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米国が中国に仕掛けた米中貿易戦争、米国は貿易不均衡を問題にしているように見えるが、そんな簡単なものではない。当然、問題の知財侵害もあるが、根っこは中国の覇権とICT技術の成長力による脅威がある。
元々、 中国の経済開放政策を米国が金融面から支援したことに始まっている。米国は、中国経済が自由化すれば中国共産党の独裁は崩壊すると夢想したようだが、その 裏には、中国を債券市場に引き入れて大儲けようという魂胆が米国市場にあったことに、その夢想した政策を一貫性がないものにしている。
その意味では、中国が一枚も2枚も米国より上手だったことになる。

中国共産党の機関紙・人民日報は「米国が損している」との論に反発する記事を掲載した。以下はその概要。
米国には、いわゆる米中間の「巨額貿易赤字」に気をもむ人が常に存在する。
時には「米製造業は数百万人分ものポストを失った」などの言葉が飛び出し、「米国は、米中貿易の被害者」と称する。
こうした「米国が損している」論は、米国が圧力を極限まで中国にかける根拠の一つとなっている。

米国は、世界最大の経済強国、世界の貿易ルールの制定者である。「米国が損した」となるなら、米国は自国の損となるようなルールを作ってしまったのだろうか。
世界貿易であれ、米中2国間貿易であれ、米国は被害者ではない。

逆に大きな利益を得ていることは、米国の関連業界、消費者、経済学者がよく分かっているはずだ。

米国の貿易赤字は、中国によって生まれたものでも、中国によって終わるものでもない。過度の消費、巨額財政赤字などが米国の貿易赤字形成の根本的原因だ。
対米貿易赤字は単なるイメージにすぎず、米国の中国における商業利益の真実の姿を反映できていない。
世界経済は、すでにグローバルバリューチェーンの時代に入った。生産について見ると、米国は世界の産業チェーン、バリューチェーンのハイエンドに立ち、特許技術、中核部品、研究開発、マーケティングなど付加価値の高いポイントを制御し、巨大な利益を手に入れている。

アップル社のスマートフォンの例は人々が広く知るところだろう。全ての黒字を端末輸出国のものとして統計すれば、貿易の中の価値分配を客観的に反映できない。
現在、米国資本の企業は、中国で年間7000億ドル(約76兆円)の売り上げを得ている。
これは、中国の発展がもたらすチャンスと成果を米国企業が共有していることの表れだ。米国の商品の安さは多くの人に知られている。米中貿易が高品質で手頃な中国の商品を米国の家庭に届け、消費者の利益を拡大させてきた。

かねてからの輸入大国である中国は発展が始まって以降、その門をより広く世界に向けて開いた。
今の中国は、120以上の国・地域にとって最大の貿易相手国となっている。中国は貿易黒字の拡大を追求したことはなく、米国の競争力ある商品の輸入を増やしたいと願っている。

米国のある機関の分析によると、米国が民用ハイテク商品の対中輸出制限を緩和させれば米国の対中貿易赤字は35%前後減るという。
強みを持つ商品の輸出を拒否しておきながら、米国は赤字を他人のせいにするのだろうか。

対中貿易赤字が米製造業の雇用を損ねたという問題についても、
「米国の構造調整に原因がある」とするのが米学術界の主流解釈だ。生産の自動化とロボットの投入増加が生産性の向上を呼んだ。対外貿易は劣勢に立たされた産業の淘汰を生むが、それ以上に優位にある産業の拡張をもたらし、産業構造のレベルアップを実現する。

米カリフォルニア大学の研究者らは「米国が対外貿易で雇用を失ったというよりは、より報酬の高い雇用を得た」ということを見つけた。

こうした事実は、貿易赤字、製造業の雇用流出が「米国が損している」論を支えきれていないということを証明している。
国内の矛盾を一時的にそらせるだろうが、時間が長引けば米国の人々を真の被害者としてしまう。
米国の消費者、農場主、企業は米国が引き金を引いた貿易戦争の被害者だ。
彼らは中国の「不公平な競争行為」による被害者ではない。
以上、

中国はかねてから、現行の貿易額ではなく、付加価値貿易額により、貿易額を算定すべきだと主張している。
それは、iPhoneの例では、そのほとんどの部材が米国・日本・韓国からもたらされ、中国では、単に組立作業による工賃仕事に過ぎず、製品価格のほとんどは、米アップルが指定したメーカーから入ってきた部品や部材が占めている。しかし、貿易では製品価格でカウントされることから、膨大な利益を中国にもたらしていると錯覚されているとしている。
こうした米企業が中国で直接・間接に製品化させている電子機器(スマホ・タブレット・パソコン・ゲーム器などなど)のほとんどは似たり寄ったりであり、製品価格と販売価格の大きな差の分を米企業は利益として享受しているとしている。
貿易に対する一つの見方でもある。

このまま、残る3000億ドルに対しても米国が中国に対して追加関税制裁を行使すれば、これまで、米消費者に直接影響が出ないように、優先順位を決め、制裁してきたものが、すべて取り払われ、米消費者を直撃することになる。
5月10日に発動した2000億ドル分についても、これまでの10%は、中国企業の値引きと米企業の努力で、米国での販売価格を可能な限り上げずにきたが、15%はまったく対応できず、米企業や消費者が値上げの影響を受けることになる。

トランプが振り上げた拳であるが、貿易戦争が継続拡大すれば、中国制裁に歓喜してきた米国民=消費者も値上げでは手のひらを返すことになり、来年の大統領選挙に直接影響し、トランプも中国側と妥協点を今後探るものと見られる。

知財については、日本の例で言えば、中国政府が、中国新幹線構想を打ち出し、国際入札にかけたが、そのときの入札条件が、その後の知財の無償使用というのも含まれていた。そうした条件を飲み、日本やドイツ・フランス企業などが応札し、川重が落札した。その列車製造かかわるものから運行システムに至り、JRなどが反対する中、川重は進め、今や日本の新幹線そっくりさんが中国中を走り回り、インドネシアでは寝首をかかれる、日本政府の承認の下に原因を作った。
川重は当時、日本が落札しなかったらドイツなど落札しただろうと居直っていた。

そうした事例から、中国に工場進出する企業は、設計図面を寄こせと政府が命令を出し反発を受けたり、やりたい放題、それでも進出する企業は限られ、世界の工場としての富を得た中国は、最先端企業を世界中から買収、逆輸出するまでに成長し、今日がある。

LGディスプレイが昨年進出した最新式のOELD工場についても、地方政府が図面を寄こさせないと操業の許可を下ろさないと圧力をかけていた(その後は中央政府が入った話だが結果は不明)。

知財については、西側各国が団結して、中国に対して、力で是正させるしかないが、2017年になり、やっと欧州では、中国企業による最先端企業の買収を厳しく制限するようになっただけで、それまで、米国も含め、中国企業による買収を喜んでいたのが実態だった。
米トランプは、就任早々のNATO軍の加盟国負担金問題を取り上げ強烈に批判、欧州各国の首脳らともうまくいっておらず、安倍首相を別にすれば孤立状態。中国に対し知財で是正させるにも一枚岩でないところに多くの問題を抱えている。

米トランプは15日、オバマ時代に執行された政府機関の中国通信機器導入の禁止を、民間企業にも強制する法を制定すると表明している。

3000億ドル制裁の次に予想されるのは、米製のモノを組み込んだ製品の中国への輸出禁止となるだろう。もうほとんどイラン制裁・北朝鮮制裁と同じ。
日本の先端技術製品のほとんどは、米企業のパテントやパテント製品が組み込まれており、中国へ輸出できなくなる。
それは、米国の経済破綻も意味し、単なるトランプ個人のヒステリーだけでは済まされなくなる。

当然、相手国を借金の漬物国にして進める中国の一帯一路軍事覇権戦略との関わりが横たわっている。
中国は第2位経済大国、その影響力からしても、経済が破綻状態に陥ったロシアに対するウクライナ制裁のようにはコトは運ばない。