アイコン いよいよゼネコン淘汰時代の再来か

JC-NETでは、先般スーパー・中堅ゼネコンのランキング表を掲載、またゼネコンの第③四半期の状況も個々に掲載してきた。そうして作成した資料は、今回の不況のゼネコンに与える状況とゼネコンの体力を見るためのものであるが、ゼネコンによって悲喜こもごも。スーパーゼネコンや中堅ゼネコン大手は、不況のほか海外事業のリスク問題や採算悪化問題も抱え2重に苦しみ、マンションに傾注していたゼネコンともども業績を悪化させている。しかし、そうしたなかでも売上を殆ど落とさず、利益も確保しているゼネコンも多くあることから、会社の営業方針により、各ゼネコン自体が大きく異なることも見て取れる。

<ゼネコン上位37社比較>
先表(ゼネコン37社)の08年期の売上高合計は15兆59百万円、09年期の売上高合計予想は14兆16百万円、率にして丁度10%減じている。経済動向が一番表われやすい建築業界であり、10%という数値が業界の不況を表している。利益は損益分岐点等の観点からそれ以上に悪化していると思われるが、実態は前期、鋼材等の建築材料の暴騰から粗利率が損なわれた分や不動産ミニバブル崩壊による所有不動産の評価損などもあったことから赤字転落企業も多く、今期(09年期)はそうしたこともなくなり、赤字であったゼネコンも黒転しているところが殆どである。
 
<株価ランキングに見る整理淘汰の予兆>
ゼネコンランキング株価編では、50円の券面を割り込んだゼネコンもあり、前回のデフレ時代(00年~04年)の再来の様相である。ところがここでも前回のゼネコンの整理淘汰は少なからず、本バブルの後遺症を抱えていたゼネコンの淘汰であったが、今後発生してくるであろうゼネコンの淘汰は、完全に不況や時代にそぐわない経営方針によるもので前回とは相違するものとなろう。
 
<今後の見通し>
 ゼネコンでも、主たる事業が土木・マリコン・建築など各ゼネコンにより大きく異なる。また海外進出組とそうでないゼネコンでも、今回の世界的な経済不況の影響度合いは異なる。また日本の場合は、政権交代により、国家予算の配分も大きく変わろうとしている。特にダムや道路建設など中堅以上の大手が得意とする分野であり、土木工事を得意とするゼネコンにはその影響も生じてくる。まったく明るい材料が見当たらないのが、現状のゼネコン業界である。
 
<スーパーゼネコン等の新たなモデル>
 今回の不動産ミニバブルで、破綻寸前の長谷工が、自社開発を止め(金融機関により止めさせられたのが実情)、土地を仕込んで大手を含むデベロッパーに持ち込み開発するというモデルを事業化して成功を納めている。開発するといっても企画・設計施工の分野にとどまり、事業主ではなくリスクを回避する。そのため07年3月期・08年3月期には膨大な黒字を計上、前期は開発用不動産の評価損もあり、特損で赤字になっているが、それまでのイケイケドンドンの長谷工体質を変えたことにより蘇っている。同社の開発の特色は、間違いない大手デベが共同開発メンバーに必ず入っていることである。新興大手デベがこれまで多くズッコケたが、新興デベが潰れ抜けても関係なく、大手デベが入った共同開発であったため現場は続けられたのである。
 
連結/百万円
01/3
02
03
04
05
売上高
458,918
446,718
453,863
468,018
506,954
経常利益
14,783
13,417
15,977
33,941
39,750
当期純損益
95,309
122,631
5,021
15,543
48,141
 
06
07
08
09/3
 
 
622,396
723,118
745,074
505,500
 
 
53,135
63,046
53,103
12,444
 
 
47,689
33,695
22,384
7,596
 
 (※2001年3月の債務免除額は1,636億円、債務免除累計額は2000年3月期に実施された1,910億円とあわせ3,546億円)
 
スーパーゼネコンもこれまで共同開発事業を数多く手掛けてきた。SPC型の開発事業は、ゼネコンにとって、建築現場の確保と清算時点の高配当が期待でき、実際それを享受してきた。東京の都心部の再開発案件は、開発から完成まで最低でも3~5年を要しているが、建物の購入先は事前に大手で決定しており、その配当も確実性が高い。ただマンション絡みの開発は都心部から離れた場合、どういう開発形態であろうと苦労しているのが実情であり、事業主参加型の危険性も大きい。
 福岡でも、デベロッパーに対して金融機関が融資をしなくなったことから、デベはゼネコンに建築代金を求め、共同開発という形で開発を進めた。しかし、ゼネコンはマンションが売れなければそのままリスクを抱えることになり、今回の不況突入では、儲けを度外視して販売掛けたことから、デベもゼネコンも殆ど儲からなかった。一番顕著な例がデベと建築会社に化けた丸美(本業はマンション管理会社)が組み、多くの分譲マンション開発を手掛けた事例である。ところがデベと丸美がジョイントした物件が売れず、丸美は豊富に蓄えていた資金を瞬く間に枯渇させた。資金繰りのため偽装社債券まで販売して219億円という大きな被害と負債を残して破綻した。
スーパーゼネコンのような投資対象が東京都心ならば問題も少なかろうが、福岡ではど真ん中でもリスクは高い。地方では成立しないゼネコンの投資案件である。
 
今後、公共投資予算は政権交代で一段と減じる。企業の設備投資は、国内や外国の景気が回復しない限り当然縮小する。残念ながらゼネコンにとって明るさは見えてこないが、分譲マンションはかなり完成在庫が減じてきている。
実需を喚起すべく、福銀始め金融機関が、デベへ開発資金を融資するときでもある。地方の景気対策からも金融機関は適時な且つ前向きな融資をデベや企業にお願いしたいものである。
[ 2010年2月19日 ]
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