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東京大学の古澤明教授らの研究チームは22日、離れた物質の間を情報が瞬間移動する「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象を利用して、現代のスーパーコンピューターをはるかにしのぐ新型の量子コンピューターの基本原理の開発に成功したと発表した。

量子コンピューターをめぐっては、NASAやグーグルが別の原理で作られたカナダのベンチャー企業の実用化モデルを購入し研究を進めているが、研究チームは今回の基本原理を使えばこれを大きく上回る性能の究極の量子コンピューターを生み出せるとしている。

古澤教授らの研究チームは2013年8月に、量子テレポーション理論を完成させ、実用化の研究を進めていた。
研究チームは、2つの離れた物質の間で情報が光の速度で瞬間移動する「量子テレポーテーション」と呼ばれる現象に注目。
この現象は、量子と呼ばれる光の粒など極めて小さな世界で起きるもので、アインシュタインは、これを引き起こすものを「奇妙な遠隔作用」と呼んでいた。

例えば、光の粒を人工的に2つに分けて離れた位置に置き、一方に2、もう一方に+2という情報を与える。
続いて、この2つの光の粒を互いに「量子もつれ」、アインシュタインがいう「奇妙な遠隔作用」が働く状態にすると情報が光の速度で瞬間移動し、光の粒が4という情報を持つようになる。
情報の伝え方は、現在、足し算、引き算、かけ算、割り算が可能で、今回、研究チームは、光の粒をループ状の回路の中で回しながら瞬時の計算を行える光の粒を100万個同時に作り出すことに成功したという。
これは、超高速の量子コンピューターを作り出す基本原理を開発できたとしている。

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今のところ光の粒1組を「量子もつれ」の状態にして計算を行うために縦4メートル横2メートルの装置が必要だが、新たな基本原理を使えば、今の半分ほどの大きさの装置でほぼ無限に計算を繰り返せる究極の量子コンピューターを生み出せるようになるとしている。

古澤教授は、「今まで提案されていない全く新しい方式で、本当の意味での量子コンピューターの実現につながると思う。欧米の後追いでなく、日本で生まれた日本方式で究極の量子コンピューターをつくりたい」と話している。

幅広い社会問題解決 経済的にも大きな利益
量子コンピューターをめぐっては、幅広い社会の問題を解決に導き経済的にも大きな利益をもたらす可能性を秘めているとして、欧米各国でも大手企業が相次いで研究・開発に名乗りを上げている。
このうち、ドイツの自動車メーカーのフォルクスワーゲンは、「アニーリングマシン」と呼ばれるタイプの量子コンピューターを実用化したカナダのベンチャー企業D-WaveSystems社と共同で量子コンピューターを使って道路の渋滞を解消する研究を今年3月に発表した。
この研究は、中国の北京で400台余りのタクシーが、一斉に街の中心部から空港に行くとき、渋滞を防ぎながら最短時間で到着するルートを導き出すもので、これまで自社が持っていた高性能のコンピューターでは、結果を出すのに30分かかったが、量子コンピューターでは、わずか数秒だったという。
将来の自動運転システムなどに応用できるとしている。

また、このアニーリングマシンの基本原理を1998年に開発した東京工業大学の西森秀稔教授によると、アメリカのマイクロソフトは、量子コンピューターで小さな分子の運動を解析し、新たな組み合わせの化合物を作り出す「量子化学計算」と呼ばれる研究を進めている。

例えば、世界中で農業に使われる肥料を量子化学計算によって効率的に作り出す方法が見つかれば、肥料を生産するために出される二酸化炭素の量を大きく減らし地球温暖化などの環境問題の解決に役立つという。

アメリカが進めているアニーリングタイプの量子コンピューターの国家プロジェクトに日本人として唯一参加している西森教授は「アメリカやカナダでは熾烈な競争が目に見える形で始まっていて、そこにヨーロッパや中国も大がかりな投資を始め、スタートの号砲が鳴ったという状態だ。通常のコンピューターでできないものも量子コンピューターを使えばできるということで、経済的な効果が大きいことに気付いた大企業の間で開発が加速している」と指摘している。
以上、報道など参照

古澤明教授は東京大学大学院工学系研究科教授、専門は非線形光学・量子光学の物理学者。

量子アニーリング理論の西森教授の研究の成果は、日本では生かされず、カナダのベンチャー企業がその理論から商品化に成功し、すでに米政府系や米国の企業などが競って導入を開始している。

日本では、坂村健教授が開発した「トロン」、1984年6月に「トロン理論」の実用化に向け国の支援により「トロンプロジェクト」がスタート、貿易赤字に悩む米国が1985年の日米通商交渉において、自動車などの輸出問題に加え、当時、まだ日の目も見ていない企業が導入開始したばかりの「トロン」の研究と製品導入に注文を付け、日本政府は、米国様のお達しどおりに、国家機関や企業における「トロン」導入を自ら停止させ、その後、1985年11月、MSがWindows1.0を世に出し、CPUのインテルと共に、こん日、世界に君臨している。
当然、これを機に日本では次世代研究が大幅に後退した。

日本の政治は、票につながらない次世代技術開発にまったく興味を持たず、沖縄サミットでは当時の森首相が「IT」を「イット」と発言し、世界から嘲笑されたほど。対米貿易黒字問題により、日本はこうした先端技術を政治家により抹殺されている歴史がある。
西森教授の研究の成果「アニーリング理論」もまた見殺しにされた。

政府により聖域なき削減を受け続け、さらに削減されないように学術界も御用学術界になってしまった。国が国なら、日本の大手企業もサラリーマン経営者ばかりになり、株主の顔色ばかり見る自己保身型経営者ばかり、野心を持つ企業が見当たらないのが現実。
東芝はその頂点にあり、歴代の経営陣が粉飾してまで自己保身に走ったが、日本の大企業の実態を反映したものともいえる。

国も、東工大が開発したIGZO(シャープの液晶技術)にしても、特許を持った政府機関の科学技術振興機構が、最初にサムスン電子に技術提供したぐらいだ。

アニーリング型量子コンピューターの開発は、欧州や北米、中国、韓国の企業は、こうした研究成果に貪欲に取り組み、当然ながら日本より先んじている。

日本の場合は、長期ベンチャー投資が未熟、その額もあまりに少ない。大手企業の経営陣も目先利益に目が眩み、長期投資など一切行わない。おまけに国の研究支援も予算が減少する一方で限られている。

古澤明教授ら「量子テレポーテーション」の成果も、産学上げての製品開発に動くかははなはだ疑問、米国によりまた潰される危険性もある。

脇が甘ければ中国や韓国企業が技術をまた盗み出すことも考慮される。世界の著名な学術誌への発表そのものが開発原理など詳細を示し、次世代技術に巨額投資する米国や中国などに実用化で先を越される危険性も高く、基本特許収入だけで終わってしまう可能性もある。

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