アイコン 豚流行性下痢PED全国へ拡がる 予防と対策/宮崎大産業動物防疫リサーチセンター

沖縄で当初発症した豚流行性下痢PEDは、鹿児島、宮崎、熊本、大分、佐賀、高知、岡山、茨城、青森などで発症、致死率が高く、2月27日時点ですでに5千頭超の豚が死んでいる。特に子豚が感染した場合、致死率が高くなっている。PEDは糞口感染である。

<消毒薬はエーテル、クロロホルムが有効>60℃超・30分で不活
PEDウイルスは、コロナウイルス科に属するが、同科のTGE ウイルスとは抗原的および遺伝学的に異なる。PEDウイルス粒子の直径は95~190nm(平均130nm)である。形態は多形性で、表面に長さ18~23nm のスパイクを保有している。
核酸は、1 本鎖RNA で、N 蛋白(MW58kDa)、M 蛋白(MW20-32kDa)およびS 蛋白(MW85-135kDa)の3 種のウイルス構成蛋白からなる。
pH5 ~9(4℃)で安定であり、凍結・融解の繰り返しでも比較的安定である。60℃・30 分で不活化されるが、TGE ウイルスとは異なり52℃ではかなり安定である。エーテル、クロロホルムで不活化される。

<沖縄>
2013年9月2日~16日に沖縄県の1農場(種雄豚6頭、繁殖母豚80頭、哺乳豚155頭、子豚250頭)で発生が確認された。
発生頭数は哺乳豚155頭で、 うち約75頭死亡した。
症状として、9月2日~4日に母豚の2頭に嘔吐および下痢が認められ、その後、哺乳豚に嘔吐および黄色(水様性)下痢が発生し、9月16日までに哺乳豚約50頭が死亡した。
その他、食欲不振もみられた。10月1日に免疫組織化学検査にて豚流行性下痢と診断された。
剖検所見では、胃の膨満、小腸壁のひ薄化がみられた。
対策として、消毒(車両、畜舎、分娩豚房毎の手指消毒)等および母豚へのワクチン接種が実施された。周辺農場および関連農場に異常はない。
疫学調査として、ウイルス遺伝子の解析から、過去の国内分離株とは異なり、2013年米国および近年アジア諸国で流行している新たにグループに属する株と近縁であった。

<茨城>
2013年11月、茨城県において、 2件発生した。1例目は、豚1665頭(種豚15頭、母豚150頭、子豚1500頭)飼養農場で、種豚2頭、母豚21頭、子豚165頭(うち死亡頭数 約131頭)が発症した。
経緯として、
11月9日、農場において嘔吐および下痢を示す母豚が確認され、発症母豚由来哺乳豚で、生後2日以降に嘔吐および下痢、死亡確認がみられた。
11月11日、家畜保健衛生所に通報、立入検査、病性鑑定が実施され、
11月18日、免疫組織化学検査で陽性となり、豚流行性下痢と診断された。
臨床症状は、下痢、嘔吐、食欲不振、母豚の泌乳停止、哺乳豚の低体温がみられた。
剖検所見としては、胃の膨満、未消化凝固乳滞留、小腸における壁のひ薄化および未消化物を多く含む黄色水様性腸内容物の充満、大腸における壁のひ薄化および緑黄色内容物の充満がみられた。
ウイルス学的検査では、空回腸および結腸内容物のPCRで、PEDウイルス遺伝子が検出された。
遺伝子解析(動物衛生研究所)では、2013年9月発生の沖縄県で分離された株と遺伝学的に完全に一致しないもののごく近縁であり、1980年代および1990年代の国内分離株とは明確に区分され、近年米国およびアジア諸国で流行している株と近縁であることが判明した。

<防疫措置>
消毒(車両、畜舎、手指消毒)の実施、母豚へのワクチン接種実施、飼養衛生管理基準の徹底がされた。感染経路等の疫学調査は実施中である。周辺農場には異常ない。
2例目は、母豚200頭一貫経営農場で、種豚4頭、母豚34頭、子豚180頭(うち死亡頭数約103頭)が発症した。11月下旬から分娩舎で哺乳豚に下痢がみられた。
遺伝子解析では、茨城県1例目および沖縄県分離された株と近縁であった。
その後、現時点(2014年1月19日現在)で、鹿児島で69件、宮崎県で13件が報告され、その拡大が危惧されている。

<予防と対策>
PEDの予防で最も重要なことは、衛生管理を徹底し、ウイルスの侵入を防止すること、さらに病気が発生した場合にその拡大を防ぐことである。
1. 農場バイオセキュリティの強化
農場出入口に踏み込み消毒槽を常設し、車輌、人の出入りを制限する。車輌、衣類、畜舎、器具・機材の消毒を徹底する。害虫・害獣を駆除する。肥育豚舎、分娩豚舎間の人および用具の移動を極力禁止する。

2. オールイン・オールアウト
発病豚が認められた豚舎は、空舎期間を設け、洗浄・消毒した後、新たに清浄豚を導入する。

3. 隔離対策の強化
(1) 分娩舎の隔離
分娩舎を地理的、時間的あるいは物理的に隔離する。農場から離れた場所に分娩舎を確保する。あるいは、分娩舎を2カ所に分け、一方を分娩母豚と哺乳豚用の豚舎とし、他方を空舎にして繰り返し徹底消毒する。また、管理作業手順も完全に分け、直接の接触がないようにする。同一分娩舎での継続分娩を避け、感染哺乳豚の下痢便による伝播を断ち切る。

(2) 導入豚の隔離
導入豚は、隔離施設で2~4週間の着地検疫期間を設ける。その際、導入先農場でのPEDの発生の有無あるいは導入豚のPEDウイルス抗体の保有状況を確認する。

分娩計画の変更・中断
分娩計画を変更あるいは中断する。すなわち、授精作業を一時的に中止、あるいは、分娩誘発によって分娩予定を繰り上げ、分娩の継続を止める。また、早期離乳を実施し、分娩舎に余裕、すなわち空舎期間を作る。
ウイルス感受性子豚の常時生産で、継続的ウイルス感染で下痢が長期間、群として持続することを断ち切る。

4. 馴致(自家ワクチン危険)
1996年の国内アウトブレイクでは、下痢発症子豚の腸管ミンチを母豚に給与する、いわゆる「自家ワクチン」による馴致が関与した。この馴致方法は、種々の疾病の感染を人為的に拡げる恐れがあり推奨できない。

5.ワクチネーション<ワクチン>
日本では、ワクチンが開発され、現場で応用されている。ワクチネーションは乳汁免疫を基盤とした受動免疫法であり、妊娠母豚への筋肉内注射の2回接種が行われている。

<消毒と持ち出し遮断>
2013年12月現在、PEDワクチン国内在庫が十分ではない。口蹄疫同様、今、ワクチン未使用でも発生を予防するためにPEDウイルス侵入阻止の努力が必要である。PEDは糞口感染であり、排泄物の除去、消毒の徹底と、持ち出しを遮断すれば、止められる伝染病である。

以上、宮崎大産業動物防疫リサーチセンター参照
http://www.agr.miyazaki-u.ac.jp

[ 2014年3月13日 ]
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