アイコン 日銀政策と大公共投資が首都圏分譲マンション高騰 販売低迷を招く

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マンション市場の陰りが鮮明。
不動産経済研究所が19日発表した2016年の首都圏の分譲マンション市場動向によると、年間契約率は68.8%と前年に比べて▲5.7ポイント低下した。好不況の目安とされる70%をリーマン・ショック後の2009年以来7年ぶりに下回った。

昨年は、日銀のマイナス金利政策で、住宅ローン金利が一段と低下する追い風が吹いたのに、どうしてだろうか。
1、リーマン後以来の「70%割れ」
 2016年の1戸あたりの平均販売価格は前年比▲0.5%下落の5490万円。24年ぶりの高さだった2015年の平均価格5,518万円から4年ぶりに値下がりした。
それでも東京都区部の平均では6,629万円、神奈川県でも5,039万円と5千万円の大台を上回っている。

首都圏の平均価格が、4,000万円台半ばにとどまっていた2012年後半までと比べれば、2割超高い水準。
 サラリーマンの所得が、それほど大きく増えない中、続いてきたマンション価格の高騰。リーマン・ショック後以来の「契約率70%割れ」は、分譲マンションが高根の花になりつつあることを示している。

なぜ、これほどマンションの販売価格が上がってしまったのか。
1、建設コスト増
資材価格や人件費など建設コストの上昇が販売価格に転嫁されたことが原因だが、それだけではない。
ここ数年、マンション市場の需要と供給とは違う力学が働き、不動産価格の上昇に影響を与えた可能性が高い。

2、「異次元マネー」が不動産へ
 きっかけは2013年4月。日銀の黒田丸がデフレ脱却を目指して打ち出した「異次元緩和」にある。
日銀は、この政策により、直前に134兆円だった市場資金供給量(マネタリーベース)を2016年末までに426兆円へと3倍超にまで膨らませた。
この異次元緩和によって世の中にあふれ出したお金が向かった先が不動産業だった。
 日銀が、四半期ごとに公表する「貸出先別貸出金」を見れば、それがよく分かる。
国内銀行の不動産業者向け融資残高は、2016年9月末時点で69兆6698億円と統計を遡れる1970年以降で最大となった。
 日銀が異次元緩和を始める直前の2013年3月末と比べて、不動産向けの融資残高は13.8%増えた。
同じ期間に製造業向け融資残高はわずか0.7%しか増えなかった。
異次元緩和の資金が不動産業により多く流入したのは明らか。

3、担保主義が拍車
 銀行側としても、製造業をあえて避けたわけではない。少子高齢化の中で需要が縮小する製造業の多くは、国内の設備投資に慎重。金融緩和で借り入れコストが下がっても資金需要は大きく伸びない。
 かといって、起業したばかりのスタートアップを含むベンチャー企業などへの融資は貸し倒れリスクもあり、多くの金融機関は及び腰。
こうした中、不動産を担保にとれる不動産業への融資は相対的に貸し出しがしやすい。金融機関の担保主義が不動産向けの融資を増やし、首都圏のマンション価格の上昇を後押しする一因になったともみられる。
 だが、分譲マンションの契約率の低下と平均価格の下落は、「日銀の金融緩和頼み」の市場活況に限界が訪れたことを示唆しているのではないのだろうか。

4、金融政策変更で住宅ローンに変調・イールドカープ・コントロール導入
 潮目の変化を決定づけたのが、昨年9月。日銀の金融政策の変更だったかもしれない。
日銀は、悲願の物価を2%上昇させるために、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」=イールドカーブ・コントロール=「長短金利操作」を決定させた。
この決定は、想定以上に下がり過ぎた10年超の長期金利の水準を是正したいという意向があったが、長期金利に連動する住宅ローンの利用者にとっては悩ましい話だった。
マイナス圏にあった長期金利がプラスの水準に戻り、住宅ローン金利は、昨年8月を底に下げ止まる。そして、足元では小幅ながらも上昇傾向にある。
この結果、主要行の住宅ローン申込件数も減少傾向に転じた。

 これまでのマンション市場の堅調さが実需に裏打ちされていれば、足元で見られる小幅な金利上昇が販売に大きく影響することはないだろう。だが、異次元マネーと低金利時代を当て込んでいたのなら、マンション市場の「需給調整」はやむを得ない。
以上、日経記事参考

日本は会社を潰さないように、長年、国策と国費により金融支援を行っている。
そのため、今後、大きな構造問題が発生しよう。日本の労働生産性の低さは旧態事業から抜け出さなくてもよい構造にしていることにある。当然、選挙の票に直結するからだろうが・・・。

米国に比して、全上場企業数に創業20年未満の上場数の占める割合が、米国7割、日本2割と大きな開きがあり、雇用数はさらに開きが出る。
国の過保護は、一時的に見た場合、国民の満足を得ようが、長期に見た場合、日本を没落させるおそれもある。
国自身が、構造的にベンチャー企業が育たないようにしてしまっている。

内需の景気回復=消費回復は、高給者の退職、少子化、非正規雇用拡大で望めようもなく、国は収入に比例して徴収する年金徴収額減少、健康保険料徴収額減少と社会保障費ですでに手足を縛られ、今後それも首さえ回らなくなる。
長期展望に立ち、国も大手企業もベンチャー企業を育成していく必要があろうが、現実は絶対数が少ないため、日本のIT産業はアメリカの3番煎じ企業ばかりで革新的なベンチャー企業など見当たらない。

現実の政治家は、旧来事業には金をふんだんに出しながら、増やすべき大学の研究費まで削るという没落思考しかもっていないようだ。
(日本のバブル時代は米国の景気は最悪期、しかし、そこからベンチャー企業がIT革命を生じさせてきた)
少子化の中、マンション購入層の拡大は、日本の産業構造の大変革が求められる。

 

首都圏分譲マンション 販売戸数・契約率推移
 
販売戸数
前年比
契約率
2015年4月
2,286
-7.6%
75.5%
5
3,495
-18.7%
71.1%
6
3,503
0.0%
78.7%
7
4,785
13.3%
83.7%
8
2,610
23.7%
74.3%
9
2,430
-27.2%
66.0%
10
2,921
-6.5%
68.8%
11
3,496
4.8%
82.1%
12
6,189
-34.1%
64.8%
2016年1月
1,494
-11.0%
58.6%
2
2,237
-13.9%
72.9%
3
2,693
-39.6%
67.6%
4
1,978
-13.5%
66.4%
5
3,002
-14.1%
70.9%
6
3,050
-12.9%
69.6%
7
3,317
-30.7%
63.3%
8
1,966
-24.7%
66.6%
9月
3,424
40.9%
72.0%
10
2,903
-0.6%
61.6%
11
2,701
-22.7%
62.5%
12
7,007
13.2%
76.6%
2016年計
35,772
-11.6%
68.8%
2015年計
40,449
-8.1%
 
 

[ 2017年1月20日 ]
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