アイコン 韓国経済 シャープの道をたどる韓国の液晶ディスプレイ業界 中国BOEの脅威

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韓国のLCD(液晶表示装置)産業が中国に追い上げられている。LGディスプレイとサムスンディスプレイは19本のLCD生産ラインのうち中小型6本を閉鎖したのに続き、2、3本のラインの稼働を追加で中断する計画。

中国企業が中小型LCDを安く供給し、採算が取れなくなっている。中国企業は中小型LCDに続き、大型LCDとOLED(有機発光ダイオード)の生産も増やし、この分野で韓国企業に追いつくのは時間の問題という指摘もされている。
過去、シャープはじめ日本勢のTV業界が、韓国勢に世界市場を奪われ、高級大型分野へ駒を進めた時とまったく同じ構図となっている。
 
サムスン、8ラインのうち5ライン閉鎖
<LGディスプレイ>
韓 国のディスプレイ業界によると、最大手のLGディスプレイは、慶尚北道亀尾にあるP2、P3の2本のラインを来年から稼働中断するという。P2、P3ライ ンはそれぞれ第3.5世代(ガラス基盤のサイズ590ミリx670ミリ)と第4世代(680ミリx880ミリ)のLCDパネルを生産してきたところで、 1997年と2000年に完工した。
LGは、P4ラインの一部もOLED照明用に転換することを検討している。P5ラインはフレキシブルOLED用に変更している。すでに11本のLCD生産ラインのうちP1は研究用に変えている。
<サムスンディスプレイ>
サムスンディスプレイは、韓国内のLCDライン8本のうち5本(L1-L5)を昨年までに閉鎖した。昨年12月に閉鎖した忠清南道天安のL5ライン装備は中国企業に売却している。残りの3本のラインのうちL6ラインを昨年からアモルファスシリコン(a-Si)基盤工程から低温シリコン多結晶化(LTPS)・オキサイド工程に転換している。LTPSに転換すれば高解像度のLCDパネルやOLEDパネルを生産できる。しかし、稼働中断を避けるための苦肉の策といえる。
LCD生産ラインはL6(第5世代)とL7ライン(第7世代)、L8ライン(第8世代)の3本だけとなっている。
 
業界関係者は「ここ1・2年の間に中国企業が中小型LCDパネルを大量に市場に出し、価格が急落している」とし、「韓国内LCD生産ラインが老朽化したうえ、中国に押され、これ以上中小型LCDを生産する理由がなくなり、ラインを閉鎖している」と説明している。
 
<中国企業の価格攻勢強まる>
韓国国内のLCDラインが閉鎖しているのは中国企業の低価格攻勢のため。中国政府は2010年の第12次5ヶ年経済計画で4大輸入品に浮上したLCDパネルを国産化するという戦略を発表している。1%未満のディスプレイ自給率を2015年に80%に引き上げるために、企業のパネル工場建設に地方政府が資金を支援することにした。これに伴い、企業は工事資金の10%さえあれば工場の建設が可能になった。
 
<中国最強のBOE・政府主導の工場開発>
中国最大LCD生産企業のBOEは400億元を投資し、世界最大の第10.5世代工場を建設している。このうちBOEの資金は10%の40億元にすぎない。180億元は銀行から借りた。残りの180億元は工場ができる合肥市政府が出資する。
それだけではない。生産を始めれば中国政府は補助金を出す。BOEは2014年、売上高368億元、営業利益23億元だった。さらに8億3000万元の補助金を受け、27億元の当期純利益を出している。
こうした政府の支援を受け、2010年から昨年まで中国にはLCD生産ライン10本が建設された。このうち3本のラインは増設中であり、4本のラインは2016-2019年に追加で完工する。
  2018年にはBOEが市場首位に躍り出ると予想されている。
 
<大型LCDとOLEDも「脅威」・時間の問題>
BOEなど中国企業が建設したLCDラインはほとんどの第8.5世代。ガラス基板のサイズが2200×2500ミリで、55インチのテレビ用大型パネルの生産に最適化されている。しかし、中国企業はここで10-32インチの中小型パネルを生産している。技術が劣り、不良画素が多いため歩留まりが悪く、大型パネルを生産できない。このために中小型LCD価格は過去1年間に平均40%ほど落ちている。
 
<中国製品の内製化をはかる中国政府>
サムスンとLGは、まだ大型LCD・OLEDで中国企業に優位。しかし、こうした優位はいつひっくり返るか分からない。中国も最近、LTPSライン(低温シリコン多結晶化ライン)を建設している。関連投資計画は20件を超える。政府レベルでOLEDと大型LCDパネルに投資方向を変えている。
中国政府は昨年、「第13次5ヶ年計画」(2016-2020)でOLEDに投資方向を変更することにした。業界の関係者は「中国がLCD投資に対する審査を難しくし、その代わりにOLED投資を誘導している」と述べている。
またBOEの第10・5世代工場が稼働する2018年には、韓国内の大型LCDラインも危機に直面する。第10・5世代は65インチ、75インチパネルに最適化されたラインで、韓国企業が持つ第8世代に比べて価格競争力を持つ。サムスン電子はこれに備えて最近、シャープの第10世代ラインを引き受けしようとしたが実現しなかった。
以上、
市場調査機関により大きくそのシェアは異なる。

 

2014年のランキング
大型サイズのLCDランキング
市場規模8~10兆円
1
LGディスプレイ(韓国)
2
サムスンディスプレイ(韓国)
3
INNOLUX(台湾)
4
AUO(台湾)
5
BOE(中国)
 
 
中小LCD世界ランキング
市場規模4兆円
1
LGディプレイ(韓国)
2
ジャパンディスプレイ
3
シャープ
4
鴻海FOXCONN(台湾)
5
CPT(台湾)
注、リサーチ会社により大きく異なる。
OLED(有機ELディスプレイ)
市場規模1兆円
1
サムスンディスプレイ(シェア9割)
大型サイズは主にTV向け

 

2015年TV用パネル出荷量ランキング
/万枚
1
LGディスプレイ(韓国)
5,530
2
群創光電=INNOLUX(台湾)
5,173
3
サムスンディスプレイ(韓国)
5,090
4
京東方科技集団=BOE(中国)
3,566
5
友達光電=AUO(台湾)
2,718
ウィッツビュー調査による
 
<サムスン電子とLGディスプレイの決算>(簡易円換算:1ウォン/0.1円)
<サムスン電子>
サムスン電子2015年の連結決算によると、売上高は前年比▲3.0%減の200兆6,500億ウォン(約20兆円)、本業の儲けを示す営業利益は5.5%増の26兆4,100億ウォン(約2.6兆円)だった。
2015年10~12月期のディスプレイ部門は、売上高は6兆5,300億ウォン、営業利益は前期の9,300億ウォンに比べ急減し、3,000億ウォン(約300億円)にとどまり、急激に営業利益を損なってきている。
<LGディスプレイ>
LGディスプレイの2015年期の決算は、売上高は同7.3%増の28兆3,838億ウォン、営業利益は前年比19.8%増の1兆6,255億ウォンで、1兆7,360億ウォンを記録した2008年に次ぐ高水準となった。当期純利益は同11.6%増の1兆234億ウォンだった。
 
韓国も中国・台湾勢も欧米日の最新製造技術を導入している。

[ 2016年3月15日 ]
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