アイコン リチウムイオン二次電池材料の世界市場/富士経済

 総合マーケティングビジネスの富士経済は25日、二次電池材料15品目、一次電池材料4品目の世界市場と開発動向を調査した報告書の概要を公表した。
 その結果を報告書「2014 電池関連市場実態総調査 下巻」にまとめた。なお、一次電池、二次電池市場については「同 上巻」で、リチウムイオン二次電池の制御用部品や主要応用製品市場、電池関連企業の事例については「同 中巻」でまとめている。

<注目市場>
 リチウムイオン二次電池材料市場は拡大しているが、車載用電池での強いコストダウン要求や、大型設備投資をしたものの電動自動車の需要が想定を下回り、工場の稼働率維持のために利益率を圧縮してでも受注獲得を進めたこと、さらには東日本大震災によるサプライチェーンの混乱で海外製材料への抵抗が薄れ価格の安い海外製材料との競合が強まったことなど、複数の要因により2012年、2013年にかけて材料単価が下落した。

 スマートフォンやタブレット端末の登場により、高容量のリチウムイオン二次電池が求められている。電池の高容量化には活物質の使用量を増やす、容量の大きい活物質を使用する、充電電圧の高電圧化により活物質の利用深度を高めるといった方法がある。

電池の高容量化を可能とするハイエンド材料では、中国メーカーや韓国メーカーの追随が著しいものの、日本メーカーの優位性はまだ高い。
 一方、ミドルレンジ・ローエンド材料は、中国メーカーや韓国メーカーが強い。特に、日本電池メーカーの生産拠点の中国シフトや韓国電池メーカーの実績拡大を受けて中国メーカーの成長が著しい。
技術的にも日本メーカーや韓国メーカーに引けをとらないレベルのメーカーもあり、ミドルレンジ・ローエンド材料ではコストと性能のバランスの面で中国メーカーに太刀打ちできないことも多い。
 
市場のボリュームゾーンを押さえ生産量の拡大が続く中国メーカーや韓国メーカー、ハイエンド材料を開発し続けることで両者の追随をかわす日本メーカーといった構図となっている。

リチウムイオン二次電池材料は、正極活物質、負極活物質、電解液、セパレータが主要材料といわれる。

正極活物質では、コバルト酸リチウム、三元系(ニッケル・マンガン・コバルト)、マンガン酸リチウム、ニッケル酸リチウム(ニッケル・コバルト・アルミ)、リン酸鉄リチウムなどが材料として使用される。
 電池の高容量化のため活物質の使用量を増やすことは電池体積や重量の増加につながるため、小型民生用では高電圧で充電してコバルト酸リチウムの利用深度を高める方法がトレンドとなっている。

コバルト酸リチウムは価格の乱高下が激しいコバルトを原料としており、一時期シリンダ型ではコバルトの使用量が少ない三元系への移行が進んでいたが、高容量のリチウムイオン二次電池を必要とするスマートフォンやタブレット端末の需要拡大、コバルト価格が安定していることなどからコバルト酸リチウムが復権している。

<車両向けの動向>
充電電圧の高電圧化に対応可能な「コバルト酸リチウム」は日亜化学工業とUmicore(ベルギー)の評価が高く、この他の日本メーカーも高容量・高電圧「コバルト酸リチウム」に活路を見出しており、三元系へのシフトを見越して「コバルト酸リチウム」から撤退したメーカーが再度参入の意欲を示すなど、状況は大きく変化している。

 なお、三元系は車載用にも採用されている。高コストであるため、大容量電池を使用するEV向けでは「マンガン酸リチウム」に混ぜるケースが多く、電池容量の比較的少ないHV向けでは単体で使用されることが多い。
また、航続距離が内燃車と比較して短いEVの電池容量を増やすべきという考えも強く、「マンガン酸リチウム」よりも高容量で航続距離を伸ばせる「ニッケル酸リチウム」を採用する車種もある。

 現在EV向けの主流である「マンガン酸リチウム」は、三元系や「ニッケル酸リチウム」と比べ容量が小さく、高温下では電解液中にマンガンイオンが溶け出し電池の劣化につながるため、高温下でも安定するコバルトを含む「ニッケル酸リチウム」や三元系と混ぜて使用される。マンガンの相場がコバルトやニッケルに比べ低いことから、量産によるスケールメリットを享受しやすい材料である。

 また、今後自動車の販売台数が伸びる新興国の所得水準の低さを考えた場合、コスト高の材料を使った「リチウムイオン二次電池」搭載車が売れるのかという疑問もあり、内燃車の代替として電動自動車を幅広い層に普及させるには、コストが抑えられる「マンガン酸リチウム」を中心に使うのが合理的との考え方もある。

 そのため、性能では「ニッケル酸リチウム」や三元系が優れており、今後も構成比が拡大するとみられるが、中期的には一定数の車種で「マンガン酸リチウム」の使用が続くとみられる。

中国では以前よりパワーツール向けなどに採用されており、ノウハウが蓄積されている「リン酸鉄リチウム」が車載用でも主流である。また、過充電による高温下でも酸素が放出されず電解液が燃えにくく、長寿命であることから、耐久性が必要な車載用での採用拡大も期待される。
 主に炭素系物質が使用されており、結晶質系炭素の黒鉛(グラファイト)、非晶質系炭素のハードカーボンとソフトカーボンなどがある。

現在主流のグラファイトでは、これ以上の高容量化が困難になりつつあり、炭素材改良と炭素材に代わる新規素材の探索がおこなわれている。
一例として、グラファイトに一酸化ケイ素(SiO)を数%混合して容量を上げる取り組みが進んでおり、この一酸化ケイ素の開発は信越化学工業や大阪チタニウムテクノロジーズなどの日本メーカーが先行している。
 車載用ではHVで体積変化が小さく変質しにくい非晶質系炭素が使用されることが多く、ソフトカーボンをラインアップに加える動きも目立っている。また、航続距離を伸ばす目的で容量の大きいシリコン系(SiOやSi)が検討されている。
しかし、小型民生用と異なり10年以上の寿命が求められる車載用では充放電による膨張・収縮で寿命が短くなるシリコン系には課題も多く、メーカーが開発に努めている。

電解質塩と有機溶媒、添加剤を混合したもので、添加剤で機能を付加し差別化を図っている。
 有機溶媒を使用する特性上、電解液の発火リスクはなくならない。難燃性に対するニーズは強く、難燃・不燃性の固体電解質やイオン液体の電解質への採用が試みられているが、出力特性やコスト面などから商用化には時間がかかるとみられる。このため添加剤により難燃化し安全性を高める方法がとられている。

電池の高容量化として充電電圧を高電圧化することで活物質の利用深度を高める方法があるが、高電圧化することで電解液の酸化分解などにより充放電サイクル特性の低下や、高温貯蔵時の膨れなどが発生する。活物質に表面処理を施すことなどで活物質から発生するコバルトイオンと電解液の反応を抑制するなどの対策がなされているが、電解液にフッ素を添加することで酸化防止を図る取り組みなども行われている。
高機能な電解液を展開するメーカーには、宇部興産や三菱化学など以前から電解液市場をけん引してきた老舗メーカーに加え、ダイキン工業が新たに参入しており、この分野でも日本メーカーが目立つ。
正極と負極を電気的に絶縁し、電解液を担持する役割をもつ。現在の主流はポリオレフィン微多孔膜であり、製法により湿式法・乾式法に分けられる。
リチウムイオン二次電池の発火などのトラブルもあり、セーフティーネットであるセパレータの重要性は高まっている。
電解液同様、セパレータでも高電圧化対応が進んでおり、コーティングすることで耐熱性や耐酸化性などを高めたセパレータが増えている。
コーティングにはアルミナやベーマイト、アラミド、フッ素樹脂などが使われており、技術はPolypore(米国)やSK Innovation(韓国)のほか、帝人や住友化学、旭化成イーマテリアルズ、東レバッテリーセパレータフィルムなど日本メーカーが得意とする分野である。

小型民生用では、電池の高容量化で活物質の使用量を増やすために、他の材料の使用量を減らそうとする動きがあり、セパレータの薄膜化が進んでいる。
 セパレータの国産化が遅れていた中国だが、2013年に韓国電池メーカーの車載用や電力貯蔵など大型電池向けで採用が始まり、大きなインパクトを与えた。

<調査結果の概要>
二次電池材料は、リチウムイオン二次電池の主要4材料が市場の6割以上を占めており、同材料の単価が下落したことから全体の市場も伸び悩んでいる。
なお、アルカリ二次電池材料は、短期的にはニカド電池、小型ニッケル水素電池の需要減少で縮小するが、中期的にはHV向けの需要増加で拡大が予測される。また、リチウムイオン二次電池も引き続き拡大し、2018年には1兆円を突破すると予測される。
一次電池でマンガン乾電池からアルカリマンガン乾電池への需要シフトなどがみられるものの、成熟市場であることから一次電池材料市場はほぼ横ばいが予測される。
 

[ 2014年8月26日 ]
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