アイコン 韓国に蔓延する不正ウイルスによりKAI窮地に 社長不在1ヶ月

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韓国唯一の航空宇宙関連企業兼軍需産業の韓国航空宇宙産業(KAI、戦闘機や武装転用可のプロペラ練習機、ヘリコプターなどを自社開発・技術供与開発、ライセンス生産のほか、人工衛星を開発している)に、暗雲が立ち込めていると中央日報が報じている。

問題は、防衛事業庁とKAIが結託した機動武装ヘリ「スリオン」の安全性無視の強行導入にとどまらず、KAIの水増し請求や粉飾決算疑惑にまで発展している。

上場企業であるKAIは、防衛産業不正関連の検察捜査が長期化し、海外受注が中断、資金繰りにも困難を表面化させている。その上、こうした経営難を収拾すべき指令塔の社長は1ヶ月以上にわたり空席となったままになっている。

KAIは、これまで、政府の積極的な武器投資と国防科学研究所(ADD)の開発支援により、基本訓練機のKT-1、超音速高等訓練機のT-50(ロッキードマーチンの有償技術支援機)、韓国型機動ヘリのスリオン(ユーロコプター=現エアバスの有償技術支援機・共同開発機、韓国製品率60%、ユーロコプター49%出資の合弁事業)などを開発し、輸出も積極的に行う韓国最大の防衛産業関連企業としての位置付けを固めている。韓国念願の宇宙ロケット開発も担っている。

7月16日監査院が、初の韓国産機動武装ヘリコプター「スリオン」が飛行安全性を備えていないとする監査結果を発表した。
防衛事業庁長官は、欠陥があったことを知りながら戦力化を進めた疑い(業務上背任)があるとして更迭された。

昨年12月にはスリオンは、インドネシア、タイ、イラクと約30機の輸出をめぐり協議していると報じられていた。

KAI高位関係者は8月23日、「結論なく疑惑だけが提起され続け、金融機関からの貸し剥がしや貸し渋りの動きが出始めた。社内では、こうしたことでは黒字倒産(一時的資金事情悪化による不渡り)する恐れもあるとの話が出ている」と話した。

また、「われわれは、グループ体制ではなく、資金調達に限界がある。こうした状況が9月まで続くなら黒字倒産も排除しにくい状況だ」と話している。

検察は、7月14日、「スリオン」の原価水増しなどの疑惑からKAI本社とソウル事務所を家宅捜索している。
社長のポストは、7月20日にハ・ソンヨン社長が辞任してから1ヶ月以上空席。今月に入ってから金融監督院のKAI精密監理で「粉飾決算疑惑問題」が膨らみ、「信用リスク」まで頭をもたげている。
最近、ナイス信用評価や韓国信用評価などの格付会社は、KAIを「引き下げ検討等級監視対象」のリストに上げた。

8月21日基準でKAIの社債発行残高は6000億ウォン(約578億円)、コマーシャルペーパー(CP)は3500億ウォン。8月満期到来分を除いた社債とCP残高は6900億ウォンに達する。

新韓金融投資のキム・サンフン研究員は、「残った発行残高を安定的に償還するためには、何より検察捜査と金融監督院の監理と関連した不確実性が解消されなければならない」と指摘している。

<KAIの資金繰りに変調>
実際に検察捜査以降下半期に予定された「スリオン」の納品と輸出が、全面中断するなど事業も影響を受け始めている。
今年初めに7万ウォンを超えていたKAIの株価は、8月22日現在4万750ウォンと▲40%以上下落している。
「不正疑惑」が続く場合、今年末に決定される最大38兆ウォン規模の米空軍高等訓練機交替事業入札戦(T-50軽戦闘機)にも不利に作用するものとみられる。

危機感が大きくなり、これまで息をひそめてきたKAIは自助策に出ている。
KAI労組は、8月23日に青瓦台(大統領府)を訪問し、「処罰する人は、早く処罰した上で、事態が長期化し、会社自体が厳しくなる状況は防いでほしい」という内容の声明書を伝達した。また、チャン・ソンソプ社長代行と役員は株価防御のため自社株買い入れに出た。

学界と国防界も声を出し始めた。
韓国航空宇宙学会は8月24日に、韓国科学技術院(KAIST)で「スリオン事業の成果と課題」を主題にワークショップを開催し、監査院の「スリオン」結果と関連してパネル討論を行う。
国防部も、やはり今月末に専門家らを招いて、「スリオン」の欠陥の有無と韓国の防衛産業研究開発問題などについて討論し、結果を関係機関と共有する方針。

<社長不在続く見込み>
KAI経営正常化のために社長選任から急がなければならないという指摘も出ている。しかし、KAIの筆頭株主(26.4%)の輸出入銀行が、金融監督院から「リスク評価」を受けているうえに、中小ベンチャー企業部長官など新政権の主要人選もまだ終わっていない状況でKAI社長の選任はずれ込む恐れがある。

 KAIは、1999年に当時の大宇重工業、サムスン航空、現代宇宙航空の航空3社の航空機部門が統合して設立された準公営企業。
当時、大企業は、初期投資費用が多くかかり投資回収期間も長い航空産業を避けていたが通貨危機後に韓国政府がビッグディールと呼ばれる大規模事業交換を推進して設立された。
株式を上場させ、飛行機類の開発から輸出までも手がけている。

戦闘練習機T-50の場合、戦闘機仕様でインドネシアに16機、イラクに24機、フィリピンに12機、タイに12機の合計64台、29億3000万ドル規模(1機当たり約50億円)の輸出実績を有している。F-16戦闘機とシステムの互換性があり、KAIでは潜在需要を3300機と見込んでいる。

<機動武装ヘリ「スリオン」>
2012年に数多くの韓国メディアが極端な寒冷気象条件での作戦行動能力について、疑問を呈したことから、氷点下32℃未満の周囲温度環境におけるKUH(=スリオン)の行動能力を検証するために、2012年12月から2013年2月にかけてアラスカで約50回の飛行テストを実施し、低温テストをクリアしたと報告していた。
しかし、下記のとおり、監査院が指摘のとおり虚偽報告だったことが判明している。

<問題だらけ>
2016年6月8日、韓国・イーデイリーによると、韓国型機動ヘリ「スリオン」の機体の骨格に亀裂が見つかったことに続き、機長のヘルメットに装着するディスプレイ機器にも問題が発生したことが確認されたと報じた。

<スリオンについての監査院報告>
機動武装ヘリ「スリオン」は、
1、2015年1月と2月、陸軍航空学校で飛行中2台が次々とエンジン過速後、停止する現象で非常着陸しており、12月にも同じ欠陥で、1機が墜落する事故を起こした。

2、また、2014年8月には、メインローター・ブレード(プロペラ)と胴体上部の電線切断機が衝突し、エンジンが停止した。

3、2013年2月から2016年1月までに、ウインドシールド(前方ガラス)が5回破損した。

4、このほかにも、中央胴体フレームに亀裂、機体内部への雨水の流入など、大小の事故が後を絶たなかった。

<結氷問題と3回の墜落>
これに対し、監査院は今回の監査で、スリオンヘリのエンジン欠陥が、ヘリの結氷性能試験の評価がまともに行われなかったため起きたと分析した。
ヘリコプターは、飛行中の表面に雲粒子などが衝突して氷膜が形成される場合がある。このような結氷現象は、ヘリコプターの性能を低下させ、エンジンの損傷にもつながる。
にもかかわらず、防衛事業庁は2009年1月、「事業の日程が迫っているなど」という漠然とした理由で、体系結氷の性能試験の延期を決定し、試験評価を省略したまま、同年12月、KAIからスリオンの納入を受けた。
その結果、結氷を防ぐ装置の欠陥を予め確認できず、2015年の3回のヘリコプター墜落事故につながったと断定した。
遅れて2015年10月~2016年3月、米国ミシガン州で行われた101項目におよぶ機体凍結試験において29項目が不合格であったにもかかわらず防衛事業庁はこの事を国防部に報告していなかった。

それでも防衛事業庁は、韓国航空宇宙産業(KAI)が、「2018年6月まで補完する」という計画書を提出したことを受け、何の根拠もなく「スリオン」の納入を認めており、規定を違反してまでKAIが提案した体系結氷性能に関する国防規格の変更を承認していた。

国防科学研究所は、KAIがメインローター・ブレードと機体の衝突の可能性について、厳格に検証しなかったにもかかわらず、規格書及び堪航(能力)基準を満たすものとして処理した。

<ブレード機体衝突>
陸軍は、2014年8月にブレードと機体が衝突する事故が起きた際も、設計変更などの根本的な対策を講じる代わりに、ヘリが離陸する際は出力を60%に制限するように「使用者教範」を修正した(国防科学研究所とKAIが要請したものと見られる。緊急時、問題が発生する危険性がある)。

<前方ガラスに衝撃に弱い素材ソリディオン使用>
国防科学研究所とKAIは、前方ガラスにヘリコプターに適用された事例のないソリディオンというアクリル樹脂素材を採択した。
監査院は「ソリディオンは、外部からの衝撃に弱く、破損された場合、細かい亀裂が発生して前方の視野の確保が難しい。ウインドシールドが5回も破損する原因になった」と明らかにした。KAIは亀裂発生の対処に強化シートを貼ったが、その後も亀裂は生じた。

監査院は、防衛事業庁のチャン庁長ら関係者3人を業務上背任の疑いで検察に捜査依頼し、韓国型ヘリ事業団のL団長とMチーム長の格下げを要求した。
また、陸軍参謀総長にKAIと韓火テクウィンが、エンジンの欠陥で墜落したヘリコプターの賠償とエンジン交換費用の回収措置を取るよう要求すると共に、スリオンのエンジン欠陥の後続措置及び安全措置を怠った陸軍航空学校の校長など関連者の懲戒を求めた。

<KAIではない問題事件>
2017年8月18日には、韓国では鳴り物入りのK-9時自走砲(155ミリ砲:射程40キロ)が、3発目を装填時、自走砲内部の閉鎖機が機能せず、火災が発生し、車両内の7人のうち2人が死亡し、5人が負傷した。2発目を発射した装薬のカスに火が付いた状態で残り、新たな弾の装填により新弾の装薬に引火、閉鎖機が機能しないまま自然に弾が発射され(=暴発)、その反動で車両内に爆風と火炎が入り死傷者を出したと見られている。なぜ、前回の装薬のカスが残っていたのか、なぜ、閉鎖機が機能しなかったのか、弾薬メーカー、閉鎖機メーカーとも品質・性能面から調査が行われるという。大量に輸出されている韓国自慢の名器でもある。

2016年9月の報道
韓国・防衛事業庁の内部監査資料によると、過去4年間に軍需産業業者がリンクスヘリコプターをはじめとする海軍の各種武器部品を供給しながら、約600件の品質保証書を偽造したことが確認された。また防衛事業庁は約400件の契約を締結し、71の部品で実際に欠陥が見つかった。
海軍の核心戦力の韓国型駆逐艦「広開土大王(満載:3990トン)」は推進プロペラの速度を調節する部品が性能基準値を満たさず、大型揚陸艦=ヘリ空母「独島(満載:18800トン)」は発電機フィルターに問題が見つかった。しかし防衛事業庁は書類偽造業者に対して入札参加制限などの制裁を加えていなかった。

2012年9月進水した防衛事業庁発注の救難艇「統営」(満載:4700トン)は、防衛事業庁が決定し搭載させたソナーが、実際は2億ウォンだったものを防衛事業庁が書類改ざんして41億ウォンで納品していたことが発覚、防衛事業庁は製造した大宇造船からの引取りを拒否し海上に浮かんだままになっている。問題ソナーの搭載を指示した黄基鉄海軍参謀総長(搭載指示当時防衛事業庁在籍)は辞任に追い込まれ起訴されたが、最高裁に至るまで3審とも無罪だった。

2016年9月26日に日本海で墜落し搭乗員3人が死亡した海軍リンクスヘリコプターに品質保証書類が偽造されたボルトが納品されていた(墜落原因との因果関係不明)。2010年にも事故を起こしていた。

2016年6月の報道
監査院は、前職・現職の軍高位幹部が企業と癒着して軍装備品の寝袋で不正し、防衛事業庁と国防技術品質院も金品を受けとっていたことを報告した。
防衛事業庁は、各軍が直接発注した場合、不正が生じることから、不正防止のため一元管理するとの主旨で2006年に設けられた。今では不正の根源となっている。

不正ウイルスの極め付け事件・国民防衛軍事件
1951年1月の朝鮮戦争真っ只中、韓国の国民防衛軍司令部の幹部らが、国民防衛軍(民兵で組織された軍隊=約50万人)に供給された軍事物資である野営装備・軍服・兵糧米などを横領し、処分・着服した事件。横領により9万人余りの国民防衛軍の兵士が餓死・凍死したとされる「死の行進事件」。
事件黒幕とされる当時の国防部長官が辞任。国民防衛軍司令官ら5人が死刑となった。着服した資金の一部は李承晩に渡っていたが問題にはされず、国防部長官も李承晩のご加護で訴追されなかった。

朝鮮戦争という非常事態でも不正が行われるという異常さ、この時から不正ウイルスが今に至るまで韓国軍部と軍事産業を覆っている。

<問題のスリオン>
<問題のスリオン>

[ 2017年8月25日 ]
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