全世界の金属専門家を結集してでも、井野教授が指摘した問題を検証すべきではないだろうか(当原子炉圧力容器の耐用年数劣化問題は、以前から多くの専門家が指摘していることでもある)。
 
 玄海原発の最悪のシナリオでは、常時上空で吹いている偏西風に乗り、人口最密集地の福岡・北九・広島・大阪・東京(1000k)に大量の放射能が飛散することになる。
 
2005年3月20日発生した福岡県西方沖地震は、玄海島を震源地とした地震であったが、それまで全く予想だにされていなかった。また、福岡市内に走るどこにでもあるような断層の警固断層が、市内中心部から20キロ以上も離れた海に浮かぶ玄海島まで走っていたことなどもまったく知られていなかった。
福岡市を震源にする地震などこれまでなかったが、当直下型の地震では、玄海島(福岡市)の建物が全滅状態、福岡市内の当該断層沿いに建てられたマンションの多くの建物が損傷を受けた。
日本は地震国であり、どこでいつ何時発生するか本当に分からない。
 
原発は、被害が大きい そうした震度の浅い直下型地震にも、絶対耐えうるものではなくてはならず、当然、建設当初から耐用年数があるものを、九電ら電力業界が、国の原発推進に便乗し安全を引き伸ばすのは、一方で、非常に危険な状態で原発が運転されていることを意味するものとなる。
(九電は、専門の調査会社で調査したとしているが、調査会社ほど電力会社の意図するところ組んだ報告書を作成することから全く信用できない。第3者機関、それも外国の専門の検査・調査機関に検査してもらうべきであろう)
 
九州電力が国に提出して確認を受けている玄海1号機の関連温度資料
取出回数   取出時期  中性子照射量(×1019 n/cm2) [E>1MeV] 監視試験片の中性子照射量から換算した原子炉容器の相当運転年数※1  監視試験片(母材)の関連温度※2(℃)
[実測]
第1回  第1回定検(昭和51年11月)  0.5 約5EFPY(昭和57  年頃)     35(℃)
第2回  第4回定検(昭和55年4月)  2.1 約20EFPY(平成15  年頃)     37(℃)
第3回  第14回定検(平成5年2月)  3.5 約33EFPY(平成31  年頃) ※3  56(℃)
第4回  第26回定検(平成21年4月)  6.5約66EFPY(平成72 年頃)  ※3 98(℃)
※1 定格負荷相当年数(EFPY)であり、定格出力で連続運転したと仮定して計算した年数。なお、定格負荷相当年数は容器内面から板厚1/4 の位置において算出。
※2 関連温度は脆化の傾向を示すもので、原子炉容器が割れる温度ではなく、この値自体が判定の対象となるものではない。(但し、新設炉に対しては、運転期間末期の予測値が93℃未満と規定している。)
※3 平成23 年度から稼働率0.8 として算出(0.8EFPY=1 年)
 
 
九州電力/玄海原子力発電所1 号機原子炉容器の照射脆化に対する健全性について
1.概 要
○ 監視試験片は、原子炉容器より炉心に近い位置にあり、中性子を多く受けているため、将来の影響を先行して確認できます。
○ 取出した監視試験片は、専門の調査機関で約1年かけて機械試験等を実施し、健全性の評価を実施します。
○ 監視試験片を収納した容器の数は、法令等の要求より余裕を持って装着しています。
【玄海1号機の監視試験片を収納した容器の数】
法令要求数 4個・初期装着数 6個
○ 原子炉容器は、炉心から中性子を受けることにより照射脆化が進むことが知られています。
○ このため、原子炉容器と同じ材料でできた監視試験片を、あらかじめ原子炉容器内に装着しておき、この試験片を計画的に取出し機械試験等を行うことによって、関連温度(脆性遷移温度)の上昇量等を確認しています。
○ 原子力発電所では、確認した関連温度に基づき、1次冷却材の温度と圧力を管理しながら運転しています。また、仮に、万一の事故において冷却水が注入され原子炉容器表面が急冷されても、原子炉容器の健全性に問題がないことを確認しています。
○ なお、関連温度は脆化の傾向を示すものであり、原子炉容器が割れる温度ではありません。
※ 照射脆化:中性子は高いエネルギーを持っているため、原子炉容器を構成する鋼材に中性子が衝突すると、原子の配列に乱れが生じ、この結果、鋼材の破壊に対する粘り強さ(破壊靱性)が低下するなど特性が変わる現象をいう。
 
九電サイト
[ 2011年7月21日 ]
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