韓国 ザル法の最低賃金制度 罰則規定はあるものの機能せず
韓国の失業率は3.8%と表面的には低いが、失業率に仕事が見つからず、諦めた人は含まず、仕事を探しながらの短期アルバイトも就労者に含まれる。者も若年層の失業率は10%を超えている。若年失業者が多いのは、年金制度の制度不良で高齢者の就労が多いことにある。高齢者は、生きるための就労であり、賃金が安かろうとしがみ付いている。こうしたことから、65歳以上の高齢者の就労はすこぶる高い。
韓国では、政府が来年の最低賃金を今年よりも1,060ウォン(率16.3%、約106円)引き上げ、7,530ウォン(約751円)とすることを決定した。
しかし、現実的には業種や地域によって大きな最低賃金格差がある。
朝鮮日報が7月16、17の両日、全国のコンビニエンスストア、インターネットカフェ、コーヒーショップなどの零細業者100ヶ所を直接訪問または電話取材で調べた結果、
実際の時給は、政府の「法定最低賃金」ではなく、人材需給や周辺環境によって決まっている実態が明らかになっている。
首都ソウル市の蘆原区のコンビニでアルバイトしているKさん(24)は、先月から時給5,800ウォンで働いている。
今年の最低賃金(6,470ウォン)に届かない水準。
店主は「3ヶ月の試用期間が過ぎれば、最低賃金に近い給料を支払う」と話した。雇用契約には明記されていない。
最低賃金法は、1年未満の期間制労働者の場合、試用期間にも最低賃金を支払わなければならないと規定している。
1年以上の長期契約の場合にのみ、試用期間(3ヶ月以内)には最低賃金を下回っても構わないと規定している。
コンビニや食堂などのアルバイトは、大半が1年未満の短期契約。
しかし、Kさんに特に不満はなく、「この町内のコンビニのバイトでは自分の時給が最も高い。5,800ウォンもらっていると言えば、皆が驚く」と話している。
地方ほど時給は低かった。
光州市北区のコンビニで働くPさん(25)の時給は4500ウォン。今月初めに店頭に張られていた「時給応談」という条件を見て、面接を受けた。店主は「厳しい事情なので4,500ウォンしか払えない。この町内のコンビニでは大半が5,000ウォン台後半だが、うちは客が来ないので暇だ」と話した。
Pさんは「平日の正午から午後6時まで働き、合間に勉強しながら、月に100万ウォン余り稼げるので、大学生にしては悪くない」と語った。
ソウル市の中心街である江南区のコンビニの時給は6,700~7,000ウォン。
同じような仕事でも光州市北区とは1,300ウォンの格差があった。
江原道の19ヶ所では時給が6,100ウォン台前半、
慶尚南道統営市では5,530~6,000ウォン台前半だった。
地域別の平均を見ると、ソウル市江南区を除けば、いずれも最低賃金を下回っている。
統計庁の調べによると、2015年時点で最低賃金を受け取れずにいる勤労者は223万人に達しているという。
本紙が取材したコンビニなど100ヶ所のうち、最低賃金を支払えずにいる店舗は32ヶ所だった。
最低賃金法に違反していることになる。
最低賃金が上昇すれば、その割合はさらに増えかねない。
光州市の全南大周辺のコンビニ店主は、「商売がうまくいかず、時給を上げられない。やむを得ず法律を犯していることになる」と話した。
以上、
コンビニだけの問題ではない。業種別では農林漁業で最低賃金未達労働者の割合が最も高く、飲食宿泊業、芸術レジャー業、販売等事業支援業、不動産賃貸業などが続き、こうした法違反が横行している。事業者としては従業員4人以下の小規模事業者がほとんどだが、こうした法令違反の賃金制度が、賃金上昇を抑制している。
特に、非正規雇用者が日本並みに多い韓国では、財閥系大企業への就職を求め、小さいときから多くの教育投資を受け、高学歴者が多いが、足下では就職難となっている。
韓国でも法違反の摘発制度、罰則規定が設けられているが、最低賃金未支給業者に対する取り締まりが緩慢、それに処罰の強度の低さからか社会的な制裁などもない。
最低賃金未満の賃金を支給して摘発されると3年以下の懲役刑か2000万ウォン(200万円)以下の罰金刑に処される可能性がある。
だが、該当法規違反の摘発件数は、不況が深刻化するほど減少しており、2013年の6,081件から2014年は1,645件に急減し、2015年には1,502件とさらに減っている。
文政権は、来年からの最低賃金を、票や支持率稼ぎから思い切りキックアップさせたが、こうした最低賃金が守られない社会こそ問題化し、法による罰則規定に基づき、事業者に対して、最低賃金の遵守を厳格に履行させることが先決ではないのだろうか。
・・・ただ、ほとんど、支持率アップや票稼ぎにはならない。
こうしたことの積み上げが、法より、その時々に変遷する世論が強く、世論支配により、法支配が行われない国家に、世論に迎合する司法機関も含め成り下がらせている。
条約さえ、遵守されない韓国の法制度は、文民政治に移行したのが1993年であり、法支配という国家制度そのものが、まだ未熟なのかもしれない。
韓国では1993年に、それまでの軍人政権から初めて文民の金泳三政権が誕生し、金大中、盧武鉉と進歩・革新勢力の政権が15年間続いた。しかし、最低賃金法を事業者に遵守させるなどの社会整備を行わなかったことから、好景気時代を経過してきたものの、今でも取り締まり強化や社会的な制裁制度は確立していない。
韓国では、企業の労働組合が、過去の就職難時代もあり、組合活動の成果として、自らの子供を強制的にその企業に就職できる権利を保有するなど(法で禁止されたが、実態はまだ多くの企業で生きている)、歪んだ労働組合事情もある。
現代自動車労組は、毎年ストばかりしているが、トヨタより高給取りで、組合員の子供の学資も会社が負担させられている。
そうした歪な労働組合から積極支援を受けているのが、文在寅政権でもある。
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