アイコン 中国/欧州車の在庫輸出に苛立ち

世界の工場を自負する中国では、もともと産業移転の観点から独自企業の進出は殆ど認められてこなかった。最初の経 済特区深圳でも進出したのは香港企業や台湾企業であった。中国へは、自動車産業もVWやホンダなど早期に進出を果たしているが合弁事業である。中国が開放 経済の推進、WHOに加盟してからは、急速に独自企業での進出が多くなった。
中国独自の自動車産業は、まだ黎明期を脱しておらず、先進国企業と中進国企業の自動車メーカーとの合弁事業により、世界で最大の生産基地・販売台数国に変貌している。
そうしたなか、中国自動車産業にマイナスになる欧州車の在庫受け入れ問題が浮上してきている。

<欧州メーカー>
中国共産党系の人民網は次の通り掲載している。
欧州債務危機は深刻さを増し、いまだに解決の方法や糸口がみえてこない。自動車産業はグローバル経済の重要な構成要素であり、欧州債務危機から受ける影響が徐々に深刻化している。イタリアのフィアットは欧州の2工場を閉鎖、
フランスのPSA・プジョーシトロエンは数千人規模のリストラ
米国のゼネラルモーターズ(GM)も数千人規模のリストラ
日本の三菱自動車は欧州工場の売却。
中国市場に力強く支えられてきたドイツのフォルクスワーゲン(VW)も、今年第3四半期(7-9月)の営業利益は前年同期比21%減少し、2009年のグローバル金融危機の頃以来のマイナスとなった。

<ドイツも低迷>
ドイツのベルギッシュ・グラートバッハ応用科学大学自動車研究センターのシュテファン・ブラッツェル所長は、「欧州債務危機がドイツに影響を与えたことは明らかだ。来年も欧州自動車市場は低迷を続け、ドイツの自動車メーカーが直面する問題は、さらに悪化し始めたところだ」とし、VW、BMW、ベンツなどのドイツメーカーは今後、より多くの業務を中国市場と米国市場に移転させるが、これで欧州市場での損失をすべて埋め合わせすることはできないとの見方を示している。
BMWのセールス・マーケティング担当取締役のイアン・ロバートソン氏は、10月17日、「欧州の課題はますます厳しいものになっている。欧州自動車市場の回復・安定に向けた道はデコボコで、元に戻るには何年もかかる可能性がある」と述べた

ロバートソン氏がこうした見方を示した背景には、債務危機によって欧州自動車市場の低迷が続き、BMWがもともと欧州市場向けに生産した車両数万台を、米国市場や中国市場に送り込むとともに、業務の重心を中米両国に移していることにある。
ロバートソン氏によると、中国市場の鈍化と欧州市場の鈍化とではレベルが異なり、BMWにとって中国市場にはなお強い吸引力があるとみている。

統計によると、今年9月のBMWの中国での販売台数は2万9,631台に上り、前年同月比59%増、増加率はライバル他社や業界全体の水準を大きく上回った。また1~9月の販売台数は23万7千台で、2011年の販売台数を既に超えた。
こうした大量の欧州在庫車を中国に送り込み、BMWは中国市場で大幅な値引きを実施した結果と中国側は見ている。
7シリーズ車はすべて10万元のキャッシュバック(1元約13.2円)
X5シリーズ車は最大17万元の値引き。
だがBMWは欧州在庫車の「ダンピング」の先駆けではなく、今年初めに、ベンツが店舗の一部でSシリーズ車を対象に30万元を値引く投げ売りをしている。
このような「期限付きの販売促進」は欧州在庫車処分であり、中国の高級車市場で「価格戦争」を引き起こしている。

国家情報センター情報資源開発部の徐長明主任は、欧州在庫車の大量流入が中国自動車市場に間接的にマイナス影響を与えることになると指摘し、次のように述べた。
第一に、中国の自動車生産能力は非常に高くなっており、今年は市場の低迷により大量の在庫圧力が生じている。こうした状況の中で欧州の在庫車が大量に流入すれば、国産車の販売や中国企業の利益にダメージを与えることになる。

第二に、多国籍自動車メーカーが海外での在庫車を中国で投げ売りすれば、中国自動車市場の価格設定の秩序を大いに乱すことになる。今年初めから現在まで続く高級車市場の価格戦争にその一端がみられる。

第三に、現時点で中国の自動車保有台数はすでに高い水準にあり、エネルギー、土地、環境などの面で限界を迎えており、大都市では弊害がより顕在化している。輸入車の中心は排気量が多く、エネルギー消費量も多いスポーツ用多目的車(SUV)で、高級SUVに向かう消費傾向が早急に抑制されなければ、中国自動車産業の持続可能な発展にとって深刻な脅威になるとみられるとしている。

中国は世界貿易機関(WTO)に加盟し、自動車の輸入割当制を撤廃したとはいえ、このことは中国市場が中国へダンピング販売される海外の在庫車に「門戸を開いた」ことを意味しない。
世界の経験に照らせば、どの国も自国の自動車産業を発展させようとする時には、一連の措置を取って自国ブランドを保護し、支援している。
「国家」というものが存在する以上、完全な「自由市場」などあり得ないのだと締めくくっている(中国は中国共産党一党独裁国である)。

9月の日本勢の中国における自動車販売は、尖閣反日暴動で前年同期比▲4~5割と大きく落ち込み、10月もほぼ同じ落ち込みとなっている。

中国自身の10月の自動車販売台数は計161万台。9月は162万台。1~10月の販売台数は1,570万台で、前年同期比3.6%増加となっている。しかし、その伸び率は欧州経済の低迷を受け、2010年からは大幅に鈍化している。(2010年32.3%増、2011年2.45%増の1,850万台・・・ダントツ世界一、米国の2011年は前年比10.0%増の1,277万台)
 

[ 2012年11月26日 ]
モバイル
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
スポンサード リンク

コメント

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   


PICK UP

↑トップへ

サイト内検索