韓国の統計庁によると9月の失業率は3.6%で、前年同月比▲0.3ポイント悪化した。9月としては2005年(3.6%)以来の高さとなった。
(韓国での失業率は、15~64歳の就業者人口が分母だが、分子には、その別枠の高齢者が多く就業者し算入されており、失業率を大きく押し下げている。また短期バイトも就業者としてカウントされる)
一方、若年層(15~29歳)の失業率は8.8%と、0.4ポイントと改善した。
就業者は、前年同月比4万5千人増だった。8月の3千人より増加したものの、増加幅は今年2月から8ヶ月連続で10万人を下回っている。
昨年は毎月30万人以上増加しており、今年からの最低賃金の大幅増など所得主導経済成長政策による「雇用大惨事」となっている。
今年9月には、消費財生産・流通分野で雇用が増える秋夕直前に調査をしたものの、結果は良くなかった。失業者は9ヶ月連続で100万人を上回っている。
最低賃金引き上げの影響が大きい卸小売・宿泊・飲食業などで▲31万6千人の雇用が消えた。生産と消費の中枢の役割をすべき30~40代の就業者は1年間に▲22万7千人減少した。
<官庁主導の雇用、それも短期で率低下>
文政権はこれまでに雇用対策に税金54兆ウォン(5.4兆円)を投じてきたものの、官庁の雇用増加や最低賃金増による企業救済策がほとんどで、企業が採用増を図るような経済政策はない。
文大統領自らの社会主義政権に逆行する企業の活性化を狙った規制緩和も、スタッフの左派学者や労働界出身者に揉み消されたのか、対北朝鮮外交に霧消霧散してしまった。
業種別の就業者数をみると、事業施設管理・事業支援・賃貸サービス業、卸売・小売業、宿泊・飲食店業なども減った一方、保健業・社会福祉サービス、情報通信業、農林漁業などは増加した。
保健業・社会福祉サービスの増加については、公共団体の雇用対策によるもので、高齢者雇用が中心、それも一時的な雇用という。
慌てた政府は「大統領府の指示」として3万人雇用を打ち出し、公共機関に対して2ヶ月~1年以内の臨時職インターンを多数採用するよう要請(=圧力)している。すでに、韓国土地住宅公社(LH)、韓国鉄道公社(KORAIL)、韓国農漁村公社などが「賃貸住宅探し補助員」「体験型インターン」といった名目で数千人規模のアルバイト採用を始めている。韓国南東発電は5万人、山林庁は2万人の雇用を創出するという。
政権与党の共に民主党の市長のソウル市も、今年上半期に5000人雇用したというが、実態は禁煙区域監視といった日当4万5000ウォンの「高齢者バイト」が大半だったという。
こうした政府機関によるアルバイト雇用により「雇用統計粉飾」と囁かれ、政治的な「統計主導成長」となっている。
それでも韓国政府は回復傾向が続いていると、国内経済ではなくサムスンとSKに支えられた貿易統計だけ見て基調判断していたが、10月になってやっと「輸出と消費は堅調な流れが続いているが、投資と雇用が振るわない」とはじめて雇用の少なさを認めた。
8月26日には、政府に忖度しなかった左派系の統計庁長官を首にして、政府に忖度してくれる左派系労働機関紙関係者を新長官に抜擢している。
韓国経済は、設備投資も8月は前月比▲1.4%減少し、6ヶ月連続してマイナス、これはアジア通貨危機が起きた1997年から98年にかけ10ヶ月連続減を記録して以来の長さとなっている。
また、昨年まで雇用を牽引していた建設業も、企業の建設投資が前月比▲1.3%減少し、建設業の採用も増加していない。
韓国政府は、雇用対策予算の半分でも公共投資にまわしていたら、経済波及効果もあり、雇用もここまで減少することはなかったと見られる。
最低賃金増は来年も2桁増であり、今年の最低賃金増=コスト増の経済への影響も物価上昇として、本格化してくると見られている。
韓国の汎用性製品は、そのコストパフォーマンスで世界市場を席巻してきたが、そのコスパが、文政権により剥がされ、先進国製品とまともに競争することになる。
更なるコスパ力がある中国製品は、その品質レベルを限りなく上昇させ続けており、韓国製との品質差はなくなるばかり。
韓国企業は当然、生き残りをかけ、来年も労務費コストが大幅に上昇する韓国を捨て、労務費コストなどが大幅に安いベトナムなどへ大移動している。