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昨年11月、一瞬にしてゴーン日産から西川日産に変わった。しかし、その歯切れの悪さは現在も続いている。

まず、日産は公にルノーに対して、吸収統合されることを拒否することにつき、明確な言動なり、態度を一度たりとして、ルノー側に行っていない。
西川日産になった時点から、吸収統合されることを拒絶した動きと捉えられているが、はっきりとした態度を公に表明しないことにより、何度でも同じ要求をフランス政府やルノー側から持ち出されている。
日産にとってアライアンスは現在、必須だろうが、ルノーにとっても同じことである。これまでの経過からしても必要だろう。
フランス政府が持つルノー株(15%)を日産が買い取る話もフランス側から発せられるヨタ話に過ぎない。
 
<大失敗の巻き返し>
再三、当紙面で書いてきたが、マクロン仏大統領こそが、産業相時代に法律まで作って、政府にルノー株さえ買い増しさせ、ルノーに日産を吸収統合させようとした中心・核心人物である。
日産は、産業相時代には失敗したものの大統領になって再度動き出した人物と対峙していることを肝に銘じなければならない。西川日産が描く日産は絵に描いた牡丹餅のまま、自動車業界に革命が起きている貴重な時間をムダに経過させてしまう。
すでに欧米では、日産の販売への影響も出ており、経営自体が柱のない優柔不断な経営体制に逆戻りしてしまうことになる。
 
ルノーは、日産を吸収統合することで、経営の巨大化と安定化および技術を手に入れ、フランス政府は税収増とフランスの雇用安定化および増加を推進できる。マクロンにしても大不振の大統領支持率を上昇させることができる。
<ルノーサムスン問題>
それに加え隠れた問題がある。それはルノーが抱えるルノーサムスン問題である。
ゴーン日産は、ゴーン采配により2014年9月から経営不振に陥ったルノーサムスンに対して、日産ローグを生産委託させた。その期間は2019年9月までの5年間。当然、フルモデルチェンジ時期に合わせた期間である。
 
そのルノーサムスンは、昨年9月労働組合の主導権を取った過激な民主労総により、これまで60回(4月23日現在)も断続的に時限ストを打ち続けられ、その要求も賃金から手当て、人事、経営政策に至るまで拡大し続けている(手当含む賃金、人事配置の合意、従業員増、生産台数減等・・・)。
そうした労働組合のストに対して、ルノー経営陣は、何の解決策を見出せないまま困り果てている。
ルノーサムスンでは、すでに設立当初から在籍した韓国人の副社長がその責任を取り辞任、組合と対応する力量ある人物さえいなくなっているのが現状である。当然、生産にも支障が出ている。韓国の報道機関では、3月までにその損害額は2百数十億円に達したとみている。
 
<ルノーに立ちはだかるルノーサムスン問題>
ルノーにとって厄介者になったルノーサムスンを、日産を子会社にすることで、ルノーはアジア事業の再編という美名の下、日産の子会社にし、経営を日産に移行させる計略が見て取れる。
 
すでに、ルノーは中国では全滅状態、韓国でも売れていない。2010年の韓国とEUとのEPA(自由貿易協定)締結により、ルノーは世界戦略車の一部をルノーサムスンで生産させ、欧州などへ輸出させてきた。しかし、韓国における労務コストの上昇は継続し、さらに文政権になり、その上げ幅を拡大させている。生産効率も日産の九州・苅田工場にも及ばない。
 
いくらEPAを締結していても、欧州販売車を韓国で造るルノーのメリットはまったくなくなっているのが現実。
ゴーンルノーならば、フランス政府の監視下、その名誉のため、巨額撤退損を発生させる経営はしないはずだが、ゴーンが失脚した現在、ルノーの采配しだいでルノーサムスンでは事業継続さえ危ぶまれている。
 
韓国の労働問題は、韓国の国民性ゆえ、政権が変わったとしても変わらず、未来永劫に続く。それは従業員平均年収が9200万ウォン(約920万円)となり貴族労組と呼ばれながら、それでもストを打ち続ける現代自動車が証明しているところでもある。
 
<日産委託生産を契約の9月限を年内に変更>
そうした日産はルノーサムスンに対して、今年、例年の10万台の委託生産量を6万台と通知している。当然、契約満了の9月までが前提条件であるはずだが・・・。
ところが、日産は、ルノーサムスンに対して、今年いっぱいの契約にすると通知した。
ローグのフルモデルチェンジ時期への開発が遅れたのか、譲歩したのか。
策のない一つの譲歩は百の譲歩に繋がる。
日産は世界販売台数が減っている中で、ルノーサムスンに対して契約期限を越えて委託を続ける必要などどこにあろうか。フルモデルチェンジ時期が遅れたとしても、ルノーサムスン分は九州工場でまかなえる体制だ。
米国における今年1~3月までのローグの販売台数は▲19.4%減の93,814台にとどまっている。ゴーンを失脚させた日産批判の影響とローグのフルモデルチェンジが市場から要求されているのだろう。
 
そうしたケジメのない態度こそが、ルノーに利用され続け、言いなりになり続ける原因を日産自身がルノーに醸成させてしまっているのではなかろうか。
 
ルノーは、ローグの代参措置として、ルノーサムスンに対して、新型SUV「XM3」を生産させる計画であったが、まだ最終決定していない。ルノーサムスンの現状から、ルノーのスペイン工場での生産も考慮されている。
ルノーサムスンでは、ルノーの世界戦略車である新型SUV「XM3」の生産は、2020年上半期スタートするとみている。
 
<日産は韓国では政治的リスクも>
日産自動車(源流は日本産業を中核とする日産コンツェルン=鮎川財閥)は韓国で言う戦犯企業でもあり、いつ何ぞや政治問題化されるやも知れない。
成功した(韓国人の)在日企業さえタタク韓国政府・韓国民であり、戦前からある日本企業は差し押さえの危険性もあり、手に負えない。
韓国文政権と与党「ともに民主党」は、1965年の日韓国交回復の基本条約(2018年10月30日、元徴用工の賠償金訴訟の確定判決において)否定する判決を意図して大法院に出させた。 
 
元徴用工に対する賠償金は、基本条約の付帯協定として締結した「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」に基づき支払い解決済みである。
それを韓国文政権は否定し、日韓国交回復の基本条約を否定することにも繋がる。
基本条約は正式には「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」
  東亜日報OBで日本にも赴任していた李洛淵首相にしても、「協定文には、企業に対して賠償請求することを禁じていない」と屁理屈を述べる次第だ。 
 

 

ルノーサムスン生産台数=販売台数推移
 
韓国
世界
 
 
/千台
前年比
/千台
前年比
 
2009年
 
 
192
 
リーマンショック余波
2010年
 
 
276
43.8%
2011年
 
 
243
-12.0%
2012年
59
 
154
-36.6%
2013年
60
1.7%
131
-14.9%
経営不振
2014年
80
33.3%
169
29.0%
2014年9月から日産ローグ生産
2015年
80
0.0%
229
35.5%
2016年
111
38.8%
257
12.2%
2017年
100
-9.9%
276
7.4%
2018年
90
-10.0%
227
-17.8%
2019年 月別販売状況 単位:台
 
韓国
世界
 
 
前年比
前年比
 
19/1月
5,174
-19.2%
13,693
-37.3%
 
19/2月
4,923
-8.0%
11,721
-26.7%
 
19/3月
6,540
-16.2%
13,796
-49.0%
 
1~3月計
16,637
-9.1%
39,210
-39.6%
 
2019年9月日産とのOEM生産契約終了/韓国数値は世界数値の内数
日産Rogue米国販売台数
 
千台
前年比
欧米有力紙は全紙、昨年11月のゴーン逮捕について、日産批判を展開。そうした影響が日産車の販売に出ている。2018年の委託生産台数は10万7千台。欧米は白人の社会。
2016年
329
 
2017年
403
22.3%
2018年
412
2.1%
19/1~3
93
-19.4%
 
 
<ルノーは中国で全滅状態>
中国でのルノー含む仏系自動車販売推移/万台
 
仏系
前年比
中国全体
前年比
2013年
55.26
25.6%
1,792.89
15.7%
2014年
72.70
31.6%
1,970.06
9.9%
2015年
72.93
0.3%
2,114.63
7.3%
2016年
64.40
-11.7%
2,437.69
14.9%
2017年
45.58
-29.2%
2,471.83
1.4%
2018年
30.70
-32.6%
2,370.98
-4.0%
19/1~3
4.11
-60.3%
526.28
-13.7%
・中国汽車工業協会版で工場出荷台数ベース
・輸入車含まず、昨夏より関税が25%⇒15%に低下
 
 
2018年度の日産の販売台数>
ルノーのゴーン会長・CEO 兼 日産会長が2018年11月逮捕されたことを受け、欧米有力紙や報道機関は連日、日産に対する、日本の司法制度に対する猛批判を展開した。
ゴーンの不正が後々欧米でも明らかになり報道されるが、当初の報道による国民に与える影響は大きく、日産は、影響を受けた米国・カナダ・メキシコ・欧州の各国民から不買にさらされ、大きく販売台数を落とした。(メキシコではリゾート地のアカプルコに日産名義でマンションを購入していた)
 
欧米ではこうした流れがしばらく続くものと見られ、今期の日産はグローバルの生産・販売計画を見直したと見られる。
ゴーンが関係する国:レバノン(国籍)、ブラジル(国籍)、フランス(居住)、オランダ(税金住所地)、・・・中東全域、欧州全域、北米全域
 
2018年度 日産の世界販売台数国別
2018年4月~2019年3月
 
台数
前年比
構成率
日本
596,087
2.1%
10.8%
米国
1,443,725
-9.3%
26.1%
カナダ
146,821
0.0%
2.7%
メキシコ
305,322
-12.9%
5.5%
欧州(露含)
643,445
-14.9%
11.7%
 (うち露)
107,355
2.6%
1.9%
中国
1,571,603
2.0%
28.5%
その他
815545
-0.3%
14.8%
合計
5,522,548
-4.6%
 

 

日産の世界販売推移 
 
2017年
2018年
2018年1~6月
日本
590,905
10.6%
615,966
4.2%
335,965
-2.3%
米国
1,593,464
1.9%
1,493,877
-6.2%
780,695
-4.8%
カナダ
146,677
9.3%
149,117
1.7%
76,549
2.2%
メキシコ
366,544
-9.1%
314,123
-14.3%
154,869
-16.1%
欧州(露含)
778,025
3.0%
684,769
-12.0%
374,586
-10.7%
中国
1,519,714
12.4%
1,563,986
2.9%
720,447
10.8%
その他
820,949
0.9%
831,845
1.4%
411,076
2.5%
合計
5,816,278
4.6%
5,653,683
-2.8%
2,854,187
-1.4%
2018年10月~2019年3月
 
18/10月
18/11月
18/12月
日本
42,715
93.8%
45,587
31.4%
36,884
-2.8%
米国
109,962
-10.6%
110,513
-18.7%
148,720
7.6%
カナダ
12,198
5.4%
11,446
0.5%
9,488
1.1%
メキシコ
24,700
-10.0%
28,663
-14.2%
29,782
-15.5%
欧州(露含)
47,379
-10.9%
46,591
-16.9%
47,984
-18.8%
中国
142,079
-5.5%
150,139
-9.2%
176,191
4.4%
その他
68,352
-2.3%
72,718
2.2%
75,637
-2.0%
合計
447,385
-2.2%
465,657
-8.4%
524,791
-3.1%
 
 
19/1月
19/2月
19/3月
日本
53,285
-5.4%
60,305
-6.3%
72,696
-15.0%
米国
100,741
-18.5%
114,342
-12.0%
150,768
-7.2%
カナダ
7,967
-9.8%
8,597
-12.4%
14,981
-1.4%
メキシコ
23,446
-11.8%
22,855
-10.3%
25,607
-10.5%
欧州(露含)
45,502
-20.1%
50,021
-15.1%
75,994
-21.6%
中国
133,934
-0.8%
76,745
-1.8%
133,069
8.2%
その他
59,809
-5.6%
59,011
-4.1%
75,635
-12.1%
合計
424,684
-9.8%
391,876
-8.5%
548,750
-8.2%
 
 
<ルノー日産アライアンスグループ>
2018年 ルノー日産アライアンスグループ
2018年1~2018年12月
メンバー
販売台数
前年比
構成率
ルノー
3,884,295
3.2%
36.1%
日産
5,653,683
-2.8%
52.6%
三菱自
1,218,897
18.3%
11.3%
合計
10,756,875
1.4%
 
・ルノーが日産株の43.4%保有
・日産がルノー株の15.0%保有(議決権なし)
・三菱自の株は日産が34.03%保有
 
 
<2019年3月決算予想について>
3回目の下方修正を行った日産自動車、理由として、米国市場におけるカスタマーケアのための一部車両についての保証期間延長実施に伴うコスト増及び第4四半期におけるグローバル経営環境の更なる悪化並びに一連の問題(ゴーン不正失脚事件)の販売への影響によるものとしている。
 
日産 19/3期決算予想 
連結/百万円
売上高 
営業利益
←率
税前利益
当期利益
19/3当初予想
12,000,000
540,000
4.5%
 
500,000
19/3期前予想
11,600,000
450,000
3.9%
 
410,000
19/3今回予想
11,574,000
318,000
2.7%
 
319,000
19今予/18比
-3.2%
-44.7%
 
 
-57.3%
18/3期実績
11,951,169
574,760
4.8%
750,302
746,892
17/3期実績
11,720,041
742,228
6.3%
864,733
663,499
16/3期実績
12,189,519
793,278
6.5%
862,272
523,841