アイコン MERS感染予防抗体大量育成/京都府大 塚本康浩教授ら  抗体とは、

 

日本の研究チームが中東呼吸器症候群(MERS)感染の予防効果が期待できる抗体を大量精製することに成功し、米国で検証を行っていると報道されている。
京都府立大大学院の塚本康浩教授の研究チームは、ダチョウの卵を使ってMERSウイルスに強く結合する抗体を大量精製することに成功。抗体によって覆われたウイルスは人の細胞に侵入できなくなり、感染予防に大きな効果があるという。

 現在、米国陸軍感染症医学研究所で検証作業が行われているが、すでに韓国と米国に配布され、スプレー状の製品として生産されている。

 抗体とは、免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質、簡単にいうと「体内に侵入した異物に反応・結合して、体の外に排出する働き」を持つ。この抗体の働きが「免疫力」となる。

 今回、塚本教授らは、カイコの細胞で作製したコロナウイルス(ベータ・コロナウイルス)の表面タンパクの一部を抗原としてダチョウに投与。体内で生成された抗体をダチョウが産んだ卵から取り出し精製した。

コロナウイルスは、このタンパクによって人の細胞に取り付くが、塚本教授は「この抗体で、人の細胞に侵入しようとするウイルスをマスキング(覆う)することにより、感染を防ぐことが期待できる」と説明している。

 ダチョウは、鶏などと比較して傷の治りが極めて早く、塚本教授はその免疫力に着目。抗体を作る能力も高いことを突き止め、平成20年に卵から大量の抗体を取り出す技術を開発した。

 同年に新型インフルエンザが流行した際に販売した抗体入りマスクが注目を浴び、昨年はエボラウイルスに結合するダチョウ抗体も作製。これに注目した米国のバイオベンチャー会社と同研究所が共同でMERS対策を進め、現在は精製した抗体の効果や副作用などを検証している。

抗体は、MERSの感染が拡大している韓国のほか、米国にも配布。治療薬としてまだ認可されていないため人体へ直接投与することはできないが、抗体を使ったスプレー剤はマスクやドアノブ、手などに噴射すれば感染予防になる。すでに大量生産しており、医療従事者や韓国と日本の空港への配布を考えているという。
以上、サンケイ新聞など参照

塚本康浩教授は、
1998年から世界一大きな鳥「ダチョウ」に憧れて観察をし始め、ダチョウ牧場「オーストリッチ神戸」のダチョウ主治医に就任し、そこでダチョウの免疫力の高さに気付き本格的なダチョウ及びダチョウ抗体の研究を始める。1999年には、大阪府立大学大学院農学部生命科学研究科博士課程を修了し、同研究科の助手に就任する。家禽(食肉・卵を得る目的で飼う鳥類)のウイルス感染症の研究に着手する。

2008年、40歳という若さで京都府立大学大学院生命環境科学研究科の教授に就任。同年、ダチョウの高い抗体の能力を商品化するため抗体の大量生産に成功、体制を整えた。ダチョウは1.5キロの卵を年間40~50個以上生むことも大量生産を支えている。
JSTの「独創的シーズ展開事業大学発ベンチャー創出推進」に採択され、本格的に事業展開するための京都府立大学ベンチャー企業「オーストリッチファーマ(株)」を設立し、ダチョウ抗体の商品化に向けて乗り出した。

会社設立直後、ダチョウの卵から抽出した抗体を用いた新型インフルエンザ予防のための「ダチョウ抗体マスク」を企業と共同開発した。

高病原性の鳥インフルエンザがヒトへ感染するようになり新型インフルエンザとして流行った場合、それに対抗できるワクチンを事前に用意することは不可能。
同時にワクチンを作り注射したとしても効果が出るまでには2週間以上はかかる。最悪の場合それまでに命を落とす場合もある。こうした心もとない現状を改善できないかと開発に至った。
ダチョウ抗体マスクは2008年8月の発売と同時に多くのメディアから注目を浴び、新型インフルエンザの流行が注目をあびていた時期とも重なり好調な売れ行きをみせた。

2008年の発売開始から3年間で100億円を売り上げるなど現在も風邪の時期には欠かせないものとして今もなお世間の役に立っている。
大好きな鳥で人類を救う第一歩となった。2011年には「関西経済連合会関西財界セミナー賞特別賞」も受賞した。
「ダチョウによる新たな抗体大量作製技術を用いた鳥インフルエンザ防御用素材の開発」が大学、公的研究機関、企業等の産学官連携活動において210億円の経済効果130人の新規雇用の創出に成功という大きな成果を収め、また先導的な取り組みを行う等、産学官連携の推進に多大な貢献をした。
その功績を称えられ、2009年に「文部科学大臣賞」「京都府知事特別表彰受賞」を受賞する。

この開発をもとにダチョウ抗体を利用した食中毒予防、がん治療薬、美容などの研究に取り組んでいる。
抗体マスク以外に開発された商品は、ダチョウ抗体を納豆のタレに混ぜた「抗体納豆」、空気清浄フィルターに活用して「ウイルス対策用空気清浄抗体フィルター」、アトピーの原因菌としても知られる黄色ブドウ球菌抗体を配合させた肌に塗る「オールインワンジェル化粧品」などがある。

塚本康浩獣医師・獣医学博士
経略
1968
京都府生まれ
1994
大阪府立大学農学部獣医学科卒業。
1996~97年
カナダ・ゲルフ大学獣医学部 客員研究員
1998
大阪府立大学大学院農学部生命科学研究学科 博士課程 獣医学専攻修了
 
大阪府立大学 同研究科の助手就任
1999
ダチョウ牧場「オーストリッチ神戸」のダチョウ主治医に就任し、 本格的なダチョウ及びダチョウ抗体の研究を始める。
2005
同大学 講師、準教授に就任
2008
京都府立大学大学院生命環境科学研究科教授に就任
同年6月
京都府立大学発ベンチャー「オーストリッチファーマ株式会社」設立
 
ダチョウの卵から抽出した抗体を用いて新型インフルエンザ予防のためにマスクを開発。以後もダチョウ抗体を利用したさまざまな研究(ガン予防・美容など)に取り組む。
2009
産学官連携推進功労賞表彰「文部科学大臣賞」受賞
2011
関経連 関西財界セミナー 特別賞 受賞
2012
日本バイオベンチャー大賞「フジサンケイビジネスアイ賞」受賞
研究テーマ
ダチョウを用いた新規有用抗体の低コスト・大量作製法の開発
がん細胞における細胞接着分子の機能解明とその臨床応用化、高病原性鳥インフルエンザ防御用素材の開発
 
コロナウイルスは未知のウイルスであり、それらのウイルス抗体を大量に育成できれば、コロナウイルスも死に至る病原菌にはならなくなる。人に対しての投与でも副作用なく効果が確認されれば、ノーベル賞ものだろう。ダチョウやオーストリッチだけではなく、もっと原始的な動物でこうした強い抗体を持つ動物がこの世にいくらでもいるのかもしれない。
 
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[ 2015年6月20日 ]
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