アイコン クルーズ船下船 12日以降に検体採取 後の感染大丈夫か? これまでの経過

Posted:[ 2020年2月20日 ]



感染症対策は政治家の意向に沿ってはならない。

これを如実にしているのが、米国保健福祉省所管のアメリカ疾病管理予防センター(CDC)の制度であろう。

厚労省所管の国立感染症研究所(NIH/所長:脇田隆字/HCVワクチン開発の立役者)は、一見同じように見えるが、予算・権限に雲泥の差がある。
NIHが行うべき説明も何も分からない厚労相が行い、ろくに質問にも答えらず、記者も医療担当記者を配置せず、質問も表面的なものばかりで、それさえもケムに巻かれていた。

厚労相は1000人の検査体制があると豪語しているが、実際は検体採取に1000人でも1800人でも採取できるということであり、採取した検体の検査数が1日1000人体制であるということではないことが問題である。検査結果が出るまでには1日~数日間かかる。

(韓国は日本の時間のかかる旧式の検査体制に驚き、6時間で検査結果が出る検査キットを開発、日本の厚労省に技術提供した)



<感染の検査もされず下船できない乗船客たち>
感染者は発熱せずとも感染力を有している。
そうした人は検査の対象になっていなかったクルーズ船。
下船予定者に対する検体採取は12日ころから開始されたが、検査は発熱した人を最優先し、同室に感染者がいた人は、発熱でもない限り、12日からの検体採取さえも後回しにされ、下船もできず、同室の感染が確認された日から、さらに14日間クルーズ船に隔離され続けることになっている。

並行的に行われた未発症者=下船候補者の検体採取は12日から行われている。
誰がどういう手順でどういう環境で行ったか、下船候補者だけの検体採取は7日間にわたり行われ、1日あたり約400人行われている。

厚労省は2月10日には3711人の全員検査を行う方針を示していたが、乗組員1045人(感染隔離入院者含む)の検査をしていなかったとしても、1日あたり約300人を検体採取していたことになる。
検体採取時に感染した可能性すら否定できない(直近乗船した神戸大の岩田教授がクルーズ船現場は劣悪な環境だったと指摘している)。

それに採取は十分に行わなければ、ウイルスを採取できず、発症した2回目の検査で感染が判明した患者もいた。以前の検査では喉奥の粘膜を丁寧に採取するため一人当たり10分~15分かかっていた。

<乗組員>
厚労相は乗組員について、発熱等発症している人は検査し隔離・入院措置をとり、同部屋の人もその部屋で隔離措置を取らせたというが、同じ部屋で隔離措置を取った場合、ウイルスは最大9日間生き、半分だとしても4日間、物に付着して生き続けている。
乗組員感染判明者と部屋が異なる同じ業務の担当者は、感染しても発熱しなければ検査も受けられず、未発症者のまま、5日以降の業務を行い続けていたことになる。当然、途中で発症した人もいることだろう。

当該のクルーズ船での発症の疑いが生じたのは、2月1日深夜の香港当局の発表であった。3日夜、横浜大黒ふ頭沖に帰港した。
NIHの権限がどこまであるのか不明だが、2日朝から最悪の事態を想定して、3日夜までの2日間で、その対策を逐次講じておくべきではなかったのだろうか。
事前に想定した最悪事態のシミュレーションのマニュアルそのものがなかったようだ。

4日に具合が悪い人の検体採取、5日に感染確認、5日に船内の防疫体制を最大限強化させた。
2~5日の間は、5日防疫隔離させるまで、通常通りのイベントの開催やブッフェスタイルの食事の提供であったクルーズ船。2月1日には日本の那覇港にも寄港していた。

9日までに336人の検査を行い、70人の感染(うち未発症者60人)が確認されていた。1日の検体の検査能力は、検査要員3人の北里大学同様1日当たり60人が限度だったようだ。
こうした問題のすべては厚労省とNIHにある。
日に1000人の検査体制があるとした2月16日の厚労相の発言はどこから出てきたのか。

検体採取能力と検体検査能力はまったく別次元の事案である。ましてや日本全国の最大能力と即戦実行能力も大幅に異なる。3711人が乗船したクルーズ船に対応した首都圏の検査体制と検査能力はどうだったのかが問われている。

<もはや、厚労省・NIHの対策未整備の人災>
NIHがそうしたことを行わず、行き当たりばったりの後手後手防疫対策により、今日の621人(2月19日現在)のクルーズ船の感染者をもたらしている。

ここまで感染が広がると誰が思ったことだろうか。
しかし、NIHは最悪のケースも入れたシミュレーション作成と対策を図ることが、日本の重要な担当業務ではなかったのだろうか。

1日に那覇港に入港しており、その夜に香港で乗船客の感染が発表されており、丸2日間何を想定して動いていたのだろうか。高齢者含む持病のある人たちの薬剤も後手後手に手配していた。・・・問いたい。

日本の最前線の感染センターであるNIHの脇田隆字所長の責任を問わずにはいられない。

船内は空調管理されており、空調ダクト内にウイルスがいないかも確認する必要がある。
韓国MERSではダクト内に1ヶ月ほどウイルスが生息していたことが判明しており、中東から帰国した第一感染者が最初に入院した病院で、院内感染を拡大させた可能性が指摘されていた。

日本のNIHは韓国MERSを他山の石と見て、入国管理の徹底だけを防疫対策とし、何も学ばなかったようだ。
今回のクルーズ船、隔離防疫対策の実施、感染者がいる病院内とクルーズ船内にどれほどの違いがあるというのだろうか。

先述の岩田教授が述べるように船内をレッドゾーンとグリーンゾーンに分けることも、厚労省は5日の防疫体制強化命令で指示したというが、現実にはなっていなかったという。

当初、感染者がいた部屋がレッドゾーン、感染者がいなかった部屋がグリーンゾーンとなり、双方とも部屋に隔離したのが実態。
感染者の拡大でグリーンゾーンの部屋が減り続けていた。
レッドゾーン=感染者が出た部屋は、家族であれ、その部屋に、感染が疑われるが陰性かも分からない人たちを滞在させ続けた。・・・そして感染者に・・・・。

日本政府の危機管理は、北朝鮮のミサイルにしか対応していないようだ。

クルーズ船 ダイヤモンド・プリンセス号パニック・パンデミック
武漢コロナウイルス COVID19感染
乗船者数
3,711人
乗船客2,666人、乗組員1,045人
2020年
感染者
備考
1月20日
 
クルーズ船横浜出航
1月25日
 
香港人乗客、香港寄港時、体調悪で下船
2月1日
 
那覇港寄港、
 
深夜、香港当局乗船下船客、感染発表
2月3日
 
夜、横浜帰港、大黒ふ頭沖に停泊
2月4日
 
体調不良者など優先検査開始・採取
2月5日
10
・検査で感染初めて確認
2月6日
10
 
2月7日
41
 
2月8日
3
 
2月9日
6
・検査対象者累積数323人
2月10日
65
 
2月11日
 
2月12日
39
19日からの下船見込者の検体採取開始
2月13日
44
 
2月14日
0
 
2月15日
67
 
2月16日
70
 
2月17日
99
米国、米国人325人引取り、初の引き取り
うち当日感染判明者14人もチャーター機に搭乗
2月18日
88
 
2月19日
79
韓国14人引き取り
合計
621
 
17日から乗船客の各国が引取開始、各国は全員帰国後14日間隔離する
・日本は2月19日から陰性者の下船を開始、自由の身に。
・未発症の感染者に感染能力があるというCOVID19、感染検査能力なしにクルーズ船に3711人も隔離する方針そのものを、発症者が増加する中、変更すべきだったと思われる。受入施設の問題に責任転嫁すべきでもない。

 


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