主要ハウスメーカーの経営推移と状況分析/帝國データバンク ベスト10付き
帝國データバンクは、次のとおり、リーマン・ショック後の主要ハウスメーカーの経営状況の比較・分析を行った。
リーマン・ショックによる急激な景気後退により、2009年度の新設住宅着工件数は、前年の約103万戸を25.4%下回り約77万戸に急減した。
しかし、その後は住宅金利が低水準で推移してきたほか、住宅ローン減税や住宅エコポイントなどの住宅取得支援策、復興需要を追い風に2012年度には89万戸を超えるまでに回復した。
近時では、アベノミクス効果に伴う住宅金利の先高感に加え、現実味を帯びてきた消費増税が住宅購入者の購買意欲を底上げしている。
帝国データバンクでは、主要ハウスメーカーの2007年度(2007年4月期~2008年3月期)から2012年度(2012年4月期~2013年3月期)における売上高、損益について比較・分析を行った。
帝国データバンクでは、主要ハウスメーカーの2007年度(2007年4月期~2008年3月期)から2012年度(2012年4月期~2013年3月期)における売上高、損益について比較・分析を行った。
1、 売上高合計推移 ~ 3年連続増加、リーマン前の水準に回復~
主要ハウスメーカー212 社の売上高合計推移を見ると、2012 年度は、約8 兆2643 億円と前年の約7 兆8222 億円を5.7%上回った。
リーマン・ショック以降、急激な景気後退が消費マインドを低下させ、2009 年度には前年度を10%下回る約7 兆1684 億円に落ち込んだ。
その後は、住宅取得支援策や住宅ローン金利が低水準で推移したうえ、東日本大震災の発生により耐震性の強い住宅を望む傾向が高まり、2010 年度以降、3 年連続で前年度を上回り、リーマン・ショック前の水準に回復した。
各社の増減収推移を社数ベースで見ると、「増収」は2009 年度(52 社)に底を打ち、翌2010
年度には45 社増の97 社に回復。2012 年度には、前年度を4 社下回る122 社となったが、「増収企業」は高水準で推移している。
2、 損益推移 ~ 9 割以上の企業が採算を維持 ~
主要ハウスメーカー212 社のうち6 期分の損益が判明した196 社の損益推移を見ると、2012 年度は、196 社中179 社(構成比91.3%)が黒字決算となり、9 割以上の企業が採算を確保している。
2008 年度には196 社中50 社(同25.5%)と4 社に1 社が赤字を余儀なくされていたが、徐々に収益を確保した企業が増加している。
3、大手ハウスメーカーの売上動向
ハウスメーカーの2012 年度の売上動向を見ると、大手10 社のうち大和ハウス工業、一建設、
タマホームの3 社が前年度比2 ケタ台の増加となった。また、一建設や一条工務店、アーネスト
ワン、タマホームの新興メーカーの躍進が目立っている。一方、パナホームのみが前年度を下回
ることになった。
大手ハウジングメーカー10社の2012年度売上高
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|
/百万円
|
2011年度
|
2012年度
|
伸率
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|
1
|
大和ハウス
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1,116,665
|
1,238,811
|
10.9%
|
注文
|
2
|
積水ハウス
|
1,013,559
|
1,022,340
|
0.9%
|
注文
|
3
|
住友林業
|
680,189
|
682,432
|
0.3%
|
注文
|
4
|
旭化成
|
358,093
|
367,348
|
2.6%
|
注文
|
5
|
積水化学
|
337,220
|
342,941
|
1.7%
|
注文
|
6
|
パナホーム
|
250,777
|
243,223
|
-3.0%
|
注文
|
7
|
一建設
|
218,838
|
241,437
|
10.3%
|
分譲(パワービルダー)
|
8
|
一条工務店
|
204,757
|
223,302
|
9.1%
|
注文
|
9
|
アーネストワン
|
187,275
|
203,357
|
8.6%
|
分譲(パワービルダー)
|
10
|
タマホーム
|
143,015
|
163,343
|
14.2%
|
注文
|
2012年度とは2011年4月期から2013年3月期までの決算数値。
4、結論
政府が行った住宅取得支援策や復興需要により、主要ハウスメーカーの総売上高は2010 年度以降、3 期連続で増加した。足元では、住宅ローン金利の先高感と消費増税前の駆け込み需要が追い風になり、今年度の住宅市場は活況を帯びている。前回の消費増税時である1997 年4 月には、駆け込み需要が発生した96 年度の新設住宅着工件数は前年度を9.8%も上回ったものの、増税後の翌97 年度は前年度より17.7%の大幅な減少となった。
現在、政府は、住宅市場の冷え込みを懸念し、住宅ローン控除の拡充や住宅購入者の負担を軽減する給付制度の導入も検討しており、前回ほどの反動減は見込まれないという見方もあるが、劇的な需要喚起は困難な状況にある。
日本国内では、少子高齢化や核家族化が進み、かつては160 万戸市場と言われたマーケットは、今や90 万戸程度に縮小している。
戸建住宅は、安定的な購買需要に支えられているため、大幅な増減収は見込まれないものの、長期的には戸建住宅マーケットの縮小が懸念され、経営の合理化を目的とした再編や統合を余儀なくされる可能性がある。
[ 2013年9月25日 ]
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
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