韓国経済を象徴する「ポスコの赤字」
ポスコの関係者は18日、「昨年の実績を最終集計中だが、最終利益は年間ベースで1000億~2000億ウォン(約96億~192億円)台の赤字を記録する可能性が高い」と語った。ポスコが年間ベースで赤字を記録するのは、1968年の設立以来、初めてのことになる。
ポスコは28日、企業説明会(IR)を開いて実績を発表する予定。
ポスコの最終利益は、2013年には1兆3550億ウォンに達したが、2014年には5567億ウォンに減少し、昨年はマイナスに反転した。
ポスコが最終損失を出したのは、為替レートや原材料価格などの営業外的な要因による影響が大きいと分析されている。特にウォンが下落し、莫大な外貨換算損をこうむったことが分かっている。
このほかにも、国外投資資産の価値の下落や、新日鉄住金と繰り広げた訴訟の和解金など、営業外的な悪材料が一度に重なってポスコの黒字神話を崩壊させたもよう。
<ポスコの歴史>朝鮮紙記事
1969年、韓国鉄鋼大手ポスコの前身、浦項製鉄の朴泰俊元社長は、裸足でハワイ・ワイキキビーチを、海辺を歩いていた。天気は穏やかで、砂は足を刺すように熱かったが、表情は苦悩に満ちていた。
「資金はどこで確保すればよいのか」―。朴社長は浦項製鉄所の建設資金を借り入れるために訪米したが断られた。資金を提供するはずだった米国人が申し訳ないと言って、ハワイのコンドミニアムで休んでいけと言ったのだった。ぼーっと海を見ていた朴社長の脳裏に突然、韓国政府が日本から得た戦後補償資金のことが浮かんだ。すぐに朴正熙大統領に電話をかけると、「使ってもよい」との答えが返ってきた。
問題の資金は、日本の植民地支配に対する一切の戦後補償金。朴社長は社員に対し、「製鉄所は祖先の血の代償で建てるものだ。失敗したら皆で迎日湾に沈んで死ななければならない」と語った。寝る間も惜しむ工事の末、1973年に製鉄所が完成した。
<八幡製鉄所あってのポスコだった>
(当製鉄所は当時、八幡製鉄所(現、新日鐵)の世界でも最新式の溶鉱炉のプラント輸出が日本の政権により強制され、移転することになり、溶鉱炉が建造された。その結果、鉄鋼のブーメラン現象が生じ、新日鐵から電磁鋼板製造技術盗むなど、日本の鉄鋼業界に大きな影響を与え続けている。)
浦項製鉄は、92年に朴泰俊氏が退任する時点で、鉄鋼生産能力を年2100万トンにまで引き上げた。生産初年度に46億ウォンだった利益は92年には1852億ウォンまで膨らんだ。「鉄の神話」と呼ばれた。
<長年にわたる政権との癒着>
神話の裏にはある原則があった。負債比率を80%以下に抑制したことだった。また、政治による介入で経営判断を行うことを避けた。
朴泰俊氏は「自分の力の90%を外部からの圧力を防ぐことに使った」と振り返った。辞表を胸に青瓦台(韓国大統領府)を訪ねたこともしばしばだった。
アジア通貨危機が到来すると、負債抑制の原則が効果を発揮した。大企業の負債比率が最高で400%を超える中、ポスコは100%にも満たなかった。ポスコは通貨危機の年に7000億ウォンの黒字を出した。ポスコ以外で黒字だったのはサムスン電子だけだった。
そんなポスコが昨年、初の赤字を記録したという。
「ウォン安が進んだ上、原材料価格が下落し、世界の鉄鋼業界はどこも苦しかった」というのが会社側の説明。
しかし、投資家は雪だるま式に膨らんだ系列企業の赤字の方が問題だとみている。ポスコは昨年までに系列企業19社を売却したが、現在も46社を抱えている。
前会長の在任中に海外投資、企業の合併・買収を繰り返した新事業の失敗がブーメランとなって返ってきた。
新事業に挑戦して失敗したことを非難はできない。しかし、事業拡張の動機が政治的外圧によるもので、それを推進した経営者が政権実力者によってポストに就いたものだとすれば話が違ってくる。
2000年に民営化されて以降も政権が交代するたびに時の政権に近い人物が会長に就任した。
朴泰俊氏の退任以降、後任の経営者が相次いで政治に染まり、長年守った原則が崩壊してしまった。
一時は5兆ウォンを超えた社内留保も底を突き、サムスン電子を超えていた株価も半分にまで下落した。
先代の血と引き換えに成し遂げた「鉄の神話」を復活させるためには、政界の外圧を阻んだ経営原則から取り戻すべきだと掲載している。
以上、
ポスコは、現在も、李明博政権時代の癒着・賄賂問題に揺れ続けている。
ポスコは、インドネシアにも李明博政権と共同で進出、2014年秋完成を見たが、事故が続き、その間に、インドネシア経済もおかしくなってしまっている。(韓国政府・ポスコは、インドネシアに働きかけ、当時高騰していた鉄鉱石の輸出を思いとどまらせ、付加価値を付け鉄鋼品として輸出するという策略を講じ、ポスコがインドネシアに高炉を建設することで決定、高炉の建設・完成を見たが、この間、鉄鉱石は暴落し、インドネシアは輸出制限したことで儲け損なう結果を招いた)
ポスコは、また、ベトナムにも高炉を建設したものの、東南アジアの経済低迷から、ベトナム産鋼材を韓国へ輸入を目論んだが、韓国の鉄鋼市場は中国からの廉価品が大量に入り込み、韓国のほかの製鉄会社らから猛反対を受けている。
中国の鉄鋼生産は約8億トン、経済低迷により、2億トン以上が過剰生産に陥っており、その鉄鋼品が世界に向け輸出され、世界の鉄鋼価格を激落させている。
特に東南アジアなどは、中国製鋼材で溢れ、中国産が席捲している。ポスコのベトナム工場鉄鋼製品も廉価だろうが、中国は輸入炭も多いが国内炭も多く生産され、価格では太刀打ちできないものとなっている。
これまで、輸出で大儲けして生産拡大してきたポスコも、中国勢を前に優位性ある製品は限られている。生産拡大の工場建設などからして、中国経済が立ち直るまで、苦しい展開が続くものと見られる。
果たして、中国経済が構造改革も遅々として行わず、7.5%以上に回復してくるだろうか。2015年の中国のGDPは6.9%だが、鉱工業生産は6.0%にとどまってもいる。
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