アイコン 危機に瀕する韓国の造船・海運業界

スポンサード リンク
 

韓国のGDPの半分は輸出、その輸出の大黒柱の造船・海運業界が怪しくなっている。
韓国の造船・海運業で経営難の造船会社は大手5社(大宇造船海洋、STX造船、城東造船、SPP造船、大鮮造船)と海運会社大手3社(韓進海運、現代商船、滄溟海運)。
すでにSTX造船(金融債務だけで5400億円)と滄溟海運は法定管理(会社更生法)に入っている。STX造船海洋は2015年3月、子会社の「STX大連」が破産させている。負債額は200億人民元(約3860億円/当時)。

こ れらの造船海運会社に対して、融資は、韓国政府系の産業銀行は11兆3500億ウォン(約1兆0,351億円/0.0912円)、同じく政府系の輸出入銀 行は18兆2300億ウォン(1兆6,625億円)。これに対して民間6大銀行(新韓・国民・KEBハナ、ウリィ、農協、企業)は、合計で約7兆ウォン (約6,384億円)を融資している。
政府系銀行の2行が圧倒的なメイン融資行となっている。この2行は政府・韓国銀行(中央銀行)などから大規模に資本拡充を受ける予定となっており、痛くも痒くもない存在。

<苦境の造船業界>
造船「ビッグ3」の大宇造船海洋は2015年期の営業損失は約5兆ウォン(約4950億円/当時)、現代重工業とサムスン重工業もそれぞれ1兆4000億~1兆5000億ウォン。合計で約8兆ウォンの営業損失を露呈していた。

韓国の造船会社が経営危機に陥っているのは、世界的な不況からタンカーやLNG船、鉄鉱石など資源運搬用のバラ積み船、物流の動き鈍化でコンテナ船などの新造船の発注が大幅に減少していることにある。当然、受注価格競争が激しくなっている。

それに加え、韓国の造船大手はリーマン・ショック後の落ち込み時、これまで製造したこともない海洋構造物のプラントを競って受注、韓国の造船会社同士で受注競争を繰り広げ、安値受注していた。結果、2014年期と15年期に大幅な赤字を露呈して、金融機関の支援を受けるに至っている。

また、船主が長期不況から建造船の引取りを拒否していることも資金繰りを悪化させている原因の一つになっている。クレームを付け引き取りを拒否したり、正規に違約金を支払って引き取りを拒否している。

まだ、政府は業界に直接介入していないが、間接的に政府系銀行が緊急融資、再建を主導している。造船会社も遊休資産や余剰生産施設を売却したりして、資金の捻出を図っているが、受注残の船舶もまだ多く、建造費用の資金も必要となっている。

これまで造船業界は、韓国の同業者間で、また、中国の造船業界と熾烈な受注競争を繰り広げ、安値受注していたことから、現在は金融機関の管理の下、利益重視の受注に徹しさせられ、世界の受注競争では後塵に甘んじている。

0604_01.jpg

伊・独・仏の受注は大型客船、中国は国内受注分が主。


 

2016年3月末の受注残
クラークソン
世界ランキング
万CGT
1
大宇造船海洋
782
118
2
現代重工業
450
95
3
サムスン重工業
439
81
4
現代三湖重工業
341
84
5
韓国外
 
 
6
現代尾浦造船所
237
108

<海運業界>
海運業界は、世界的な不況からに動きが停滞、運賃の低下から苦境に立たされている。特に韓国勢は、安値受注から、世界の海運業界から、目の敵にされている面もある。

海運業界はここ数年、不況を脱することができずにいる。韓国の最大手の韓進海運は、2015年9月末現在の負債額が連結ベースで7兆2000億ウォンに達している。
海運業界は、船舶購入費を負債として計上するため、ほかの業種よりも負債比率が高いとはいえ、多少の利益では利子の返済さえ難しい状況。

このため、同社は韓進グループ系列会社の株を全て売却したほか、グループ中核企業の大韓航空から緊急資金支援を受けた。(平昌冬季五輪の組織委員長を韓進グループの趙亮鎬会長が突如辞任したのもこうした背景があるのではと指摘されている)

<黄色信号の韓進海運>
韓進海運は、2013年末には連結ベースで1463%に達していた負債比率を、2015年9月末には687%まで引き下げ、2015年12月決算は、売上高7兆7355億ウォン(0.0912円)、営業黒字369億ウォンを計上し、ひとまず緊急事態を脱した。
ただ、所有船を売却し、傭船使用に切り替えた結果であるが、その傭船料の支払いを滞納していることが2016年5月発覚、一時、一部の船の運航を止められるなど緊急事態に至っている。傭船料の滞納は1000億ウォンに達しているという。同社は本社もすでに処分しており、し近年出力はほとんどなくなっており、債権団もしくは大株主の大韓航空およびグループの趙亮鎬会長が追加して緊急支援するしかなくなっている。
韓進海運は韓進グループの趙会長の一族が経営している。大株主は大韓航空となっているが、こうした事態に趙会長がどこまで支援するか、内容次第となっているようだ。当然、政府系の産業銀行などと協調して再建に当たる可能性はあるが、債権団が追加融資することなる。

<現代商船も黄色信号>
経営に赤信号がともっているのは現代商船。同社は7~9月期に680億ウォンの営業赤字を出した。負債額は連結ベースで6兆3000億ウォンに上る。11年以降、毎年2000億~5000億ウォン台の赤字を計上しており、現代グループは13年末にリストラや資産売却などの再建計画を発表して立て直しに全力を挙げてきた。
 だが、2015年10月、現代商船による現代証券の株式売却が不発に終わったことで韓進海運との合併説まで飛び出し、海洋水産部長官が「合併は考えたこともない」と火消しに乗り出す事態も起きた。
現代商船は「これまで耐えてきたので、今後も耐え抜くしかない」とし、永久債の発行などによる資金調達を模索している。

海運業界からは、企業の再建努力を後押しする政府の支援を求める声も出ている。
韓国政府も現代商船が加盟する(G6)海運グループのメンバーと話し合おうとコンタクトを取ったが、海運会社各社は、政府関係者と会うのは問題があるとして拒否したことが伝えられている。
欧米日の海運会社は、これまでの韓国勢の安値受注を、快く思っていないことも背景にある。
韓国政府が乗り出すなど、韓国の海運業界が韓国経済の屋台骨も一つであることを表している。
政府にしても、世界の景気が回復してきた場合、経営は急回復することから、統合・合併は考えられるものの、破綻させることはなさそうだ。

0604_02.jpg

[ 2016年6月 4日 ]
スポンサード リンク
 

 

コメントをどうぞ

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   
スポンサード リンク
 


PICK UP


PICK UP - 倒産

↑トップへ