黒田節 笛吹けど小売業踊らず、相次ぐ値下げ 新デフレの新枠組み
日本銀行の黒田東彦総裁が国民の間に染み付いたデフレマインド払しょくへより強い決意を示した金融政策の新たな枠組みを打ち出して2カ月がたった。しかし、日銀の努力とは裏腹に、その後、値下げを選択する企業が相次いでいる。
西友、無印良品、ミスタードーナツやイオンなど、消費者に身近な企業が相次いで商品の値下げを発表。日本の消費支出の弱さとデフレ脱却の難しさが鮮明となっている。25日発表の10月の消費者物価指数も8ヶ月連続で低下した。
日銀は9月21日の金融政策決定会合で、操作目標をマネーの量から金利に変える「長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入。同時に、生鮮食品を除くコア消費者物価指数(CPI)前年比の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を採用。デフレ脱却へ一段と強いメッセージを込めた。
日銀は11月公表の経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、「2017年度中」としていたコアCPI前年比の2%達成時期を「2018年度ころ」に先送りした。
値下げ競争
小売業の相次ぐ発表は値下げ競争の様相を呈している。具体例は以下の通り。
米ウォルマート傘下の西友は今月24日から食品・日用品556品目を最大34%引き下げると発表。
ミスタードーナツは今月8日からドーナツなど35種類を10ー30 円値下げすると発表。
イオンの広報によると、同社は今月からプライベートブランドの値下げを始めた。
無印良品を展開する良品計画の広報によると、同社も来年1月から一部商品の値下げを検討している。
低価格路線を追求してきた国内アパレル2位のしまむらの野中正人社長は今月、ブルームバーグのインタビューで「本当に笑いが止まらなくなるくらい売れている」と語った。一方で、衣料品市場をけん引してきたユニクロは昨年、価格を引き上げ、低価格を志向する消費者が離反。再び値下げにシフトしている。
来年の春闘も期待薄
値下げへの期待は間もなく始まる春闘の賃金交渉にも影響する。黒田総裁は14日、名古屋市内で行った講演で、労使の賃金交渉に触れ、「2%という物価全体の『ものさし』を前提とした賃金の決定などの人材投資に積極的に取り組むことは、日本経済全体にとって不可欠」と指摘。
その後の記者会見で、春闘の動向を「非常に注目している」と述べた上で、高水準の企業収益や労働市場のひっ迫した状況から見て、「正規職員の賃金も上昇していく十分合理的な理由がある」とクギを刺した。
BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは16日付のリポートで、9 月短観で16年度の全規模・全産業の経常利益が前年比マイナス8.1%の減益が見込まれていることから、来春闘では「ベア鈍化は避けられない」と指摘。今春の0.3%から0.1-0.2%にとどまると予想している。
以上、ブルームバーグ参照
ただ、眼下、急激な円安、資源価格の高騰、米国株・日本株・資源国株の急上昇、1月20日のトランプ大統領就任まで、まだ2ヶ月近く期間があり、どうなることやら。
中国で不動産バブルが再び生じており、鉄鉱石や石炭価格など資源価格が急上昇、海運価格も大幅上昇している。しかし、中国の金融事情は危なっかしい状態が続いている。構造調整もまったく進んでいないどころか生産拡大が続いている。その後、訪れる余剰生産物が世界をさらに覆うことになる。やはり、13億人のパワーは侮れない。それが世界覇権の影の国策なのかもしれない。中国政府の主張は、「欧米はじめ世界各国は安い価格で資材や消費財が中国から手に入る、何の不満があるのか」。
原油にしても、世界一のシェールガス・オイルの埋蔵量を誇る中国が本格生産拡大を発表している。すでに石油精製品が大量に、安価にアジア各国や中東・アフリカへ輸出されている。今後も増加するのみ・・・。
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