アイコン マイコプラズマ肺炎/大流行の兆し

4年に一度、冬から春にかけ大流行してオリンピック熱ともいわれるマイコプラズマ肺炎。菌により感染する風邪に似た病であるが、福岡では、残暑厳しいなか流行っており、大流行の兆しである(お医者さんが言っていた)。また、全国でも多くの患者が発生している。

肺炎マイコプラズマ(mycoplasma pneumoniae)は細胞壁を欠いた細菌で、肺炎マイコプラズマは、呼吸器系のもので唯一ヒトに対して病原性がある。

マイコプラズマ肺炎は、飛沫感染などによる濃厚感染であり、学校、幼稚園、保育所、家庭などの比較的閉鎖的な環境で、地域的に流行する。
毎年、地域的に小流行を繰り返すようになっており、季節的には初秋から冬に多発する傾向がある。

日本での感染症発生動向調査によれば、一年を通して感染が報告されるが、晩秋から早春にかけてが多く、患者の年齢は幼児期、学童期、青年期(5歳から35歳)が中心である。流行は学童から始まり家庭内感染へと広まる。
病原体分離例でみると7歳から8歳にピークがあるが、職場で流行しているところもあり、一概に低年齢層の病気ではない。ただ、感染しても軽症状か不顕感染の場合が多い。
欧米では、寄宿舎、軍隊、サマースクール、学校、家庭内などの閉鎖集団での発生が多いとされている。
感染拡大の速度は遅い。感染により免疫を獲得するが生涯続く免疫ではなく、再感染する。ヒトのほかブタ、ウシでも発生する。

感染様式:飛沫感染と濃厚接触による接触感染。
潜伏期 :1から4週間程度(通常は、2から3週間)。
血液検査所見:WBC - 10,000 cells/μl以下、CRP - 5mg/dl以下の場合が多い。血沈(ESR):亢進が多い。

病原体は、粘膜表面の細胞外で増殖する。増殖の結果、気管、気管支、細気管支、肺胞などの気道粘膜上皮を破壊する。特に気管支、細気管支の繊毛上皮が顕著に破壊され、粘膜の剥離、潰瘍の形成がみられる。確定診断の遅れにより重症化することもある。成人は重症化リスクが高く重症化すると胸水貯留、呼吸不全を引き起こす可能性がある。

病原体が気道粘液(痰)に排出されるのは発症前2~8日から起こり、臨床症状発現時に最大となり、高いレベルの排出が1週間程度続き、徐々に減少しながら4~6週間以上病原体の排出は継続する。

症状
初期症状は、風邪症候群様の症状を呈し、発熱、疲労感、頭痛、のどの痛み、消化器症状、咳、発疹など。症状は個人差が大きく咳は、熱発で発症して、長引く、しつこい乾いた咳が特徴であるが、時間の経過と共に咳は強くなり、解熱後も1ヶ月程度続く。年長児や青年では、後期には湿性の咳となることもある。最初は喘息の間違えやすい。

合併症として中耳炎、関節炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、心筋炎、溶血性貧血、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などがある。

診断
胸部レントゲン、確定診断は細菌学的、血清診断微粒子凝集(PA)法、遺伝子学的(PCR法やLAMP法)などにて行う。培養が難しく、細菌学的培養には数日間程度の期間を必要とする為、培養検査は現実的ではない。
現在の日本では、ELISA法は保険診療適用外。鑑別診断が必要な疾患は、クラミジア肺炎、オウム病、肺結核など。

治療
薬剤耐菌で無ければエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンなどのマクロライド系抗生物質、ミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗生物質がよく用いられる。
また、耐性菌に対しては、ケトライド系(ガレノキサシンなど)、リンコマイシン系、ニューキノロン系薬剤も有効である。
細胞壁を持たないため、β-ラクタム系(ペニシリン系、セフェム系)の薬剤は効果がない。

[ 2012年9月 3日 ]
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