アイコン 震災復興工事の入札不調続出(約半分) 国交省が対策説明会 東北

震災地復興工事の入札において、復旧工事の受注を希望する業者がおらず、入札が成立しない「入札不調」が相次いでいることを受けて、国交省は14日、自治 体や建設業者を集めた会議を仙台市内で開催、高騰している建設作業員の人件費にあわせて発注する工事の価格を引き上げることなど、今月中に始める緊急対策 を説明した。

東日本大震災の被災地では人手不足と人件費の高騰を背景に去年の秋から復旧工事の受注を希望する業者がおらず、「入札不調」が相次ぎ、先月は、仙台市の土木工事入札のうち48パーセントが成立しなかった。

国交省は岩手、宮城、福島の各県の担当者と建設業者を集めた会議を開き、「入札不調」
の対策として今月中に、被災地で高騰している建設作業員の人件費にあわせて自治体が発注する工事の価格を引き上げることを説明した。
また、地元の建設業者に限っていた入札の参加条件を緩和して、被災地の業者と被災地以外の業者が一緒に工事を受注出来る「復興JV制度」を作ることなどを説明した。

これに対して建設業界から、「県外から確保した作業員の旅費や宿泊費の対策がないと問題は解決しない」といった意見が出され、今後、実態調査をした上で対応を検討することになった。
宮城県の担当者は「国が早い段階で対策を取ったのは評価出来る。工事の発注のピークはこれからなので、県としても復興が遅れないよう工夫して対策を取りたい」と話している。

以上の報道がなされているが、これまでの官庁工事の減少やゼネコンから下請けタタキにより、建設労働者数は大幅に減じている。また、若い世代の建設労働者が3Kと呼ばれる現場にもかかわらず日給も安く従事しないようになってきた。そうしたことから、震災復興工事では、建設労働者の需要と供給のバランスが崩れ、建設会社は遠方からかき集めなければならなくなっている。当然労賃も高くなるが、交通費や宿泊施設の提供など経費も嵩み、特に労賃ウェイトが高い土木工事での安請け負いは、命取りになる可能性も秘めている。

先般の不動産ミニバブルにおける首都圏の高層ビルラッシュの時や新潟地震の復興工事もそうであったが、全国から建設労働者が集められ、地方の現場から建設労働者が消え、労賃が上昇したこともあった。
今回の大震災においては、広範囲に及ぶかってない復興事業、10年計画であり、向こう5年間は大量の工事が発注される。しかし、スーパーゼネコンであっても、これまで下請け虐めをし続けてきたゼネコンは、下請けを構成することにも難儀するものと思われる。当然、下請け虐めしなかったゼネコンは、その恩に対して下請けが返すことになろう。
こうした建設労働者の低賃金への指向は、国交省が先導した。官庁工事は、民間工事に比較して高すぎるという批判も受けていた。そうしたなか、国家予算面からの官庁工事の減少や長引く不況下、バブル当時から建設会社数や建設労働者数が減らず、官民の建設投資額に見合った適正就業者数にする必要性も政策面から求められていた。

官庁は、工事予算の積算における工賃や労賃を無謀に安く抑え、入札により、業者は更に安い価格の労賃での落札となり、若い世代が建設現場から消えていった。地方自治体も国交省に右へ倣えであった。

官庁工事の価格が高いのは、ご存知のようにその厳格なる工事仕様書に基づき発注されているからである。技術の進歩に時として時代遅れな仕様となっていることも多い。
更に建築工事では、大盤振る舞いのデザイン及び設計に原因がある。官が近隣建物との比較で常に優位性を誇示、そのため最大限の予算を確保することが権力の証でもあり、また確保した予算を使い切ることを美徳としていた。しかも、官は金のかかる建物を今でも建て続けているのが実情である。しかし、今では大型物件でない限り、こうした案件はなくなり、積算における工事予算そのものが労賃・工賃を中心に大幅に減じ、受注競争も激しく儲からなくなり、会社数も労働者数も減り続けているのが現状である。

<建設労働者需給状況・・・国交省>
平成22年平均の結果は(国交省 建設市場整備課調査24年1月25日公表)
1、全国の過不足率(8職種計)は0.8%の不足。
2、東北地方の過不足率(8職種計)は1.6%の不足。
3、8職種全ての職種において技能労働者が不足傾向にあり、うち、最も不足傾向が大きいのは、鉄筋工(建築)(1.7%の不足)となっている。
4、8職種計において、北陸以外9地域で技能労働者が不足であった。特に関東地域の不足率が大きい(1.8%の不足)。
5、8職種計の翌々月(2月)における労働者の確保に関する見通しは、「困難」と「やや困難」の合計が18.1%で、対前年同月比8.8ポイントの上昇となっている。
一方、「やや容易」と「容易」の合計は13.2%で、対前年同月比6.5ポイントの下降となっている。
6、翌々々月(3月)に関する見通しについては、「困難」が10.7%で対前年同月比6.6ポイントの上昇となっている。一方、「容易」は17.1%で、対前年同月比7.6ポイントの下降となっている。

以上は、表記の通り、平成22年の建設労働者の職種別需給動向の調査に基づき、平成23年12月時点の動向を発表したものである。東日本大震災の発生による復興工事が本格的に始まった現在、特に東北では、労働者の需給バランスが完全に崩れていることは明らかであり、更に不足が深刻なものとなる可能性が高い。

<総務省>
総務省の就業統計によると、平成16年1月の建設就労者数は609万人であった。それが平成23年12月には491万人と▲118万人も減少してきた。率にして20%減である。

こん日、経済不況下、設備投資も減じており、建設労働者の需給バランスはかろうじて保たれてきたが、経済回復が緩やかでも好転すれば、不動産投資や設備投資が動き出し、復興工事と重なり、更に建設労働者の需給は逼迫するものと思われる。

[ 2012年2月15日 ]
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