アイコン (株)さとうベネック/破産手続き開始決定

昔九州№2のゼネコンであった(株)さとうべネック(大分市金池町3-3-11、代表:大川義廣)は11月2 日、10月9日東京地方裁判所において、民事再生廃止決定が下りていたが、同裁判所の職権で破産開始決定を受けた。破産管財人には、永沢徹弁護士(電話 03-3273-1800)が選任されている。
負債額は約44億円。

今回のゼネコン再建の問題は、大分銀行と整理回収機構の支援の下に、再建途上にあった同社を、整理回収機構がハゲタカでゼネコン再生などド素人のネクスト・キャピタル・パートナーズに同社株を売却したことに始まる。
ネクスト社は、更なる従業員のリストラや給与を減額して再建させたことから、回収にかかり、株を売却した。その売却先に選ばれたのが、主に銀座や中洲の飲み屋街にビルを所有する不動産会社であった。
SBIから借金してさとうべネックの株を本年2月末に購入した不動産会社は、借金返済のために、さとうベネックから借り入れ起こして4月末に返済した。

ところが、不動産会社が、再建途上のさとうベネックから10数億円ともいう金を引き出したことから、さとうベネックは資金繰りに窮することになった。
そうしたさとうベネックの内情を知ったさとうベネックの役員や社員に動揺が走り、退職する者も続出した。更にさとうベネックに以前からいた役員4名全員が辞任してしまう事態に陥った。
さとうベネックは、不動産会社が購入する以前は、実質破綻した再建会社であり、債権回収機構で過度な負債がカットされ、現業部門のこんにちのさとうべネックが、ネクスト社によりやっと再建されたゼネコンであった。
そうした同社の財務内容は健全化されたものの、余裕資金など殆どなく、10数億円ともいう資金が不動産会社に対しての貸し付けという形で持ち出されたことから、資金繰りに窮し、8月20日手形決済ができず1回目の不渡りを発生させた。
建設工事の協力会社(=下請会社)は、一斉に工事現場から手を引き、契約高数十億円にのぼる官民の工事現場が完全にストップした。
さとうベネックを経営する不動産会社は、さとうベネックの工事現場が完成しなければ、入金もされず、さとうべネックの資金繰りは更に窮することになった。

8月末には、さとうベネック=不動産会社は協力会社を集め、説明会を開催したが、不信が積もってしまった協力会社は工事再開に動かず、さとうベネックは9月7日に民事再生法の適用申請を提出した。そのため、工事現場の協力会社が焦げ付くことになった。

協力会社がこれまで一貫して、工事現場の再開の条件としたのは、親会社となった不動産会社が、さとうべネックから借り入れた10数億円を、資金繰りに行き詰っているさとうべネックに返済することを条件とした。
しかし、民事再生法の申請をしても、不動産会社から資金は返済されず、工事現場もストップしたまま、不動産会社がさとうベネックを購入した時点でいた従業員は177名、民事再生申請時には100名を切っていたが、その残っていた従業員たちも協力会社の意見に賛同して、集団退職を示唆していた。
そうしたことから、民事再生の監督委員の管財人弁護士は、さとうベネックの民事再生は不可能と判断し、民事再生の廃止に至っていた。

今回、さとうベネックの多くの協力会社が大きな焦げ付きを発生させたが、不動産会社は、さとうベネックを購入したために借り入れた資金をいまだ返済しないことから、現在のところ、痛くも痒くもない状態となっている。

問題の根本は、さとうベネックの再建処理を担当した債権回収機構が、ゼネコン再建などしたこともない、再建完了実績も乏しいハゲタカのネクスト・キャピタル・パートナーズにさとうべネックの株を売却したことに始まる。
ネクスト社は、プロパーの役員や社員たちが給与削減などに耐え再建を成し遂げた。そのさとうべネックを昨秋セリにかけ、地元でも殆ど知られていない中洲や銀座の飲屋ビルをいくつも所有する不動産会社に高値で売却しておさらばしたのであった。

問題は更に、不動産会社がさとうベネックの購入資金を借り換え先も決定しないまま高利なSBIから調達したことに起因していた。金利に敏感な不動産会社は、即返済にかかった。ただ、その返済資金が、さとうべネックの運転資金から調達されるに至っていた。
さとうべネックの経営権を持つ不動産会社が、社長など役員も送り込んでいたため、SBIへの返済資金を、再建途上の金もないさとうべネックの運転資金から、貸付という形で抜き出し、その資金でSBIへ返済した。しかし、こうした一連の不動産会社の動きが、数ヵ月後のさとうベネックの決済資金に現れ、手形決済できない事態に陥った。

今回、破産手続きが開始されようと、その配当額は、不動産会社が借り入れた10億円以上ともいわれる借入金を返済するかどうかにかかっている。
当然借り入れた不動産会社は、返済できる資金はないと主張することになろう。破産管財人の弁護士の腕次第である。

[ 2012年11月 2日 ]
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