アイコン VWとドイツ政府の癒着が問題の遠因か 独自動車業界の代弁者の独政府

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メルケル首相、シュレッダー元首相、シューテック元首相報道官(現VW主任ロビイスト)、ガブリエル副首相、ウィスマン元運輸相(現自動車工業会会長)VWで登場人物:メルケル首相、シュレッダー元首相、シューテック元首相報道官(現VW主任ロビイスト)、ガブリエル副首相、ウィスマン元運輸相(現自動車工業会会長)

今月17日フランクフルトモーターショーにメルケル首相が登場、VWの首脳陣と一緒に撮影された写真が全世界に配信された。
ドイツでは国民81百万人の7人に1人が直接、間接に自動車製造によって生計を立てているという。自動車産業ほどドイツ経済にとって重要であり、政府と緊密な関係を持つ業界はないとされる。
そのドイツ政界トップのメルケル首相とVW首脳陣の写真が世界に配信された翌日の18日、アメリカ環境保護局は、VWが違法プログラムを搭載して排ガス検査逃れをしていたと発表、ドイツどころか世界を震撼させた。

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今回の不正の背景には、ドイツの歴代政権が自動車産業と癒着していた構造にあると批判が噴出している。
ドイツでの自動車業界の政治家に対するロビー活動は群を抜いており、中でもVWは時の政権と常に密接な関係を有していることで知られているという。

VWは、ヒットラーが国民車普及を提唱し、後に軍事用車両を造る国策会社として興させた経緯があり、現在でもニーダーザクセン州政府が同社株の20%を保有することを法律で保証されているほど、政治と密接に関係している。

同州の首相からドイツ連邦首相に上り詰めたシュレッダー前首相、首相になれたのはVWの手厚い支援の賜物ともされている。そのシュレッダー前首相の報道官だったシュテーク氏は現在、VWの主任ロビイストとしてドイツ政界を動かしている。

現メルケル政権でも、副首相のガブリエル氏も同州の首相としてVWの役員(大株主として)になっていた時期もあったほど関係は深い。

早速、ガブリエル副首相は21日、「ドイツの自動車産業、とりわけVWの優れた評判が傷つくことを心配している」と述べ、独産業界の象徴である企業の問題が拡大、長期化しかねないことに懸念を表明している。

ドイツ自動車工業会(VDA)のウィスマン現会長は、コール政権(CDU)下、自動車業界を管轄する運輸大臣を務めていた。
こうしたことからも政治家と自動車業界の癒着構造は現に深く存在するといえる。

コール政権下、初入閣して環境大臣になった現メルケル首相は、当時のスモッグ対策に高速道アウトバーンでの速度制限導入を図ろうとした。ところが、運輸大臣のウィスマン氏から強硬に反対し、潰された経緯があるという。

ウィスマン氏は独自動車工業会のトップとして君臨、現在のメルケル首相とも緊密な関係を維持、欧州連合(EU)が2013年、地球温暖化対策から自動車の二酸化炭素(CO2)排出基準(=低燃費基準)を厳しくしようとした際、ウィスマン氏は業界を代表して、メルケル首相に対しファーストネームで「親愛なるアンゲラ」で始まるお手紙を送り、反対するように求めていたことが後に発覚していた。
ロイターによると、2013年当事、EU内で進められていたCO2排出基準強化に対して、ドイツ政府は逆に緩めるように強硬に主張したという。
また、メルケル首相も「環境保護を目指す私たちの行動が、自らの産業基盤を壊さないように保証する必要がある」と議会で発言もしている。

その直後の総選挙で属するCDUが勝利し、メルケル政権の3期目が決定、CDUに対し、BMW関係者から69万€(約92百万円/134円)の献金が贈られたことも知られている。
EUが進めている排ガス検査ごまかし違法プログラムの自動車搭載禁止に対しても、独政府は強硬に反対して応じなかったという。

結果、違法プログラムが搭載され、現実の走行時の排ガスがなおざりにされ、大量に大気汚染物質で、光化学スモッグを引き起こすNOxの排ガスを、大幅に超えた水準で排出させ続けさせていた。

ドイツでは、今回の事態を受け、自動車の検査について、運輸省とは独立した機関が行うべきだと主張する議員や、VWの今回の不正についても、国会議員たちが、消費者団体などが指名した専門家も加えた独立調査委員会を設置して調査することを要求、また、現行の車両についても当委員会で独自に排ガス検査を行うことも求めている。

ドイツでは、ディーゼルエンジン車は法律で認められた以上の汚染を引き起こしており、排ガス試験は適切に行われていないと以前から報じられていた。
それが、欧州最大の自動車メーカーのVWの違法プログラムで、現実に違法となる排ガスを発せさせていたことが証明されてしまった。

AFPは24日、自動車排ガス検査に関するドイツ政府の「政策方針書」を、欧州連合(EU)の規制機関に対し、外交官たちに配布させていたと報道した。
 その内容は、最新の車両試験でも重大な抜け穴を残し、実際の二酸化炭素(CO2)排出量が公式結果として発表される排出量より多くなるよう要請しているという。
また、英ガーディアンの報道でも、ドイツ政府の技術文書で、従来の試験NEDC(新欧州ドライビングサイクル試験方法)から厳密な新試験WLTP(欧州委員会主導の世界共通排出ガス試験方法)への変更点に、制限を加える方策を具体的に論じているという。
まさにドイツ政府はVW・独自動車工業会の代弁者でしかないことを物語っている。
以上、

こうしてみると、違法プログラムの搭載禁止さえ強硬に反対したドイツ政府、違法プログラムの搭載を認めていたとも受け止められ、独政府自身が基準値以上のCO2やNOxの大量排ガスについても容認していたとも受け止められる。
これでは、アメリカで発覚した問題の衝撃を受け、ドイツ政府は、せいぜいリコールを要請することが関の山だろう。
現にアメリカの制裁金は48万2千台に対してMAX180億ドルを課すとされる一方、VW本国のドイツの制裁金は国内の問題車280万台に対して数十億ドルと報道されている。それがドイツでの現実なのだろう。

なお、これまでの記事で中国での制裁がどうなるかと掲載してきたが、中国ではガソリン車しか製造販売されていないという。国営企業が生産する劣悪ガソリン・劣悪軽油にあるのだろう。一方、韓国ではEUとFTAを締結し、無関税で輸出しており、環境基準も欧州基準を採用している。既報のとおり、問題のディーゼル車も韓国では販売されており、当局は検査するとしている。

Volkswagen Group
発行済株式(普通株)
2億9508万株
資本金
 
【株主】
【持株比率】
Porsche Automobile Holding SE
32.2%
海外投資機関
24.9%
Qatar Holding LLC
16.4%
ニーダーザクセン州
12.7%
個人投資家等
9.3%
ドイツ内投資機関
3.0%
Porsche GmbH, Salzburg
1.5%
【議決権付株式】
Porsche Automobile Holding SE
50.7%
ニーダーザクセン州
20.0%
Qatar Holding LLC(カタール政府)
17.0%
Porsche GmbH, Salzburg
2.3%
 
[ 2015年9月30日 ]
 

 

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