アイコン 官庁建物工事の予定価格は現実離れか? 入札不調全国で相次ぐ

病院や官庁工事に強い戸田建設の業績推移
連結/百万円
売上高
営業利益
経常利益
当期利益
11年3月期
452,499
5,766
7,265
3,567
12年3月期
489,385
-7,994
-6,690
-19,872
13年3月期
497,048
-46,997
-45,581
-65,285
13年期/12年期比
101.60%
 
 
 
・売上構成:建設76、土木21、不動産3、他0

 

上記は官庁や大学の病院工事に強いとされる戸田建設の業績推移である。

売上高は確実に増加しているが、利益は逆に大赤字となっている。特に以前工期が長い病院工事を取り捲っていたことから、東日本大震災の復興工事の発生により、職人不足に陥ったため、協力工事業者の労務費が高騰、また、資材も高騰、おさまったかと思えば円安による輸入資材の高騰などにより、前期業績は悲惨なことになった。建築主体のゼネコンは戸田建設と利益の大小の差はあれ、ほとんど似たり寄ったりとなっている。
こうしたことから、昨年まで激しい価格競争と過当競争を繰り広げていた病院や庁舎など公共建築工事が、一転して、ここ数ヶ月の入札で応札者が激減、さらには応札者ゼロで再公告という事態も目立ってきている。

ゼネコンは、庁舎や病院など大型工事の工期が長く、先行きの資材・労務費高騰のリスクを抱え、よほど予算がある物件でなければ、手が出せない状態となっている。
それほど、発注側は現実を見ておらず、応札者0という事態が、復興工事の東北ばかりか全国に波及してきている。
奈良県生駒市の市立病院建築工事は、予定価格82億2874万5千円であった。しかし、6月5日の開札では応札者ゼロであった。
ゼネコン側は、予定価格が安すぎるとしている。
京都の新総合資料館工事は4月11日に開札したが不調、翌日の再入札では応札全JVが辞退。京都府は当初の予定価格51億7100万円を24.7%増の12億8千万円増額した64億5015万円で6月5日に再公告、4JVが参加し、57億1000万円で落札した。

5月15日に開札した千葉市の国立病院機構下総精神医療センター病棟等改築工事(工期19ヶ月、延床面積8,505㎡)は、本年1月の入札では1社が応札、予定価格を上回り、数回入札を繰り返したが、開きが大きく辞退した。2月の再公告では応札希望者ゼロ。5月の開札でも、応札した1社が予定価格を上回り、随意契約交渉も成立しなかった。4度目の入札の予定価格がどのように変更されるか、変更の幅次第では4度目の入札も不調に終わる可能性が高いとされている。
本年2月に着工した香川県坂出市の坂出市立病院も、昨年7月に入札、しかし応札した7JVすべてが辞退した。9月の再入札には2JVが応札したが、23億9千万円を提示したJVとの随契交渉も不調、結局、坂出市は当初予定価格を23.8%増の5億7千万円増額して、本年1月の3度目の入札でようやく落札した。工期も遅れ、病院開業も遅れることになった。
 
国立病院機構宮崎東病院
国立病院機構熊本医療センター
社会保険久留米第一病院
などで再公告、再々公告により入札しても不調で終わり、いまだ落札者が決定していない。
広島県呉市の新庁舎では、2月8日の入札で応札者0、再入札では、当初予定価格の117億円から8.5%増の10億円増額した127億円を予定価格としたが、応札者0であった。呉市では再度予定価格を引き上げ、入札に募る予定である。市議会で予算増が通るのであろうかと心配もされる。
 官庁の病院や庁舎など官庁工事は、仕様が細かすぎるほど決められており、現場での提案型の設計変更など皆無、労務費と資材高騰がそのままゼネコンの赤字となっている。
官庁施設や公共的な病院の建築では、現実を見た予定価格の提示が求められている。
 参考記事:建設通信新聞

[ 2013年6月14日 ]
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