江志成氏は２０１０年にハーバード大卒後、米大手投資銀行ゴールドマン・サックスの香港現地法人勤務を経て、９ヶ月後に香港で「博裕投資顧問会社」を設立。中国電子商取引最大手のアリババの大株主になるなど数々の大型投資を実現してきた。

一方の劉楽飛氏は、中国最大手証券会社・中信証券の副会長などを経て、今はグループの中信産業投資基金管理公司（運用資産９０億元、約１４４０億円相当）の会長を務めている。

両氏が不利な状況に陥る背景には、中国金融業界の風雲児、「金融大鰐（金融界の巨大ワニ）」とよばれる肖建華容疑者（４４）が、今年１月潜伏先の香港で逮捕されたことにある。
巨大投資会社「明天控股」の実質経営者である肖容疑者は、陰の江派高官ら一族にかわって多くの国有企業を破格の安値で買収するなど精力的に動き、大規模横領の代行人（白手袋、汚職の黒い手を隠す白い手袋のこと）といわれている。

肖容疑者は、江派の金融政変に関与したともみられるという。政権に近い消息筋によると、２０１５年６月に上海証券取引所で起きた株価大暴落、時価総額の３分の１を失った中国株大暴落は、江沢民派の金融筋グループが情報操作やインサイダー取引、空売りなどを駆使して誘発したものと見ており、習近平指導部を仕留めるための「金融政変」だったとされる。

「１兆元（約１６兆円）以上の保有資金を駆使すれば株価を操ることができる」と言われている。肖容疑者は主犯格の１人で、当時最大手証券会社・中信証券の副会長だった劉楽飛氏が主導したとみられるという。
　この一件で、中信証券の複数の重役が取り調べを受けて更迭されたり、当時の社長が逮捕された。劉氏自身は同年末に副会長職の辞任に追い込まれている。

消息筋の話では、肖容疑者が同一派の汚職事実を全面的に自供したため、江派の金融組は絶体絶命だという。
次期最高指導部の人事を決める今年末の党最重要会議・第１９回党大会で習近平陣営が権力基盤を強化するには、金融の安定を確保するのが一大事。
一方、対立する完全劣勢の江沢民派は、先の金融政変と同様、金融システムを狙った反撃策を打つとも予想されている。

そのため、習近平サイドは逮捕された江派の「白手袋」の肖容疑者を突破口に、秋の党大会までに江派の金融組に止(トド)めを刺すものと予想されている。

習陣営は、腐敗撲滅運動のもとで、すでに公安・司法・検察を束ねる政法委系統（政権の刀）、軍部（政権の銃）における江派の勢力ネットワークを切り崩しに成功している。これからは金融業界（政権の金庫）の粛清に本腰を入れるようだ。
以上、中国関係紙参照