アイコン 次世代型「色素増感太陽電池」完全封止に成功/九工大の早瀬修二教授ら

1、国立大学法人九州工業大学大学院生命体工学研究科の早瀬修二教授は、次世代の太陽光発電として共同研究を進めている「色素増感太陽電池」について、ウシオ電機の協力を得て、円筒型セル構造の完全封止に成功した。
電解液漏洩のない構造にすることで、高耐久性かつ低価格の色素増感太陽電池の実現が期待される。

2、今回の完全封止は、九州工業大学の円筒型太陽電池作製技術とウシオ電機の円筒型ガラス封止技術を融合し、容易に完全に封止できる円筒形太陽電池を作製した。

3、この成果は、独立行政法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業戦略的イノベーション創出推進(S-イノベ)「有機材料を基礎とした新規エレクトロニクス技術の開発」(プログラムオフィサー:谷口彬雄 国立大学法人信州大学名誉教授・特任教授)における研究課題「フレキシブル浮遊電極をコア技術とする新太陽電池分野の創成」の一環として得られた。

<研究の背景>
 色素増感太陽電池は1991年にスイス・ローザンヌ工科大学のグレッツェル教授により開発され、従来のシリコン系太陽電池とは全く異なった組成を持つ新しい太陽電池である。
酸化物半導体と有機色素からなり、低コストプロセスである塗布で太陽電池が作製できるため、良好な発電効率が得られる安価な有機系太陽電池として注目されている。
現時点でのエネルギー変換効率の最高値(1cm2以上のセルでの認証値)は11.9%(標準太陽光基準(注1))であり、次世代の太陽電池として欧米日を中心に開発が行われている。

色素増感太陽電池は常圧、塗布で作製できるため、低コストプロセスで作製できる太陽電池として注目されてきた。
色素増感太陽電池の作製の中で最も難しくコストがかかるプロセスは封止であった。外部から酸素、水分が浸透してくると性能が低下するために、それらの侵入を完全に遮断する必要があったが、従来の樹脂を用いた封止ではそれらの浸透を完全に止めることは困難であり、安価に完全に封止する方法は、色素増感太陽電池の耐久性を向上させる技術として必須の技術であった。

<成果の内容>
国立大学法人九州工業大学は高価な透明導電膜基板を必要としない太陽電池の開発を進め
てきた。透明導電膜の代わりに金属浮遊電極を用いる。フレキシブルな金属浮遊電極を使うことができるため、いろいろな形の太陽電池を作ることが可能になった。
円筒型の太陽電池も作製できることを既に実証している。従来の透明導電膜基板を使うプロセスでは非常に作りにくい形であるが、フレキシブルな金属電極を使うことにより、比較的容易に作製できるようになった。
 一方、ウシオ電機はランプをはじめとした円筒型ガラスの封止に優れた技術を持っていた。九工大の円筒型太陽電池作製技術とウシオ電機の円筒型ガラス封止技術を融合し、容易に完全に封止できる円筒形太陽電池を作製することに成功した。

<円筒形太陽電池の特徴>
(1)円筒型太陽電池はいろいろな方向から光を集めることができ一日の総発電量が多くなる。
(2)水平、垂直に設置できる。垂直設置では設置面積を少なくすることができる。
(3)ランプが並んだような太陽電池モジュールは風圧を受けにくく、安定した設置が可能である。
(4)ランプと同じように設置できるためメンテナンスが容易である。
(5)光を通しながら発電できる。

<今後の展開>
これらの特徴を生かして、土地単価が高く少ない設置面積が必要とされる集約農業用用途、植物育成のための透光性と発電を両立できる農業用途等、平面型太陽電池では設置が難しい応用用途への展開を目指す。
また、ウシオ電機は、ここで開発した円筒型色素増感太陽電池を応用して「実験農場のアグリセンサシステム」を2013年11月6日から7日まで、ビッグパレットふくしまで開催される「第二回ふくしま復興再生可能エネルギー産業フェア2013」(主催:福島県公益財団法人福島県産業振興センター)で展示を予定している。

関係者は、色素増感太陽電池の最大の問題であった封止を蛍光管と同様の円筒型ガラスにより実現した。これにより平面型では設置が難しい用途への展開が急速に進むだろう。特に、透光性と発電を両立できる農業用用途への発展が期待されるとしている。

1101_01.jpg

 エネルギー変換効率:太陽光発電:普及品12%~21%、理論限界85-90%。
当色素増感太陽電池の変換効率が15%~20%まで高まれば急速に普及する可能性がある。
 

[ 2013年11月 1日 ]
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