減らないペットの殺処分 猫ブームの光と影
あちこちに猫喫茶ができるほど、いまは猫ブームだ。
犬と違うのはこちらから何をするでもなく、散歩もいらずただじっと見ているだけで癒されるという気楽さだ。
それでも毎年増え続ける猫の殺処分。
京都府内では昨年度に908匹が殺処分され、犬の20倍に上るという。
人間の身勝手な癒しに付き合わされる猫もたまらなニャイ。
世は空前の猫ブームだ。
アベノミクスならぬ「ネコノミクス」という造語が生まれ、関連グッズや写真集が売れる。だが、京都府内では昨年度に908匹が殺処分されるなど、流行の背後には飼い主のモラルを巡る根深い問題がある。今年5月に開設2年を迎えた府と京都市が共同運営する「京都動物愛護センター」(南区)を訪ね、殺処分はどうすればなくせるのか、考えてみた。
同センターでは、職員の獣医師が1匹ずつ薬を注射して安楽死させる。手のひらに載る子猫は、注射後、あっという間に動かなくなる。機械での処分より猫の苦痛は少ないが、獣医師の精神的負担は大きい。
「1日20~30匹を処分することも。動物を助けるために獣医師になったのに、なぜこんなことを、と思うこともある」。同センターのある獣医師は、苦しい胸の内を打ち明ける。
2013年、動物愛護管理法が改正され、自治体が安易な理由による引き取りを拒否できるように。同センターによると、それ以降は行政が収容・処分する猫の数は減少した。だが、府内では昨年度、犬(41匹)の20倍以上が人間の手で命を絶たれている。
特に猫が多いのは多産の上、犬と違って自治体への飼育の届け出が義務付けられておらず、放し飼いも禁止されていないためという。殺処分となるのは、ほとんどが捨て猫や放し飼いの親が産んだ子猫。生まれたばかりの子猫は数時間おきにミルクが必要で、人手に限りのある行政機関では殺処分せざるを得ない。
猫たちを救う鍵は、官民の連携だ。殺処分を減らそうと府北部で活動する市民グループ「キャッツ☆ワン」は、「ミルクボランティア」と呼ばれる飼育経験が豊富なメンバーが子猫を育て、譲渡先を探している。同グループ代表の木村悦子さん(43)は「センターが殺処分する前に、私たちに声をかけてくれれば助けられる」と訴える。
同センターも、生後1か月程度の子猫を一般家庭で飼育してもらう「預かりボランティア」を導入。野良猫が懐きやすくなり、新たな飼い主への譲渡につながるなど成果を上げている。同センターの獣医師、池隆雄係長(48)は「家庭に預ける子猫の月齢を下げることは検討したい」と、民間との協力体制の拡大に前向きだ。
(木村ひとみ)
2017年06月11日 20時34分読売新聞
http://sp.yomiuri.co.jp/national/20170611-OYT1T50070.html?from=ytop_ylist
コメントをどうぞ