アイコン 日本の欧州EPA締結と韓国の自動車業界 韓国勢のリスク

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韓国は、日本が欧州連合(EU)と自由貿易協定の経済連携協定(EPA)に合意したことから戦々恐々となっている。
特に、韓国の自動車業界が少なからず打撃を受けるという見方が出ている。
グローバル市場で競争関係にある日本自動車企業が、EU市場で関税引き下げ分を値下げ、マーケティング拡大、ディーラー網管理などのさまざまな戦略を通じて韓国車のシェアを蚕食する可能性があると報じている。
(自動車輸入関税は10%がEPA発効7年後までに撤廃、自動車部品の関税4%は、その9割が発効により撤廃される)

日本勢は、欧州において、安倍政権以前の円高により、韓国勢に市場占有率を落としていたが、アベノミクスによる円安により、米国に次ぐ2位に回復。それも2017年の上半期では首位になっている(日本勢のシェア14.8%)。

韓国勢は、現代(チェコ+トルコ工場)・起亜(スロバキア)グループと双龍が欧州販売しているが、現代は輸出比率が小さく、起亜は輸出比率が高い、また双龍は輸出に依存している。
自動車部品への関税(最大4%)も全体の90%の品目で発効直後に撤廃される。

<欧州市場での韓国勢>
2016年の韓国勢の販売台数は約107万台、うち輸出は約40万台(輸出比率37.3%)。日本勢は約183万台販売し、輸出は約57万台(輸出比率31.1%)

<米欧中の3大市場では・・・>
韓国勢のシェアが米国・中国・西欧の世界3大自動車市場で4年連続下落している。
韓国放送公社=KBSは、今年に入り5月までの米国・中国・西欧など3大自動車市場における韓国車のシェアは5.8%と報じた。
報道によると、3大市場で韓国車が占める比率は、
2010年6.3%、
2011年7.0%、
2012年7.7%と順調に伸びた後、
2013年7.5%
2014年7.5%
2015年7.2%、
2016年7.1%
今年上半期は5.8%まで下落している。

<中国では>
なかでも中国市場での韓国車の中国シェアは
2009年7.9%~2014年9.0%まで上昇
2015年7.9%
2016年7.3%
今年は5月までの累計値で4.0%まで落ち込んでいる。
今年3月からTHAAD韓国配備における不買運動の影響を受けている。

<米国では>
米国市場での韓国勢のシェアは
2011年8.9%まで上昇
2012年8.7%と下落しだし
2013年8.1%
2014年7.9%
2016年は8.1%まで反騰
今年は上半期で7.6%と伸び悩んでいる。

<日本勢は>トヨタパッシングと円高その後の円安回復
米国市場において、2009年~2010年にかけてのプリウスたたきで、トヨタは大きく販売台数・シェアを落とした。しかし、米当局の検査機関の検査でプリウスに何も問題はない結果だったが、イメージダウンを恐れ、トヨタは約1000億円で司法取引により和解した。大問題にデッチ上げたのは米国における反日自動車団体と在米・・人が主導して大問題にしたとされる。その間、韓国勢は急激にシェアを高めた。
また、日本勢が苦戦したのは円高、昨今では2007年の123円をピークに円高進行、東日本大震災で自動車業界や電子産業が大打撃を受けた2011年には77円まで円高に、2012年に安倍政権誕生によりその後は円安に振れ、2015年6月には125円の安値をつけた。

<日本勢の中国市場では>
2012年9月の日本政府による尖閣諸島の国有化問題で、中国進出企業は暴動で打ち壊され、その後の不買運動で大打撃を受けた。自動車の販売台数・シェアを大きく落としたが、その間、漁夫の利を得たものは独VWと米GM、それに韓国勢であった。しかし、その後徐々に回復させている。
その回復の煽りと、中国勢の品質向上にコストパフォーマンスがなくしてしまった韓国勢が大きな影響を受けている。

<韓国勢の問題点と市場>
シータ2エンジン問題が挙げられる。韓国自動車輸出市場でそのほとんどを占める現代と起亜グループ、1998年起亜は現代傘下に入り、これまでに融合も進み、部品・部材の共用も進んでいる。
そうした中、シータ2エンジンのリコール問題が浮上、2015年、米国では119万台をリコールし、和解し、総費用は中古下落補填額も合わせて約900億円かかるとされている。しかし、韓国では同様な問題が発生していたにもかかわらず、製造所が異なり問題ないとして同エンジンについて頑なにリコールを拒絶していた。
しかし、昨年9月、現代の品質管理の部長が32項目のリコール隠しを韓国当局と米国道路交通安全局に通報し、内部通報者を無断で内部資料を持ち出したとして首にし(その後社会批判を受け復職)、大問題となった。
韓国でもやっと今年4月になり、シータ2エンジン搭載車17万1千台をリコールした。
ただ、32項目のリコール隠しの内部通報の中身を審査していた韓国当局は、うち4項目約24万台についてリコールを検討するように現代に働きかけた。しかし、ここでも現代は問題ないとして拒絶、当局はその後、現代に強制リコールを命じるとともに、リコール隠しとして検察に通報され捜査のメスが入っている。
当32項目については、米国当局も受け取っているが、リコール等の話は聞かず、審査に入っているものと見られる。
こうしたリコール隠しは、米国の消費者の信用をさらに損なうものでしかない。

<現代・起亜グループのリスク>
1、世界的な販売不振。中国の不買運動による激減は別にしても、米国や欧州でも苦戦している。昨年よかったインドでも伸び率を鈍化させている。

2、ソウル中心街に本社ビル等複合ビルを5千億円の投資額で開発中、別途の開発地の土地取得は、元所有者の電力公社が最低4兆4千億ウォン、上限5兆1千億ウォンのところ破格値の10兆5500億ウォン(約1兆550億円)で落札している。

3、中国投資とTHAAD問題
中国で2ヶ所の大工場を建設している。中国第4工場となる河北省滄州の工場は昨年10月完成し、操業を開始している。第5工場となる重慶工場は今年完成し、来年から創業開始する。共に生産キャパは30万台。
昨年の現代・起亜合計の販売実績は179万台、重慶工場完成後の総生産キャパは280万台に達する。当2工場については、現代は習朴蜜月時代に進出を発表していた。

韓国におけるTHAAD配備問題による中国の不買運動では、今年5月までの販売台数が前年同期間比▲43.4%減と大きな打撃を受けている。さらに昨年7月からは小型車減税の廃止(結果今年から減税半分)に伴う駆け込み需要が発生していたため、打撃がさらに大きくなる可能性もある。

G20における初の両国首脳会談(7月7日)でも、習主席は文大統領に対し原則論(THAAD撤廃)に終始し会談を終えている。早期に貿易制裁もしくは、中国当局により不買運動を中止させることが求められる。

4、トランプから、圧力をかけられる可能性。
現代と起亜は、米国で30万台生産キャパのそれぞれ1ヶ所の工場しか所有していない。韓国やメキシコ工場などからの輸出している。昨年の販売台数は両社合計で142万台。9割の稼働率としても90万台あまりを輸出していることになる。
その結果、トランプから米国に工場建設を求められ、ストが大好きな現代労組が仕切る工場の生産が減少することになる。

5、世界最強の労働組合問題
現代自動車労組、トヨタより平均給与がよく、子供の学業費まで会社負担。1台当たりの生産時間はトヨタを大きく超える。
現代労組は、今度、EVが主流になれば、リストラ必至として、就業全員確保を目標においている。その前に、米国工場を造れば、本拠地の蔚山工場で生産する車が大幅に減少するのであるが・・・。

6、リコール隠しの影響
前述の安全にこだわる欧米で特に影響するものと見られる。

7、市場縮小(自動車業界共通)
中国や米国での市場拡大が、昨年でピークアウトした可能性が指摘されている。今後、販売台数を増加させるには、シェアを拡大するしかない。

8、モータリゼーションの大革命(自動車業界共通)
ガソリン車、ガソリン併用車・EVへの過渡期間、完全自動運転車への過渡期間である。

 
米中乗用車市場の日本勢と韓国勢
 
2015年
2016年
2017年
アメリカ
市場全体
 前年比
5.7%
0.4%
-2.1%
日本勢
 前年比
5.9%
1.4%
0.1%
シェア
37.5%
37.9%
38.7%
韓国勢
 前年比
5.9%
2.5%
-8.6%
シェア
7.9%
8.1%
7.6%
中国
市場全体
 前年比
7.3%
14.9%
1.4%
日本勢
 前年比
8.7%
12.7%
17.5%
シェア
15.9%
15.5%
17.2%
韓国勢
 前年比
-4.9%
6.7%
-43.4%
シェア
7.9%
7.3%
4.0%
・2017年は、中国は5月まで、欧州と米国は6月までの今年累計値
・前年比は販売台数
 
中国市場における韓国系車の販売台数推移 /単位:万台
 
2014
2015
2016
2017
 
台数
台数
台数
前年比
台数
前年比
1月
17.52
15.94
12.39
-22.3%
11.01
-11.1%
2月
11.74
11.95
9.28
-21.7%
9.12
-1.7%
3月
14.75
16.25
15.21
-6.4%
7.20
-52.6%
4月
14.27
14.62
14.22
0.5%
5.10
-65.2%
5月
14.31
12.90
15.05
16.7%
5.25
-65.1%
6月
13.77
9.77
14.69
45.5%
 
 
7月
12.52
8.42
11.10
31.8%
 
 
8月
13.10
9.62
12.41
29.0%
 
 
9月
15.23
13.23
15.92
20.3%
 
 
10月
14.95
15.79
16.00
1.3%
 
 
11月
16.16
18.02
20.65
14.5%
 
 
12月
18.28
21.47
22.28
3.7%
1~5月累計
年計
176.61
167.88
179.20
6.7%
37.68
-43.4%

 

[ 2017年7月10日 ]
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