アイコン アベノミクスは終焉に向かうのか 相棒の日銀の動きに変化

 

 

安倍首相が、これまで掲げてきたアベノミクスは瓦解の危機にあるのではないかと考えられるとロイターが次のとおり掲載している。
それは安倍政権が続いた場合でも、先行きには大きな不安があるという。

アベノミクスは、
「大胆な金融政策」
「機動的な財政政策」
「民間投資を喚起する成長戦略」
という3つのマクロ経済政策(=「3本の矢」)で成り立っている。
この中でも「大胆な金融政策」は、「第1の矢」と呼ばれる通り、アベノミクスの起点ともいえ、最も成果のあった政策と評価されている。

特に2013年4月に導入された「量的・質的金融緩和」(QQE)は、デフレ脱却に必要な「名目金利を引き下げる」と同時に「予想物価上昇率を引き上げる」ことで、実質金利を大幅に引き下げ、総需要を刺激することに成功した。

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しかし、2014年4月の消費増税で状況が一変。
というのも、QQEは「機動的な財政政策」と組み合わされることで「リフレレジューム」を形成していた。
そして、「機動的な財政政策」は、少なくとも当初は「デフレ脱却をよりスムーズに実現するため、有効需要を創出」、「持続的成長に貢献する分野に重点を置き、成長戦略へ橋渡し」という説明が象徴する通り、積極財政が念頭に置かれていた。

つまり、アベノミクスとは、デフレ脱却に向け、金融と財政を緩和させるというポリシーミックスを示したスローガンだったと評価できる。

こうした評価を前提とすれば、2014年4月の消費増税がデフレ脱却にとって大きな逆風となったことも理解できるだろう。
日銀が2016年9月に行った「総括的な検証」でも示された通り、予想物価上昇率は消費増税後、原油価格の大幅な下落も重なって、伸びが頭打ちとなり、その後、鈍化へ転じた。

日銀は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」(2016年1月公表)と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」(2016年9月公表)で体制の立て直しを図ったが、前者は実施のタイミングやその前後の市場との対話のまずさがたたり、予想物価上昇率の引き上げに失敗した。

名目金利は、大きく引き下げられたものの、実質金利を十分に引き下げることはできなかった。長短金利操作付きの緩和策も、当初のポリシーミックスが反故(ほご)にされたことで、予想物価上昇率を十分に引き上げることはできなかったと考えられる。
だが、原油価格の反発という追い風もあり、実質金利は低位で安定。それが総需要を刺激し、需給ギャップを縮小させることを通じて、実際の物価を引き上げ、最終的に予想物価上昇率を引き上げるという枠組みで、2%の物価安定の目標を目指すことになった。

長短金利操作のポイントは、長期金利をゼロ%程度に固定することで、政府が財政を積極化し、国債発行を増加させても、長期金利の上昇やそれに伴う円高の圧力を抑制する。

つまり、政府さえその気になれば、QQE当初と同様、予想物価上昇率が上昇することを期待して設計されていたと言える。しかし、日銀が今年7月会合で決定した「強力な金融緩和継続のための枠組み強化」は、以下説明する通り、こうした金融と財政を緩和させるポリシーミックスを事実上、否定する内容となっている。

<量的質的緩和の縮小・撤回宣言に等しい>
まず、政策金利のフォワードガイダンス。
雨宮正佳日銀副総裁は「カレンダーベースの約束ではない」と説明するが、2019年10月という日付を入れた以上、それが額面通りに受け入れられるとは考えにくい。
しかも、「消費税率引き上げ」という文言を盛り込んだことで、金融と財政の緩和というポリシーミックスを難しくするという「副作用」さえある。

というのも、仮に政府が消費増税を先送りしたり、万全の態勢で臨み、景気への影響が回避されたりした場合、「きわめて低い長短金利の水準」は維持されないと解釈できる。
同じことは、長短金利操作にも当てはまる。その肝は、経済・物価情勢などに応じて、金利を変動させないことにある。

例えば、政府が積極財政に踏み切り、国債が増発されても、金利は上昇せず、円高も抑制されるとすれば、その実体経済への効果は大きくなるだろう。

国内のファンダメンタルズが改善し、潜在成長率の高まりに連動して均衡利子率が上昇する場合、実質長期金利が安定していれば、その分だけ金融緩和の効果が拡大する。

予想物価上昇率の上昇でも名目金利が固定されていれば、その分だけ実質金利が引き下げられ、総需要を刺激する。
さらに、海外景気の回復やそれを受けた海外金利の上昇は、円安を通じて、輸出やインバウンドの追い風となる。今回の決定はそうした効果を相殺する枠組みである。
資産買い入れ方針の柔軟化は、従来からのステルス・テーパリング(ひそかに行う量的緩和縮小)をさらに加速させ、QQEそのものの見直しに直結しかねない。
そして、政策金利残高の見直しは、マイナス金利の縮小に他ならない。

つまり、今回の日銀の決定は、QQE以降の政策のすべてについて、縮小、撤回すると言っているのに等しい。
日銀が物価安定の目標を達成するのはますます困難になったと言えるだろう。

<足元の市場は「嵐の前の静けさ」>
実際、市場参加者の予想物価上昇率を示す10年のブレーク・イーブン・インフレは7月30日の0.41%、5年先・5年インフレスワップは8月1日の0.56%を直近のピークとして、その後は急低下。
8月9日時点で前者は0.16%、後者は0.41%と日本だけで大幅に低下した。その間、名目金利の水準も全体的に上昇しているため、実質金利も大幅に上昇したと考えられる。
今のところ、為替と株式への影響は限定的。

しかし、内外投資家の多くは夏休み中で、日銀の今回の決定についても、腰を据えて分析するという段階には至っていない。
足元の金融市場はまさに「嵐の前の静けさ」という印象である。

歴史を振り返ると、デフレ下の日銀は常に景気回復のピーク前後で金融政策の正常化に舵を切ってきた。
今回も日銀短観の大企業製造業の業況判断DIが景気後退期にみられる2四半期連続で悪化。日本政策金融公庫の中小企業売上DIが2月をピークに水準を切り下げていること、売上見通しDIが2ヶ月連続で低下したことも景気の先行きに暗い影を落とす。

これら以外でも、景気ウォッチャー調査や機械受注といった景気の先行きを示す典型的な経済指標が軒並み悪化している。

もちろん、こうした経済指標の悪化には直近で相次いだ異常気象や地震などの自然災害の影響も少なくない。

10日発表された4~6月期実質国内総生産(GDP)1次速報値は前期比0.5%増と2四半期ぶりのプラス成長だった。
しかし、月次の統計をみると、6月は鉱工業生産が前月比▲2.1%減と2ヶ月連続で低下。
新設住宅着工戸数も前月比▲8.2%減と大幅に落ち込んだ。
4~6月期のGDPは5月までの勢いを反映したにすぎない。

しかも、上述した通り、景気に敏感に反応する経済指標は足元で頭打ち感を鮮明にしている。たとえ、それらの月次統計に特殊要因の影響が含まれていたとしても、景気の先行きを楽観する根拠とはならない。
むしろ、特殊要因にこだわり過ぎたことで景気の先行き判断を誤ることの方が多い印象である(特殊要因をきっかけに景気が足踏みや後退局面に入ることも少なくない)。
景気の先行き見通しも全くの的外れとなることを祈らずにはいられない。
以上、ロイター記事より

米トランプは、中国が元の切り下げに動いており、ドル安政策に転換するのではと予想されている。そうなれば、最初の影響するのは、政策的に長期にわたり円安を演出してきた日本の円ということになる。

ただ、眼下、経済が絶好調であり、FRBも金利を上げ、過熱化を防止する政策を採り続けており、現状の円安は妥当なところ。
しかし、米中貿易戦争など、米トランプが世界に仕掛ける貿易戦争により、米経済も今後の未知数部分が拡大しており、符合してオバマ時代から長期にわたり続く景気拡大も修正局面に入れば、ドル安政策に転換する可能性が大となる。
来年は、今年の大型減税効果も一巡し、世界経済が拡大し、米経済を牽引しない限り、企業の業績の拡大は見込めず、金融バブル化した株価も調整局面に入る可能性がある。

アベノミクスの正体は企業が経済を引っ張るものの、GDPの55~58%を占める消費については、景気の過熱化を徹底的に押さえ込むというもの。そうしなければ、景気拡大により金利が上昇、円高へ動き、アベノミクスの根本が崩れ去る。そのためには賃金の上昇を押さえ込むというものであった。(これまで賃金が上がっても、税や社会保険料増で吸収し、勤労者の可処分所得を極力抑えてきた)
しかし、長期にわたる企業景気の拡大により、人手不足は深刻となり、賃金上昇圧力が強まっている。政府は、いきなり、外国人労働者で埋め合わせする方策で、賃金の上昇圧力を殺ぐ政策を打ち出しているが、ノーガードでの受け入れは将来の日本に災いをもたらすことになる。すでに、人手不足から、運送費が上昇、商品価格の上昇も招いている。

日銀は、安倍首相の掛け声に、国債どころか、有価証券取得額を拡大させ、高水準の残高を続け、株価下落を、年金とともに支えているが、まずは、こうした有価証券残高を減らしていくものと見られる。長期にわたる超低金利政策・マイナス金利政策の弊害も出てきており、黒田丸もいつまでも安倍首相に付き合えなくなってきているというのが、現状だろうか。
プライマリーバランスを延長させ、票と景気に大きく関係する大公共投資も、これ以上増加させることもできない。その代わりか、防衛支出を現状GDPの1%から、敵陣を攻撃もできるように欧州並みに2%まで引き上げるという。これも公共投資の一種であるが、軍需産業の経済波及効果は限られている。
一番怖いのは、東京五輪景気もなくなり、大型都市再開発も一巡する2022年、2021年9月の安倍首相退任後の経済・金融政策だろうか。
ドル高円安が続き、世界経済が急拡大していることに期待するしかない。
米トランプの任期は2020年秋の大統領選挙まで、今年11月6日の中間選挙の結果次第で後4年、2024年まで続くことになる。すべてに№1であり続けたいアメリカ国民の願望を具現化しているトランプであり、次もありの可能性が大。

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[ 2018年8月10日 ]

 

 

 

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