アイコン 東京商工リサーチ/2011年「円高」関連倒産動向の調査結果を発表

2011年「円高」関連倒産動向
~高水準の円高が続くなか、11月は今年最多の10件~

今年の外国為替市場は9月22日に円相場が1ドル=76円10銭の戦後最高値を更新するなど、歴史的な円高が続いている。中小企業への影響が懸念されるなか、11月の「円高」関連倒産は今年最多の10件発生した。

<2011年11月の「円高」関連倒産今年最多の10件>
 11月の「円高」関連倒産は、10月(9件)を上回り、今年最多の10件となった。今年1月-11月の累計は、前年同期比18.4%減(12件減)の53件(前年同期65件)ながら、最近は増勢が目立ち今後の推移が注目される。

 ※以下の資料は添付の関連資料「添付資料」を参照
  ・円高関連倒産
  ・円高関連倒産の月次推移


<産業別卸売業が最多>
 53件の産業別では、卸売業が34件(構成比64.1%)で最多となった。次に製造業が17件(同32.0%)、小売業とサービス業他が各1件だった。
 さらに細かな業種別では、機械器具卸売業が11件、繊維・衣服等卸売業が8件、飲食料品卸売業が5件、その他の卸売業が4件となった。
 形態別では、破産が35件(同66.0%)と最多。次に民事再生法が12件(同22.6%)、銀行取引停止が5件(同9.4%)、内整理1件と続く。

 ※以下の資料は添付の関連資料「添付資料」を参照
  ・産業別 倒産件数構成比
  ・業種分類別 ランキング


<「円高」関連倒産の減少背景金融ADR制度の利用増加>
 前年2010年の「円高」関連倒産は、前年比3.5倍の77件に急増した。この急増要因には、「通貨デリバティブ損失」倒産が26件発生したことがある。急速な円高進行で通貨デリバティブ(金融派生商品)を契約した企業が多額の損失を被り、対応できないまま資金繰りに行き詰まったケースが続出し、この問題は国会でも取り上げられた。

 これに対し、今年9月までの「円高」関連倒産のうち「通貨デリバティブ損失」倒産が13件(前年同期15件)にとどまった。歴史的な円高水準が続くなか、今年の「通貨デリバティブ損失」倒産が増えない背景の一つには、金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)の利用による企業の救済申請の急増が大きい。金融庁によると、今年9月までの1年間で申請件数が1,320件にのぼった。さらに大手銀行を中心にして、為替系デリバティブ取引で損失を被った企業には経営実態に合わせ、決済資金や融資等の資金繰り支援に積極的に対応していることも効果を発揮しているとみられる。

<10月以降の「円高」関連倒産に増勢の動き>
 ここにきて「円高」関連倒産の状況に変化がみえる。10月、11月と件数が今年最多を連続更新するなど動きが出てきた。「通貨デリバティブ損失」倒産も10月と11月で9件(10月5件、11月4件、前年同期5件)となり前年を上回った。高水準の円高が続くなかで、中小企業の対応力にも影響が出ていることをうかがわせた。

歴史的な円高水準が続くなか、今回の「円高」関連倒産は金融ADR制度(金融分野における裁判外紛争解決制度)の利用や取引銀行の資金繰り支援などもあって前年を下回っている。
 ただし過去の円高時と比べると、「円高」関連倒産が年間600件を超えた1986年(623件)と1987年(624件)には及ばないものの、1993年(44件)、1994年(57件)、1995年(105件)、1996年(48件)の期間と似た水準にある。

 東京商工リサーチ調べで、東証1部、2部に上場するメーカー90社(3月本決算企業)の約9割が今年10月以降の想定為替レートを1ドル=70円台に変更した。しかし、中小企業では為替レートを見直す余力が乏しい。さらに国内下請け企業は、取引先からの値引き要請やコスト削減策への対応も限界に近づきつつある。10月以降の「円高関連」倒産がジワリ増加していることは、こうした状況を反映したものともみられる。
 円高が高止まりで推移すれば、通貨デリバティブなどでも為替差損が膨れていく。これまで将来の銀行取引に与える影響を考慮し、金融ADR制度の利用に二の足を踏んでいた中小企業の申立が増えると、銀行経営にも深刻な影響を与えかねない。さらに国内メーカーに生産拠点の海外移転を促し、労働力や部品などの海外現地調達、現地生産という「産業の空洞化」も加速させていく。今後の円高動向を十分注視する必要がある。

 ※以下の資料は添付の関連資料「添付資料」を参照
  ・過去の「円高」関連倒産

 

[ 2011年12月 9日 ]
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