アイコン 長崎大学/市中心部にBSL4最高度危険ウイルス実験施設に 公開質問状

先般JC-NETでは、長崎大学が建設を計画している「BSL-4」(最高度危険ウイルス実験施設)施設を、長崎市中心部に建設するのは如何なものかと掲載 したが、長崎大学の51名の教員らが、学長宛に安全性を質す質問状を提出し、回答を公開するように求めていたことが9日判明した。

危険度最高レベルの「BSL-4」(バイオセーフティーレベル4)施設は、日本には、国立感染症研究所(武蔵村山市)と理化学研究所筑波研究所(つくば市)の2ヶ所にあったが、地元住民の反対により、今では、「BSL-3」の実験施設となっている。
 
そうしたことから、長崎大学が当施設をつくれば、日本で唯一運用できる「BSL-4」の実験施設となる。(BSL基準はWHOが設定)
 
Level4(Group 4) 施設とは
ヒトあるいは動物に通常重篤な病気を起こし、容易にヒトからヒトへ直接・間接の感染を起こす。有効な治療法・予防法は普通得られないウイルス。エボラウイルス(致死率5089%)・マールブルグウイルス(アフリカミドリザル熱、致死率不明)・狂犬病(致死率99%)・天然痘(致死率40%前後)ウイルスなどを取り扱ったり、実験できる施設。(Group3までは、治療法・予防法があるウイルスが対象)
 
ところが、長崎大学は、致死率が最高に高く治療法も予防法もないとされるウイルスを取り扱う「BSL-4」施設を、よりによって長崎市の中心部に位置する坂本町の長崎大学病院施設内に建設しようとしている。
 
学内の教員51人から片峰学長あてに質問状が送られてきたという質問状は、
1、危険な病原体が施設の外に漏れるおそれはないのか
2、大災害の発生を想定した安全対策が施されているか
など9項目について、全ての教職員と学生にわかる形で回答するよう求めている。
 
片峰学長は、施設の構造的なリスクは低く、運営方法や扱う病原体を考慮すればリスクはさらに減らせる。国内に危険性の高い病原体が侵入するおそれもあり、施設を設ける意味を理解してほしいとしている。
 
長崎大学では、この質問状や周辺住民などから寄せられた質問への回答を近くHPに掲載するとしている。
学長は既に、安全性リスクは運営方法にもあるとしているが、人が行う限り、運営方法を逸脱した場合の危険性を逆に知らしめている。原発のように想定外ではすまされない。
 
世界保健機関 (WHO)が制定したLaboratory biosafety manual (和訳:実験室生物安全指針)に基づき、各国で病原体の危険性に応じて4段階のリスクグループが定められており、それに応じた取り扱いレベル(バイオセーフティーレベル)が定められている。
 
Level4は最高度安全実験施設である。レベル3に加えて、レベル4の実験室は他の施設から完全に隔離され、詳細な実験室の運用マニュアルが装備される。
 
Level4の実験室は、次のような運用基準が設けられている。
(レベル3に加えて・・・最下位に記載)
1、クラスIII安全キャビネットの使用。
2、通り抜け式オートクレーブの設置。
3、シャワー室の設置。
4、実験室からの排気は高性能フィルターで2段浄化。
5、防護服未着用での入室を禁止。など
 
このレベルの実験室がある国は限られており、日本では国立感染症研究所と理化学研究所筑波研究所にのみ、レベル4実験室が設置されている。しかし、近隣住民の反対によってレベル3での運用のみ行なわれている。
 
しかし高度にグローバル化が進み、現実にBSL-4生物の非流行地域への輸入が、年間数例起こっている現代においては日本もその脅威の例外ではなく、リスクグループ4の病原体などによる感染症が発生した場合の対処の遅れや、感染症の研究不足の視点から、施設を稼動させるべきとの声もある。
 
上記のような事態が現実に我が国で起こった例として、1987年に海外渡航者がラッサ熱(致死率1~5%)に感染して帰国し、帰国後発症した事例がある。
稼動中のBSL-4施設がないために国内での確定診断・治癒確認が不可能で、検体をアメリカに発送して確認を仰ぐ事態となっている。
 
レベル3の施設は現在でも長崎大学病院施設内にある。
長崎大学熱帯医学研究所(〒852-8523 長崎県長崎市坂本1-12-4、TEL(代表)095-819-7800)、他に施設内には「感染動物実験施設」もある。
 
JC-NETは、長崎大学がBSL-4の施設を建設することに反対しているものではないが、その施設を利便性のみ追求して、長崎市内中心部に位置する長崎大学病院施設内に建設するのは、危険性・安全面から如何なものかと強く疑問を呈しているものである。
 
長崎市には近隣に隔離された島が山ほどある。
長崎市の人口:43万8千人、周辺人口7万2千人(時津+長与)。
 
レベル3の運用基準
(レベル2に加え・・・略)
1、廊下への立入制限。
2、白衣などに着替えるための前室の設置。そのとき前後のドアは同時に開かない。
3、壁・床・天井・作業台などの表面は消毒・洗浄可能。
4、排気系を調節し、常に外部から実験室内に空気を流入させる。
5、実験室からの排気は、高性能フィルターを通し除菌した上で大気に放出。
6、実験は生物学用安全キャビネットの中で行う。
7、動物実験は生物学用安全キャビネットの中もしくは陰圧アイソレーターの中で行う。
8、作業員名簿に記載された者以外の立入禁止。
 
[ 2012年7月10日 ]
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