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福岡市美術館は22日、美人画の第一人者として江戸中期に活躍した浮世絵師、喜多川歌麿の肉筆の美人画が新たに見つかった、と発表した。
彩色せず、黒い墨だけで童女の禿(かむろ)を従えた花魁(おいらん)を描いている。

肉筆は木版画の刷り物ではなく、絵師が絵筆で描いた「一点もの」で、歌麿作は50点余り確認されているが、墨一色の美人画は初めて。
同館は8月8日から9月20日まで開く特別展「肉筆浮世絵の世界」を開催する。
 同展を監修する国際浮世絵学会の石田泰弘理事が4月、東京のコレクターから所蔵していることを明かされ、「花魁と禿図」と名づけた。

床の間に掛けるよう表装されており、紙の大きさは縦117・6センチ、横46・3センチ。
上部に、大衆文学を手がける人気戯作(げさく)者だった山東京伝(さんとうきょうでん)の賛文が書かれている。
 賛文は、絵をたたえて書く文章、京伝は「ヲイラン界は馬鹿羅洲(ばからす)(=馬鹿らしい)アリンスの北に安(あ)り」と遊女言葉で花魁の世界を茶化し、「頭に鼈甲(べっこう)の如(ごと)き角(つの)を生(はや)し目は糸に似て口は剃刀(さすが)(=かみそり)の如し」とその姿を皮肉っている。

歌麿と京伝は、同じ版元から出版し、親しい間柄だった。
歌麿が、色香をたたえた女性美の表現を確立するのは1793~95年ごろ。「花魁と禿図」の制作は、筆の運びなどから歌麿の全盛期を迎える少し前、30代後半の作品と見られるという。

今回見つかった「花魁と禿図」は、よく知られた歌麿の美人画と違って色がつけられておらず、墨の濃淡と線の強弱だけで描かれた珍しい作品だという。また、女性が、斜めではなく真正面を向いて描かれている点も美人画としては珍しいという。

今回の作品の鑑定にあたった国際浮世絵学会の石田泰弘理事は、歌麿の作風の変遷を知るうえで貴重な作品だとしたうえで、墨一色でこれだけの表現力があることに驚いた。なぜ墨一色で美人画を描いたのか、今後研究していきたいとしている。

花魁と禿図