宮崎県の伝統工芸品「宮崎漆器」の製作を障がい者の就労支援として手がけてきた社会福祉法人宮崎県大島振興協会(宮崎市、法人番号:6350005000599)が、2026年9月14日、宮崎地裁から破産手続き開始決定を受けた。
同法人は、障害者支援施設や就労継続支援B型事業所を運営するとともに、「宮崎漆器工房」で障がい者とともに漆器を製作。法人自身が、漆器製造を授産科目とし障がい者が製作に携わる取り組みについて「全国で唯一」と紹介していた。
宮崎漆器工房のオンラインショップは、破産開始決定に先立つ2026年6月30日をもって販売業務を終了していた。
宮崎県大島振興協会が破産手続き開始決定
社会福祉法人宮崎県大島振興協会は2026年9月14日、宮崎地裁から破産手続き開始決定を受けた。事件番号は令和8年(フ)第372号。
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法人名 |
社会福祉法人宮崎県大島振興協会 |
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法人番号 |
6350005000599 |
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所在地 |
宮崎県宮崎市 |
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法人設立 |
1957年5月 |
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主要事業 |
障害者支援施設、就労継続支援B型事業、宮崎漆器の製作など |
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主な施設・事業 |
大島身体障害者授産所、大島身体障害者通所授産所、宮崎漆器工房 |
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破産手続き開始決定 |
2026年9月14日 |
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裁判所 |
宮崎地方裁判所 |
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負債額 |
確認できず |
沖縄から疎開した琉球漆器職人が宮崎漆器のルーツ
宮崎県大島振興協会と宮崎漆器の歴史は、太平洋戦争末期までさかのぼる。
同法人の公式沿革によると、戦時中に沖縄など南西諸島から多くの人々が宮崎へ疎開。宮崎県が疎開者の就労場所として県営授産場を設け、その中にいた琉球漆器の技術者を中心に漆器製作が授産科目の一つとして始まった。
1957年5月に「社会福祉法人宮崎県大島更生指導協会」が設立され、地域の生活困窮者らの就業の場を確保。その後、1962年に大島授産場を開設した。
1973年には法人名を現在の「宮崎県大島振興協会」へ変更するとともに大島身体障害者授産所を開設。1981年には大島身体障害者通所授産所を開設し、漆器製作を障がい者の就労・授産事業として継承してきた。
障がい者が製作する「宮崎漆器工房」
同法人が運営してきた「宮崎漆器工房」では、就労継続支援B型事業の一環として、障がい者が宮崎漆器の製作に携わっていた。
宮崎県の福祉事業所資料によると、大島身体障害者授産所では、漆器の下地付け、研磨、堆錦(ついきん)加飾などの作業を実施。大島身体障害者通所授産所でも宮崎漆器の製造のほか、受託作業や編物などを行っていた。
堆錦は、色漆などを用いて文様を作り、漆器表面を装飾する琉球漆器由来の技法。宮崎漆器工房では、ハイビスカスや花などをあしらった皿、箸、盆、名刺入れ、宝石箱など、日用品から贈答用品まで幅広い漆器を製作・販売していた。
同法人は、この取り組みについて、漆器製造を授産科目とし、障がい者が製作に携わる「全国で唯一」の漆器産地と紹介していた。
障害福祉と伝統工芸を約70年にわたり結ぶ
同法人の障害福祉事業では、施設入所支援、生活介護、就労継続支援B型などを提供してきた。
法人公式資料では、大島身体障害者授産所について施設入所支援30人、うち生活介護10人、就労継続支援B型20人、大島身体障害者通所授産所について就労継続支援B型20人の定員としていた。
2025年10月にハローワークへ掲載された求人情報では、法人全体の従業員数を19人とし、生活保護施設、障害者支援施設、就労継続支援B型を運営。当時約50人の利用者が宮崎漆器の製作を通じて自立生活に向けた訓練に取り組んでいるとしていた。
法人設立から約69年、宮崎漆器の製作と障害福祉を結び付けた特徴的な事業を長年続けてきたことになる。
2025年には「閉所に向けた話し合い」との現地記録も
事業継続をめぐっては、破産の前年から厳しい状況をうかがわせる記録が残っている。
2025年6月に宮崎漆器工房を訪問した博多漆芸研究所は、当時、工房側から「閉所に向けた話し合い」の途中にあるとの説明を受けたと記録している。
同訪問記では、工房を取り巻く課題として職人の高齢化、授産施設としての運営の厳しさ、後継者育成の難しさ、県などからの記念品の大量注文減少などが紹介されている。
ただし、これは第三者による現地訪問時の記録であり、宮崎県大島振興協会が今回の法人破産について公式に発表した原因ではない。これらの事情を直接的な破綻原因と断定することはできない。
宮崎漆器工房、2026年6月にオンライン販売終了
宮崎漆器工房は2022年に公式オンラインショップを開設し、宮崎漆器をインターネットでも販売していた。
しかし、公式オンラインショップは2026年6月30日をもって販売業務を終了。同日をもって商品に関する問い合わせやサポートも終了したと告知している。
オンライン販売終了から約2カ月半後となる9月14日、運営法人の宮崎県大島振興協会が破産手続き開始決定を受けた。
宮崎漆器や福祉施設の今後は確認できず
2026年9月現在、宮崎県大島振興協会や宮崎漆器工房の旧公式サイトはインターネット上に残っている。また、一部の福祉施設検索サイトなどにも大島身体障害者授産所、大島身体障害者通所授産所の情報が掲載されている。
ただし、これらの掲載が残っていることだけをもって、破産手続き開始後も従来通りの事業が継続していると判断することはできない。
現時点で、同法人が運営してきた障害福祉サービスや宮崎漆器工房が、別の社会福祉法人、企業、団体などへ事業譲渡・承継されたことを確認できる公表情報は見当たらない。
また、「宮崎漆器」は地域の伝統工芸品を指す名称であり、今回破産した法人そのものの名称ではない。このため、今回の破産をもって宮崎漆器そのものが消滅したと断定することもできない。
負債額や破綻の直接原因は確認できず
宮崎県大島振興協会の負債総額や破産申立てに至った具体的な資金繰りの状況、福祉事業全体の収支などについては、現時点で裏付けの取れる公開情報を確認できない。
職人の高齢化や宮崎漆器工房の運営上の課題を伝える過去の記録はあるものの、それらと法人全体の破産との因果関係は確認されておらず、破綻原因については今後明らかになる情報を待つ必要がある。