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韓国経済がますます悪化の兆しをみせていると韓国紙が報じている。

対ドルのウォン相場は4月下旬から急落し、韓国紙は「経済危機に直面したアルゼンチンなどと同水準で深刻な危険信号」と警告している。4月の失業率は全体、若年層ともアジア通貨危機の影響が残っていた2000年以来19年ぶりの高水準となった。

韓国経済新聞によると、対ドルのウォン相場は昨年7月からの9ヶ月間にわたり1115~1135ウォン水準のボックス相場で推移していたが、4月下旬から急激なウォン安傾向に転じるとほぼ連日年初来安値を塗り替えている。サムスン電子の第1四半期決算が予想の悪化よりさらに悪化したことに起因したものだった。

5月20日には1192.33ウォンまでウォン安(20日の米市場では1194.79ウォン)になっている。このため、為替差損を懸念した外国系資金が韓国市場から離脱することにならないかとの懸念が頭をもたげている。
この間、外国人投資家は韓国証券市場で売り浴びせ、ウォン安の原因の一つとなっている。

KOSPI=韓国総合指数 2年チャート 
5月20日は2055.80P
4月5日のサムスン電子の予想を超える業績悪化により、韓国市場からの外国人投資家離れが進み、ウォン安を誘発している。(サムスン電子1Qの売上高は前年同期比▲13.5%減、営業利益▲60%減)
株価指数でも、2018年1月の最低賃金の大幅上昇で下げ、10月の半導体価格のピークアウトで下げ、その後、米中貿易戦争の和解への動きで持ち直していたものの、4月のサムスン電子1Q決算で下げている。5月10日の米国の対中貿易制裁強化があり下げ基調にあるものの、中国勢のIT製品メーカーへの制裁により、サムスン・SKに有利に働くことの観測もあり、直近では様子眺めに入っている。
ただ、制裁を受ける中国勢に対して多くの製品を納品しているサムスン・SKでもある。貿易戦争激化により世界経済が低迷し、スマホの世界販売減や完全自動運転車の開発遅滞がIT部品・部材業界にも直接影響してくる。

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通常ウォン安になれば輸出は好調となるが、輸出は4月まで5ヶ月連続で減少している。半導体の輸出不振に主力輸出市場である米国と中国の貿易摩擦の影響が重なったことによるもの。そうでなくても内需が低迷する中で輸出までウォン安の恩恵を受けられず、韓国の経済体力に対する悲観論が広がり、これがウォンをさらに引き下げている。

こうした経済状況に、文在寅氏は14日の会合で「全体的に見れば、韓国経済は成功に向かっている」とノー天気な現状認識を示し、景気刺激策を講じるつもりもなかったようだ。
しかし、15日の失業率に驚いたのか、大公共投資の財政出動を図る動きに転じたようだ。ただ、韓国の財政規律(政府債務の上限GDP比40%)を雇用対策で高め続けてきたため、規律を破れば、貿易額が大きく、為替不安に陥る可能性もあり、その額には限りもある。
それでも、来年の総選挙向けのパフォーマンスを打ち出す必要もあり、補正予算を組み、内需刺激策の公共投資を打ち出すものと見られる。

それでも、文大統領の支持率は50%前後と高く、就職難の韓国経済を問題視する人たちは少ないようだ。最低賃金増で零細企業の廃業は多いものの、企業や不振の産業界には雇用対策の補助金ばら撒きがあり、倒産件数はさほど多くない。30代・40代の雇用が一番減少しているが、その世代は、洗脳されているのか文大統領の一番の支持層であり、その層の支持率に影響を及ぼしていない。

ただ、外国人投資家がどう見るかは別。(証券市場の外国人投資家比率は、日本と同じく30%前後だが、半導体関連企業などに集中し、その不振では離反しやすい、また、為替安では為替損も生じることから売りが売りを呼んでいるようだ。)

輸出・億ドル
メモリ半導体で圧倒的なシェアを持つサムスン電子とSKハイニックスの韓国勢、しかし、各社が増産する一方、米中貿易戦争により中国経済が急低下、スマホの世界販売台数も昨年はマイナス成長、1~3月期もマイナスとなっており、需要が急速に悪化、価格も大幅に下落し、韓国勢は生産調整に入っている。

韓国経済は、半導体の価格上昇と輸出増により、全体も押し上げ続けてきていたが、昨年第四半期から半導体価格が急落し、全体の輸出額も減少傾向にある。
サムスン電子の19/1~3月期の売上高は、前四半期比で▲12.3%減、前年同期比で▲14.1%減の52兆ウォン(約5兆1000億円)だった。
韓国の半導体輸出は、2018年3月の108億ドルから今年3月は90億1000万ドルと前年同期比▲16.6%減少。
価格は、DRAM(DDR4・8Gb)は2018年3月の9.1ドルから今年3月末には4.56ドルと半額に、NAND型フラッシュ(MLC128Gb)価格もやはり同じ期間に▲30%下がっている。
半導体の輸出増で見えにくくなっていた韓国の輸出の全体像が、半導体輸出額の減少により、明らかになりつつある。

半導体DRAM価格?マイナスが続く
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<韓国の輸出額推移>1年チャートと5年チャート
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失業率
4月は4.1%となり、4月としては19年ぶりの高率となっている。19年ぶりとは、1997年のアジア通貨危機で韓国がIMFの支援を受け、不振財閥の解体など大きなメスを入れていた2000年4月の数値。

これまで、半導体を除けば国内経済が低迷しているにも関わらず、2017年5月に登場した文在寅大統領は、最低賃金を18年に16.4%上げ、19年にも10.9%と大幅に上昇させ、労働時間も週60時間から52時間に減らしたことから、中小零細企業や製造業を労働コスト増が襲い、失業率を上昇させている。
文氏はその対策に、公務員増と高齢者の短期公務員採用をはかり、中小零細企業に対して救済措置をとるなどして、失業率の上昇を非生産的分野で抑制した結果の数値であり、実質はさらに悪化している。(この間、高齢者の2年間限定の短期公務員採用だけでも30万人を超えている)

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青年失業率(15~29歳)
4月の青年失業率は11.7%も4月としては19年ぶりの高さだという。これは産業全般において、賃金も比較的安価な青年層の雇用も損なわれていることを示している。
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