中国経済事情 多くが住宅ローン停止へ 不動産市場ほか
東証2部上場の原弘産は12日、中国で開発していた商業複合施設の分譲マンション(2,197戸)が竣工したにもかかわらず、当局の金融引き締めや不況により約6割(1,332戸)しか契約できず、開発している現地法人を売却して撤退する発表した。
中国では過去10年間で、主要都市の不動産価格は4倍以上も上昇し、完全に不動産バブル、庶民には手が出せない価格になっているにもかかわらず、多額の利 益を簡単に手にすることができる転売目的で、借金してまで購入する客が数多におり、価格高騰を抑えることができない状態が続いている。
<不動産市場への規制>
中国では2009年から2010年にかけての不動産がバブル化し、住宅価格が急騰、国務院常務会議は、2010年「国十条」、2011年「新国八条」と呼ばれる価格抑制策を導入、住宅価格は2011年から12年初にかけて落ち着きを見せた。しかし、昨年半ばから再び上昇し始め、本年2月、常務会議は「(新)国五条」を決定し、4月から実施している。
<住宅ローンリスク広がる>住宅ローン停止
国際金融紙が報じるところでは、中国での不動産市場への金融引き締めや新税導入予定などから、中国32都市のうち、17都市で銀行が住宅ローンを一時停止、多くの銀行は、現在の住宅ローンの審査を来年1月に先送りしているという。
住宅ローンの一時停止について、専門家は中小銀行で、今年上半期に予定を上回る過剰な貸出が行われたため、貸出枠が不足していることが影響していると分析。
また、今年に入ってから再び価格が高騰した不動産市場の先行きに銀行が、ネガティブな見方を示し、リスク回避のため、貸出のペースを落としたとも指摘されている。
人民銀行の第三四半期の資料によると、9月末時点の主要金融機関(外資含む)による不動産向け融資残高は、前年同期比19%増の14.17兆元(約240兆89百億円/16.999円)に達し、伸び率は他業界向け融資残高の伸び率より4.7%増となっているという。
急速に拡大する融資需要に多くの銀行はストップをかけた。金融調査によると、全国主要32都市の銀行500行の不動産融資商品については、不動産向け融資中断の動きは一線都市から二、三線都市まで拡大、これまで2軒目の住宅購入に融資を認めなかったが、現在1軒目の購入も徐々に規制し始めているという。
当調査では、これまで行われてきた金利優遇の規模も縮小されたと言及。それによると、1軒目の住宅を購入する際、500行の6.3%の銀行は、基準金利より15%割引いた住宅ローンを提供、16.7%の銀行は、基準金利10%オフを優遇、44.5%の銀行は基準金利のまま、16.2%の銀行は基準金利を上回る金利で融資、約16.3%の銀行は不動産向け融資をすでに中断しているという。
鏈家不動産市場研究部は、上半期の過剰な融資で、貸出枠が不足し、第4四半期のローン審査は、ほぼ来年に延期され、金利もある程度の上昇が見られたとしている。
北京市の銀行業界関係者も、融資決定するまでに以前より時間がかかり、金利優遇もほぼ行われていないと認めている。
不動産仲介業の関係者は「融資中止の通知を受けていないが、ローン審査は以前までは20日間程度で終っていたが、今は2ヶ月かかる。中には5ヶ月かかった場合もある」と話しているという。
不動産業界の専門家は、上半期に融資残高が急増したことについて、「現在ローン審査を申請している市民の多くは1軒目の住宅を購入している。一部の都市では不動産価格が高騰し、金利が上がっても購入に踏み切る市民が多いため」としている。
融360研究院の専門家は、不動産価格の高騰で不動産バブルへの懸念が高まっていることも融資中断の一因であると述べている。
今後、不動産税が導入されるなど不動産規制が強化されるため、銀行がリスク回避のために融資を中断し、年内は中断が常態化すると専門家はみている。
不動産価格は上がり続けるという神話がまかり通り、一次取得の庶民まで上がり続ける不動産購入に、多くの借金をして購入している。
不動産業界も、厳しくなるばかりの2軒目取得の住宅ローンであるが、裏技を用意している。2軒目を取得する客には、1軒目を担保に入れさせ、補修する目的で銀行から借り入れさせ、2軒目の頭金にさせているという。1軒目が値上がりしており、住宅ローンが当然残っているものの、多くの評価余力が出るそうだ。
また、シャドーバンキングなる貸金業者も多く、大手では開発業者への開発資金の融資、中小では、ローンが組めない人たち向けに高利で貸し付けられているという。
不動産購入者も、投機目的も多く、少々金利が高くても、即転売すれば、おお儲か利することから、後を絶たない状態であり、こうしたニーズの強さが、不動産業界への当局の規制強化を反故にしている実態となっている。
(中国は、独裁政権であり、強力に締め付けることは簡単だろうが、間違えば、バブルの崩壊が現実のものとなり、不動産価格の上昇で内需が形成されている部分も大きく、その崩壊の影響は計り知れないものとなる。)
<財政難の地方都市>不動産開発の踊った地方都市
中国財政部駐河北省出張所の調査報告書によれば、2012年6月末時点で、同省11市のうち、6市の債務比率が100%を超えている。
省都の石家庄市は241%でワースト1位、続いては唐山市(188%)、邢台市(153.2%)、秦皇島市(147%)、衡水市(135%)、張家口市(129%)。また、区レベルの地方政府性債務はさらに深刻で、張家口市橋東区の債務比率は308%に達した。
(地方政府の債務比率は、返済責任を負う年度末の債務残高の総合財政力(税収のほか、中央政府からの財政移転、土地売却益などを含む)に対する比率。債務の規模を示す重要な指標)
一方、国家審計局(監査局)は6月、15の省を含め全国36の地方政府の負債状況の監査結果を公表。
それによると、2012年、9省の省都が返済責任を負う債務の債務比率が100%を超え、ワースト1位は189%。担保責任を負う債務を加えると、債務比率は最高219%に達した。また、15省都のうち、14省都の返済期限超過の債務は181.70億元(約2900億円)を上回っているという。
国家審計局は、債務比率が100%を超えた9省都を公表していないが、民間の証券会社「宏源証券」は、広州や南京、西安、成都などの主要都市を推定しているという。
<シャドーバンキング>
社科院の報告書では、2012年末では、影の銀行の規模は20.5兆元(約348兆円)、国民総生産の40%を占めているとしている。
米ムーディーズ・インベスターズによると、影の銀行の規模は2012年末には4兆7000億ドルに膨らみ、中国の国内総生産(GDP)の55%に達したとしている。
フィッチ・レーティングスの2013年の発表によれば、影の銀行の融資をも含めて、中国の融資規模はGDPの198%に相当するとしている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは「中国政府も影の銀行の規模を把握できておらず、その拡大を抑制できない」と問題の重大さを示唆している。
(当局が、このシャドーバングの資金規制強化に乗り出し、資金の出所の金融機関などに対して、融資先の調書の提出を求めている。しかし、あまりに巨額となり、今の経済を支えているシャドーバンキング資金の規制を強化しすぎれば、バブル崩壊や融資先の倒産が目に見えて発生することになる。
しかし、当局の不動産業界への規制強化は、徐々に浸透しつつある。開発側へも、購入側へも強化されてきている。
ただ、抜け目のないシャドーバキングたちは、主に香港やマカオから、架空の輸出証により、資金調達していた。当局が、5月こうした資金目的の架空輸出の規制の強化に乗り出したところ、6月には、いっぺんに金融機関が資金不足に陥り、国が緊急に資金を市場へ拠出したほどである。
シャドーバンキングの資金も規制がかかりつつあるが、今11月には、輸出額の異常な伸びを示しており、再度そうした資金調達が行われたのではと見られている。逆に言えば、中国の貿易収支報告はまともではないということも意味している)
<官僚汚職で進まぬ政治>法律の徹底運用では官僚全滅=共産党政権崩壊
官僚腐敗や汚職はすでに日常化、普遍化、長期化している。腐敗是正という一時的運動をもって、60数年間に形成されてきた悪習を一掃できるとは考えられない。もし法律に基づいて徹底的に取り締まれば、官僚がほぼ全滅し、共産党独裁政権の崩壊になりかねない。中央・地方政府の拝金主義を根絶することはほぼ不可能となっている。
<低所得世帯限定の保障性住宅も不正取得横行>
所得格差は広がり、政府は2015年までに低所得世帯限定の「保障性住宅」3600万戸建設事業を推進している。
しかし、その何割かは官僚達の懐に入っているともいわれ、低所得世帯限定にもかかわらず4千元/㎡と低所得者には手が出せない価格で販売されているという。
(中国の分譲マンションは空間販売、内装はキッチンからトイレにいたるまで購入者が行う)
フィナンシャル・タイムズの報道では、「不動産市場を冷えさせるこの重要な国家戦略は失敗に終わる可能性が高い」と指摘し、「保障性住宅は、不動産価格の上昇を阻止できていない。汚職幹部に悪用されている。巨額の負債を抱えている企業や都市政府の財政負担をいっそう強めている」と指摘している。
今年8月に発表された国家審計局(監査院)の統計でも、昨年1年間で約58億元(約986億円)の同住宅の建設予算は不正に流用され、11万戸の購入者は申請書類の偽造などにより住宅を不正に取得していると指摘しているという。
上海に林立するマンション群
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