アイコン がんの鍵酵素「Rce1」解明/京大岩田想教授ら

がんを引き起こす鍵となっている酵素が働く仕組みを、京都大の岩田想教授(構造生物学)のチームが突き止め、1日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
細胞制御に関わる重要な分子であるRas(ラス)たんぱく質は、常に活性化(スイッチオンの状態)されるような突然変異により、高頻度で「がん」を引き起こすことが知られている。
Rasたんぱく質の活性化には、このたんぱく質の特定の部分がRce1というたんぱく質分解酵素によって切断されることが重要。
Rasたんぱく質が突然変異を持っていても、Rce1による切断が起こらないと、Rasたんぱく質の細胞膜への移行が妨げられ、「がん」を引き起こす働きが抑制されることが分かっている。
 バーフォード教授(英国がん研究所)は、Rce1によるRasたんぱく質活性化の仕組みを調べるために、ヒトのRce1とよく似ている古細菌由来Rce1たんぱく質を結晶化し、X線構造解析を試みた。

しかし、Rce1は良好な結晶を得ることが難しく、実験が難航していた。
そこで本研究グループは、抗体を用いて、膜たんぱく質の結晶化を促進する独自技術をRce1に適用した。
この抗体とRce1との複合体を作ったところ、良好な結晶を得ることができ、その立体構造を原子レベルで解明することができた。
さらに、Rce1の構造中に見いだされた「くぼみ」にコンピューターシミュレーションを用いてRasたんぱく質をドッキングさせることにより、Rce1によるRas活性化の詳細な分子機構が分かった。
としている。


がんの鍵酵素「Rce1」解明

今後の展開では、Rce1の酵素活性中心部位の「くぼみ」の構造情報が明らかになったことで、Rce1の酵素活性を阻害する、あるいは調節できる薬剤(治療薬)の探索・設計(開発)が可能になると考えられる。
また、今回の抗体フラグメントそのものの構造情報、および抗体の遺伝子を活用することで、Rce1の活性に何らかの影響を与える抗体ベースの薬剤の設計・作製が可能になる。
 さらに、本研究で開発した膜たんぱく質の立体構造を認識する抗体フラグメント作製技術により、これまで立体構造解析が難しかった多くの膜たんぱく質の結晶化および構造解析をより迅速に導いていくとともに、膜たんぱく質の機能解析にも役立つことが期待されているとしている。
Rasは細胞を異常増殖させてがんを引き起こし、膵臓がんの約9割、大腸がんの約4割で一因となり、白血病や肺がん、乳がんなどにも関与するとされている。


 

[ 2013年12月 2日 ]
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