北九州銀行開業に向け激突する福岡銀行・西日本シティ銀行・山口銀行の各Gの決算比較
地場銀行のない100万都市北九州市に、隣市の下関市に本社がある山口フィナンシャルグループが、10月3日「北九州銀行」をオープンさせる。
北九州市の金融市場シェアーは、以前、福岡シティ銀行と西日本銀行が合併したことから現西日本シティ銀行が店舗数も多くシェアーも1番、2番手は北九州市の公金をみずほ銀行と共に取り扱う福岡銀行グループとなっている。
山口銀行グループ(山銀グループ・山銀G)は、隣の市でありながら、国の旧護送船団方式による1県1行主義から、北九州市への出店許可もなかなか下りず、これまで後塵に甘んじてきた。
しかし、今日の金融自由化の下に山銀Gは、昨年「北九州銀行」設立を発表、世間をあっと驚かせた。
山銀Gのこうした北九州銀行設立の動きに一番脅威を感じたのは、山銀が「北九州銀行では、近い将来、北九州市の公金も取り扱いたい」と表明した相手となる福岡銀行となっている。
<市民性の違い>
北九州市(工業の町、川筋気質)の市民性は、福岡(商業の町、山笠気質)の市民性と相容れないものがある。それは経財界にも言え、ヤクザの世界も然りである。
下関市と北九州市は経済構造が異なるものの、昔から関門トンネルで繋がり、相互の往来や通勤も多く、大きな違和感はない。しかし、北九州にもプライドがあり、山口銀行でのこれまで以上の進出では限界があり、本店「北九州市」の北九州唯一の銀行として「北九州銀行」が設立されたものである。
山銀Gにとって北九州市への北九州銀行設立での進出は、以前より少なくなったとはいえ100万人が暮らす都市であり、山口県全体で144万人であることからしても魅力いっぱいなものとなっている。また、北九州市は近隣を含め工場を集積した経済圏を構成しており、経済面からも大きなマーケットを持つ都市である。
今回の新銀行設立は、同行Gの台所事情もある。山口県では圧倒的なシェアーを有する同行であるが、同県の大きな経済圏は、瀬戸内海に面している。しかし、そうした工場地帯は時とともに地盤沈下しているのも事実。
山銀Gは、これまでと同様な動きでは少子化・過疎化による人口減少・産業の弱体化から自ずと限界が生じてくる。そのため、本店所在地の隣市で大票田の北九州市に本格進出して、北九州を核に全九州を取り込んでいく作戦に打って出る必要性にも迫られていたといえる。
山銀Gは、当時左前になっていた広島の「もみじ銀行」も傘下としている。地元選出の安倍晋三元首相の強い要請があってグループ化したといわれている。その「もみじ銀行」と組み、北上しても広島経済圏は、福岡県の2つ経済圏と比較してマーケットの魅力に乏しく、広島はもみじ銀行に任せ、以前から地の利がある九州北部、それも新銀行を設立して攻めることにしたものと推量される。
山銀Gは「北九州銀行」設立のため、トップが北九州政財界人に何回も直接足を運び、根回しした上で、昨年の設立表明となっていた。
当然、福銀Gも対策として、北九州市八幡に本店を構える金融機関で、6,000億円規模の資金を誇る福岡ひびき信金(システム統一)と水面下で対策を講じた話も伝わっていた。
しかし、同信金は、北九州市の小さな信金が、何回も合併を繰り返して現在の大信金となっているため、決して一枚岩ではないとされている。
シェアー№1の西日本シティ銀行も、旧福岡シティ銀行絡みの公金を昨年全額返済して、動きやすくなっており、北九州市での営業強化をはかっている。
2011/3期に見る北九州銀行設立におけるライバル3行G比較 | |||
連結/百万円 | 山口銀行G | 福岡銀行G | 西日本シティ銀行 |
経常収益 | 164,115 | 250,989 | 165,123 |
営業利益 | 47,833 | 79,440 | 50,672 |
経常利益 | 35,788 | 49,890 | 30,535 |
経常利益率 | 21.81% | 19.88% | 18.49% |
当期利益 | 19,155 | 25,990 | 53,384 |
総資産 | 8,758,187 | 12,580,400 | 7,401,749 |
経常利益/総資産 | 0.409% | 0.397% | 0.413% |
自己資本 | 443,189 | 575,034 | 303,083 |
国内基準自己資本率 | 11.36% | 10.84% | 10.61% |
営業外収支の改善余力 | 12,045 | 29,550 | 20,137 |
山銀Gは、経常利益率が21.81%と福銀Gに対して1.93ポイント、西シティGに対して3.32ポイントも高くなっている。そうした積み重ねにより、銀行の国内基準による自己資本率も11.36ポイントと比較して一番高い数値を示している。
また、営業外収支の改善余力は、営業外収支での費用が収入より多くかかっており、それを改善できる可能性の最大数値=営業外収支0として換算。当数値を営業利益で割れば、営業で稼いだ営業利益に対して、どれほどの営業外収支でのマイナス勘定の比率があるかを検討、比較した。その結果、山銀G25.18%、福銀G37.19%、西シティ35.9%となっている。
3行Gでは、福銀が一番余力を持っているが、逆に言えば営業外費用の使い過ぎ、非効率といえる。一方、山銀Gは25.18%と福銀G、西シティに比較して、効率が3行Gの中では一番よい結果となっている。逆に言えば、営業外での収支を改善して利益を捻出する余力は、2行Gに比較して少ない。
<各グループ傘下の銀行>
山口銀行G=山口フィナンシャルグループ(山口銀行・もみじ銀行)
福岡銀行G=ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行・熊本ファミリー銀行・親和銀行)
西日本シティ銀行(旧西日本銀行+福岡シティ銀行/+長崎銀行)
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