アイコン 追放3:日進 破綻原因はデリバティブ取引損の巨額流出

昨年発生した急激な円高は、海外取引をする企業にとって、取引上の為替差損回避のためのリスクヘッジとして、金融機関の勧誘斡旋もあり、デリバティブ取引を行った。しかし、円高により、殆どの企業がリスクヘッジどころか大きな損失を発生させた。

日進もそうしたリスクヘッジで、銀行2行(大手と地場銀行)の誘いに乗り、デリバティブ商品を購入=投資を行った。ところが、昨春の超円高で、約10億円の損失を発生させていたという。それを本年5月、デリバティブ商品の買入先銀行に対して、4億円支払えば和解。日進は、5月に4億円を支払い、デリバティブの呪縛から開放されたという。

しかし、そうした4億円もの巨額資金流出は、日進の本業の売上高が、不況により減少するなか、屋台骨の資金繰りを窮地に追い込むことになった。
結果、9月末の決済資金に支障をきたし、今回の事業停止、破産の道を辿ることになったとされている。
日進は、今回の破綻を回避することもできた。金融ADRの申請である。デリバティブ取引という本業以外の資金流出により破綻するくらいだったら、何故、弁護士に相談しなかったのだろうか。

同社は、先代が既業経験を元に木材建材卸販売会社として独立、販売先を増加させ続け、収益も確固たるものにし、事業を拡大し続けた。しかも、事業地が幹線道路の用地に大きくかかり、社屋も綺麗に建て替えられ、大きな不動産売却資金も入ってきた。財務的には磐石なはずであったが、賢明な先代も亡くなられ、息子氏が経営を承継していた。
しかし、息子氏は決して叩き上げではない。新しいことにも矢継ぎ早にチャレンジしていた。ところが、リーマン・ショック以降は周知のように住宅建築が大きく落ち込み、同社も大きく売上高を落としてきた。
そうしたなか、中国からフロアー材の輸入なども拡大させていたとされる。そのため、デリバティブ取引のリスクヘッジのための取引であったのか、単なる利益捻出のために取引を開始したのか定かではないが、こうした投資取引を拡大させていた。
企業たるもの、万が一のこうした円高に振れても、決して屋台骨を揺さぶるほどの取引をするべきではないが、息子ゆえにのめり込んで行った可能性もある。
2代目は、積極性は本業にかかわるものは評価できるものの、畑違いの分野への進出も見られていた。そうした分野での損失も過去表面化させていた。親分肌は親譲りの性格かもしれないが、そうした性格がデリバティブ取引など無防備に乗り過ぎ、引き際の判断も間違い、今回の破綻に至ったと思われてならない。

デリバティブ取引では、福岡でも10億円単位で損失を発生させた企業が何社もある。そうした企業は事業規模も大きく表面化していないが、全国区では、レストランチェーン大手のサイゼリアが、本年6月、BNPパリバ証券など同証券グループ3社を相手取り、計168億円の損害賠償請求訴訟を東京地裁に起こしている。オーストラリア子会社からの加工肉輸入に関して、為替差損回避のため、証券会社の教えに基づき、購入して巨額損失を出し、裁判を起こしている。
また、本年5月には、駒澤大学がBNPパリバ等の証券会社を相手取り、「顧客の意向に反して過大なリスクのある取引を積極的に勧めた。数値の設定にも合理性がなく、取引は無効」と主張してデリバティブ取引損84億円の損害請求訴訟を起こしている。同大では他にも損失があり、損失総額は154億円に達している。

しかし、こうした裁判沙汰にしている企業はごく一部、殆どが泣き寝入りして支払い、破綻していった企業も多い。
急激な円高進行となった昨春、デリバティブ取引していた多くの企業が、昨年4月以降、金融機関から清算損の支払を求められ、金融ADR申請も急増している。
中小企業のADR申請でも、殆どが損失金の大幅支払減額を勝ち取り和解しているとされる。
こうした背景には、金融規制緩和による銀行・証券会社による企業に対するデリバティブ取引の過剰勧誘斡旋が浮かび上がっている。

デリバティブ取引の損失について弁護士は、ADR申請で多くが解決できるとしている。但し、損失を被ることになる金融機関との取引はできなくなり、別途の取引銀行をADR申請前に構築しておく必要があるとも指摘している。

なお、日進の既存の取引銀行:福岡銀行、三井住友銀行、山口銀行、りそな銀行、商工中金などであった。

関連記事
(株)日進(福岡市)/事業停止
追報:(株)日進/自己破産へ
追報:日進/東証一部のナイス 詐害行為では? 売掛金相殺で在庫取上げか?

[ 2012年10月 2日 ]
モバイル
モバイル向けURL http://n-seikei.jp/mobile/
スポンサード リンク

コメント

関連記事

  • この記事を見た人は以下も見ています
  •  
  • 同じカテゴリーの記事です。
  •   

↑トップへ

サイト内検索