アイコン 中国 ハードランディングの元凶となるかLGFV債

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中国におけるLGFV債(地方政府債、Local Government Financing Vehicle)は、経済成長を支える重要な役割を担ったが、同時に中国の債務負担を生み出す原因ともなっているようだ。

国際決済銀行(BIS)のデータによると、2015年末の残高は26兆5600億ドル(約2,682兆円/101円)にも上り、中国の対国内総生産(GDP)比255%に相当する。そのわずか2年前は同220%であったことから膨張が止まらない制御不能状態に陥っている。

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国 際決済銀行(BIS)の統計では、非金融セクターの債務残高は2015年9月末に165.7兆元(26.1兆ドル、2,526兆円)で、内訳は一般政府 45,589億ドル(17.5%)、家計40,735億ドル(15.6%)、非金融企業174,423億ドル(66.9%)となっている。リーマン ショック後に大きく増加しており、非金融セクターの2008年12月末との対比では、一般政府向けが1.4倍の対GDP比43.5%、家計向けが2.1倍 の同38.8%、非金融企業向けが1.7倍の同166.3%へ増加しており、非金融セクター合計では1.7倍の同248.6%に達している。
注意すべき点は、金融除く企業の上昇率と債務残高が突出していることにある。

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<地方負債は約244兆円>
企業債務の膨張に加え、地方政府の負債も問題となっている。政府が定める2015年の地方政府債務残高の上限額は16兆元(約244兆円)。その内、一般債務残高の上限額は9.6兆元、専項債務残高の上限額は6.4兆元となっている。省、市、県別では、省が2.1兆元(債務残高の14%)、市が6.6兆元(同42%)、県が6.7兆元(同44%)となっている。

中国は、計画経済国家であるが、財政は地方分権化が進んでおり、公的な財政支出の約85%を地方が占めている一方で、地方に割り当てられる税収は50%。このため、地方政府はこのギャップを埋めるために地方債を発行する宿命を帯びている。

<LGFV債とロボット産業団地>
中国の光大証券のデータによれば、中国全体でみると、2016年1~5月のLGFV債による資金調達額は、前年同期比で72%増の7400億元(約11兆/15.25円)に達しているという。
インフラに投資する企業の多くは、償還するためには資金調達の手段を選んでいられなくなっている状態だという。
LGFV債の利回りは、大部分の社債を上回っており、地方政府が破綻することはないとして購入者が後を絶たず、資金調達はスムーズに行われている。ロボット大国の産業団地建設に地方債ブームを生じさせ、過剰投資の懸念を再燃させている。

中国の中央政府は、ロボット大国を目指して昨年「メイド・イン・チャイナ2025(中国製造2025)」計画を発表。これを契機に、多くの地方都市が国内のロボット産業中心地となるべくプロジェクトをスタートさせた。
こうした投資ブームの一方で、自動車・エレクトロニクス産業でロボットへの需要が増大しているにもかかわらず、ロボット産業はすでに生産能力過剰の注意信号が出始めている。
中国では2015年、産業用ロボットの需要伸び率は17%となり、その伸び率は前年比で3分の2以上低下している。しかし業界のデータによると、過去2年で、40以上ものロボット工業団地が中国各地に建設されている。

中国の毎日経済新聞は6月、工業情報化省(MIIT)の辛国斌副部長は、中国のロボット産業には、過剰投資と「ハイエンド部門のローエンド化」の兆しが見えていると警告を発していると伝えている。
地方政府はLGFV債を発行し、こうした産業団地を開発する開発会社に資金の貸付を行う。開発会社へは中央政府の補助もあり、各地方政府が競って産業団地の開発に当たらせている。
ロボット産業団地の参入企業には、賃料補助、ローン補助、債務保証、優秀な人材を集めるための報奨金制度などの特典を受けることができる。
しかし、こうした支援策にもかかわらず、入居している大手企業は、自動車産業用ロボット製造の安徽埃夫特智能装備や軍用セグウェイなど製造している「ヒーロー」を含めて僅かだという。そのほとんどが新興ベンチャー企業だという。

中国の不動産バブルでは、見境もなく辺境の小都市さえ大マンション開発を行い、今でも幽霊団地となっている。
中央政府の掛け声もあり、国主導でLGFV債も発行しやすいロボット産業団地に地方政府が飛びつくというバブルを演じているようだ。

こうしたロボット団地の開発に乗じて各地方都市では、国家も推奨するインフラ投資と称して、次々に競ってさらに箱物を生み出しており、スタジアム、巨大遊園地、イノベーションセンターなど造り続け、負債の増加はさらに進んでいる。経済成長が低迷する中、負債はますます拡大させている。

中国で一番脅威なのは、一党独裁政権であり、すべての数値が信用ならないという点にもある。公式の国内経済指数のほとんどを発表する国家統計局でも、企業や団体との癒着により、企業や団体が有利に働くような数値を公表するなど不正が蔓延していることが発覚、局長が2月更迭され、今年5月までに313人もの職員が起訴されている。李克強首相がそれ以前に、「国家統計局の指数は信用ならない」として、独自に李克強指数を編み出していたことでも知られている。そうした不正数値は一部だろうが、国家が統制して数値を制御している可能性もある。

シャドーバンキング問題もまだ水面下で漂っている。(2016年)6月末3兆21百億ドルとされる外貨準備高も裏付けが公表されておらず 、信用数値となっている。
 以上、
参考資料、ロイター、ニッセイ基礎研究所など
 

[ 2016年8月12日 ]
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