北海道大大学院先端生命科学研究院の田中良和准教授と東北大の研究チームは、毒素の細胞攻撃のメカニズムを解明した。
病 原性微生物が分泌する膜孔形成毒素は,赤血球と接すると膜孔と呼ばれる孔をあけて破壊する。膜孔形成毒素は、可溶性の単量体として分泌されるが,赤血球上 で円状に会合した後,大きく形を変化させて膜孔を形成。本研究では,X 線結晶構造解析という手法を用い,黄色ブドウ球菌の膜孔形成毒素の作用メカニズムを解明した。

毒素は、赤血球の表面に取り付いた後、まずドーナツ形に変形し、さらに中央部から筒状の組織が下に伸びて赤血球の細胞膜に穴を開け始め、最後には貫通した。これまでは,膜孔が一気に形成されると思われてきたが,今回,膜孔は上下半分ずつ別々に形成されることが明らかになった。
膜孔は,孔の内部を物質が通過する性質を利用して分子デバイスとして応用されているが,その動きが分かったことで,今後は動きを利用した装置が開発されるものと期待される。
今後、がん細胞などに的を絞って破壊する薬の開発につながる可能性があるという。
以上の研究論文は、英国のNature Communications誌に10月29日掲載された。

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