高血圧・降圧剤で妊婦危険 20人に副作用 赤ちゃん死亡も 医師に妊娠告知を
妊娠中の女性が、高血圧の薬を服用し、おなかの羊水が減ってしまう副作用とみられる症状が出たケースが、この10年間に少なくとも20件あり、8人の赤ちゃんが死亡したり、重い障害を負ったりしていたことが分かったとNHKが報道している。
専門家は、女性に薬を処方する際には、医師は、必ず、妊娠していないかどうか確認する必要があると指摘しているという。
副作用とみられる症状が出て赤ちゃんが死亡するなどしていたのは、
「ARB=アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬」と「ACE阻害剤」
と呼ばれる薬剤で、高血圧のほか慢性の腎臓病の治療などに医療現場で、広く使われている。
NHKでは、全国の医師などから医薬品医療機器総合機構に寄せられた約28万件の薬の副作用の報告を国立成育医療研究センターと共同で調査。
その結果、これらの薬を飲んだ妊婦少なくとも20人で、羊水が減ってしまう副作用とみられる症状が報告され、このうち6人の赤ちゃんが死亡、2人が腎臓に重い障害を負っていた。
これらの薬剤は、妊娠中期以降に服用すると羊水が減ってしまい、胎児の成長を妨げて死亡させるなどの副作用があるため妊婦への使用は認められていないが、医師が、女性の妊娠に気付かずに処方してしまうなどのケースが考えられるという。
妊娠と薬の問題に詳しい国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター長の村島温子医師は、女性に薬を出す際には、妊娠していないかどうか、きちんと確認するなど医師は慎重に対応してほしいと話しているという。
以上、NHK報道参照
<<ARB=アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬=AII>>
AIIはレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と呼ばれる生体メカニズムの中で産生されるホルモン様物質でアンジオテンシンIが活性化された物質である。
AIIの働きとして下記のような働きがある。
細胞質内にCa2+を流入させることにより血管を収縮させ血圧を上昇させる。
副腎皮質球状層のアルドステロン合成を促進し、分泌させる。
視床下部に作用して口渇感とADH(抗利尿ホルモン;antidiuretic hormone)放出を促す。
近位尿細管でNa+の再吸収を促進させる。
レニン分泌を抑制する。
AII受容体はAT1とAT2の2つがあり、AIIの大部分はAT1に結合して上記のような作用を発現する。AII拮抗薬はこのAT1受容体を直接阻害して降圧作用を示す。同じようにアンジオテンシン系の降圧剤としてACE阻害薬がある。
2006年12月には日本でもロサルタンとヒドロクロロチアジドの配合剤「プレミネント:PREMINENT」の販売が開始された。
その後、カンデサルタン、バルサルタン、テルミサルタンも合剤が発売されている。
日本国内で発売されているのは、
例のノバルティス社のバルサルタン(商品名:ディオバン®)、
MSDのロサルタン(商品名:ニューロタン®)、
武田薬品のカンデサルタン・シレキセチル(商品名:ブロプレス®)、
ベーリンガー=アステラスのテルミサルタン(商品名:ミカルディス®)、
第一三共=興和創薬のオルメサルタン メドキソミル(商品名:オルメテック®)、
大日本住友のイルベサルタン(商品名 アバプロ®/イルベタン®)
などがある。
<ARB剤の一般的な処方注意>
・服用してはいけない場合……本剤の成分に対するアレルギーの前歴/重い肝機能障害/妊婦または妊娠している可能性のある人
(2)慎重に服用すべき場合……両側性腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄/高カリウム血症/重い腎機能障害/肝機能障害またはその前歴/脳血管障害/体液量が減少している人(利尿降圧薬服用中,厳重な減塩療法中,血液透析中)/高齢者
(3)妊娠……服用中に妊娠したら,すぐに処方医へ連絡してください。服用中止。
(4)急激な血圧低下……高血圧症の人が本剤を初めて服用したときには,一過性の急激な血圧低下(ショック症状,意識喪失,呼吸困難などを伴う)をおこすことがあります。何らかの異常を感じたら,ただちに処方医へ要連絡。
(5)その他……・〈授乳婦→回避・授乳中止〉〈小児→未確立〉〈危険作業→注意〉
(2)慎重に服用すべき場合……両側性腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄/高カリウム血症/重い腎機能障害/肝機能障害またはその前歴/脳血管障害/体液量が減少している人(利尿降圧薬服用中,厳重な減塩療法中,血液透析中)/高齢者
(3)妊娠……服用中に妊娠したら,すぐに処方医へ連絡してください。服用中止。
(4)急激な血圧低下……高血圧症の人が本剤を初めて服用したときには,一過性の急激な血圧低下(ショック症状,意識喪失,呼吸困難などを伴う)をおこすことがあります。何らかの異常を感じたら,ただちに処方医へ要連絡。
(5)その他……・〈授乳婦→回避・授乳中止〉〈小児→未確立〉〈危険作業→注意〉
<<ACE阻害薬>>
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬、angiotensin converting enzyme inhibitor、ACE inhibitor)は、アンジオテンシンIをアンジオテンシンIIに変換するACE(アンジオテンシン変換酵素:angiotensin-converting enzyme)を阻害する薬物である。日本薬局方に収載されているカプトプリルをはじめ、多くの薬物が臨床で用いられている。
<降圧作用>
アンジオテンシンIIは血管の収縮などにより血圧を上げる働きがある。ACE阻害薬は、ACEを阻害する事でアンジオテンシンIIの生成を抑制するとともにブラジキニンの分解抑制によるNO(一酸化窒素)増加により末梢血管を拡張し降圧作用を示す。
<腎保護作用>
腎臓の輸出細動脈を拡張し、アンジオテンシンII受容体拮抗薬とともに糸球体内圧を下げることによる直接的な腎保護作用がある(ただし、腎機能が中程度~高度に低下し血清クレアチニン値が3mg/dL以上あるいはクレアチニンクリアランスが30未満の患者では、腎輸出細動脈の拡張に伴い糸球体内圧が過度に低下し、乏尿など腎機能が却って悪化することがあるので注意が必要である。
<その他の作用>
ACE阻害薬はインスリンの感受性を改善し、その効果は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬よりも優れるとの報告がある(FISIC試験:2011)。
高齢者の肺炎防止効果が認められ肺炎発生率を1/3程度に低下させたとの報告がある(脳卒中治療ガイドライン2009)。高齢者では、大脳基底核でのドパミンの産生低下に伴いC繊維のサブスタンスP低下し嚥下機能の低下することにより、夜間に唾液が肺に入ることで感染症(肺炎)が起こっている。
ACE阻害薬は、サブスタンスPの分解を抑制することで、低下した嚥下機能を改善し、夜間の不顕性誤嚥を防止することで肺炎を防止すると考えられている。
心筋梗塞や心不全患者の心筋リモデリングを防止し、生命予後改善(延命)効果が報告されている。
<副作用>
アンジオテンシン変換酵素は、キニナーゼIIとして、ブラジキニンやサブスタンスPを分解する働きもある。ブラジキニンやサブスタンスPの過剰産生による、血圧低下や空咳などが知られている。
空咳は若い女性に比較的多くみられるが、閉経後や高齢者では少なく、心保護効果や誤嚥性肺炎防止効果が期待できる。
■一般的注意■
(1)服用してはいけない場合……本剤の成分に対するアレルギーの前歴/妊娠または妊娠している可能性のある人/イトラコナゾール,シクロスポリンの服用中
(2)慎重に服用すべき場合……両側性・片側性腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄/高カリウム血症/腎機能障害/高齢者
(3)服用法を厳守……本剤の食前(空腹時)の服用は,食後の服用に比べて血中濃度が高くなります。本剤の服用時期により降圧効果に影響が出るので,指示された服用法を厳守してください。
(4)妊娠……服用中に妊娠したら,すぐに処方医へ連絡してください。服用が中止になります。
(5)その他……
・〈授乳婦→回避・授乳中止〉〈小児→未確立〉〈危険作業→注意〉
(1)服用してはいけない場合……本剤の成分に対するアレルギーの前歴/妊娠または妊娠している可能性のある人/イトラコナゾール,シクロスポリンの服用中
(2)慎重に服用すべき場合……両側性・片側性腎動脈狭窄,片腎の腎動脈狭窄/高カリウム血症/腎機能障害/高齢者
(3)服用法を厳守……本剤の食前(空腹時)の服用は,食後の服用に比べて血中濃度が高くなります。本剤の服用時期により降圧効果に影響が出るので,指示された服用法を厳守してください。
(4)妊娠……服用中に妊娠したら,すぐに処方医へ連絡してください。服用が中止になります。
(5)その他……
・〈授乳婦→回避・授乳中止〉〈小児→未確立〉〈危険作業→注意〉
別の記事では
<重大な副作用>として
(1)アナフィラキシー様症状(不快感,口内異常感,発汗,じん麻疹,呼吸困難,全身潮紅,むくみなど)がおこることがある。
(2)顔面,口唇,咽頭,舌の腫れを症状とする血管浮腫がおこることがある。
(3)急性肝炎や劇症肝炎がおこることがある。
(4)腎不全がおこることがある。
(5)ショック,血圧低下に伴う冷感,嘔吐,失神,意識消失がおこることがある。
(6)筋肉痛,脱力感,CKの上昇,血中・尿中のミオグロビン値の上昇などを特徴とする横紋筋(おうもんきん)融解症がおこることがある。
(7)高カリウム血症がおこることがある。
(8)心室性期外収縮,心房細動,房室ブロックなどの不整脈がおこることがある。
(9)汎血球減少症,白血球減少,血小板減少がおこることがある。
(10)低血糖(脱力感,空腹感,冷汗,手のふるえ,集中力低下,けいれん,意識障害など)が現れることがある。
(11)その他,類似薬のバルサルタンで,発熱,せき,呼吸困難などを伴う間質性肺炎の報告がある。
以上、
処方の「一般的な注意点」には、「妊娠中の人には処方しない」と記載しているが、「重大な副作用」の事項では、妊娠にかかわる副作用は記載されていない。
メーカーや薬剤の説明書にもよろうが、医師が一番注意するのは、「重大な副作用」の項目ではないのだろうか。
医薬品メーカーは、「重大な副作用」の項目から妊娠中の女性についての処方の注意を、「一般的な注意点」に記載していることから、意識的に記載してこなかったのではと思われる。
こうしたメーカー側の記載の仕方が、医師の間違いを引き起こし、こうした医療事故を引き起こしているといえよう。
[ 2013年11月15日 ]
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