アイコン 勝間和代氏の主張/"平成デフレ恐慌"インフレ目標で防げ

 

勝間

デフレ(物価下落)がこのまま続けば、日本経済をどん底に突き落とした昭和恐慌の再来となる-。
米ウォールストリート・ジャーナルの「世界の最も注目すべき女性50人」にも選ばれたカリスマ経済評論家、
勝間和代氏(41)はこう警告する。
街は失業者であふれ、仕事があっても給料は今の半分という「平成デフレ恐慌」を防ぐには
インフレ目標政策の導入が必要と訴える。(夕刊フジ)

 

株と不動産は値下がりしないという錯覚に陥ったバブル時代。
日本列島を札束が飛び交った時代は終焉を迎え、1990年代後半以降は一貫してデフレが続いている。

デフレは企業もサラリーマンもジワジワとむしばんでいく。

「仮にマイナス2%のデフレが向こう30年間続いたとすると、給料はほぼ半減します」

デフレは「モノの価値が下がる=お金の価値は逆に上がる」という状態なので、為替の円高を招きやすい。
ギリシャの財政危機などで円高が進行しているところに、日本のデフレが加わると、加速度的に
円高が進む恐れがある。

「円高がこれ以上進んだら、日本の輸出企業は壊滅的な打撃を受ける可能性があります」

もちろん、影響を受けるのは輸出企業だけではない。

「円高が進むと、海外の競合企業の商品やサービスが安く国内に入ってくるため、輸出以外の産業でも
業績が悪化します。大企業の業績が悪化すると、そこに品物を納める中小企業の経営はさらに苦しくなる。
日本の労働者の3分の2は中小企業で働いているため、悪影響は大半のサラリーマンに及びます」

物価が下がると、企業のもうけも減り続ける。
業績不振に陥れば、企業は生き残りをかけてリストラを断行することになり、雇用は悪化。
賃金も減ることになる。

このような状態がずっと続くと、どのようなことが起きるのか。勝間氏の見立てはこうだ。

「最終的に日本企業は国内に生産拠点を維持できなくなり、空洞化が進みます。
下請けの中小企業も含めて国内の雇用はますます厳しくなる。これはもう『昭和恐慌』そのものです」

昭和恐慌とは、1930年代に政府の緊縮財政や実質的な円高政策によって起きた深刻な経済危機のこと。
株式相場の暴落や農産物などの物価の急落を招き、企業倒産や失業者が続出。
農村では娘の身売りや家族の離散も相次いだ。

「平成デフレ恐慌」を回避するには何よりもデフレからの脱却が必要。どうすれば脱却できるのか。

「政府が物価上昇率または名目経済成長率のターゲット(目標)を設定します。
変動が大きい食料品やエネルギー価格を除いた物価上昇率が2~4%、名目成長率なら4%とすべきです」

つまり、インフレ目標政策を導入すべきというわけだ。

物価を目標値まで上昇させるには、日銀に
(1)長期国債の買い切りオペレーションの上限撤廃
(2)ゼロ金利・量的緩和政策への復帰
(3)買い入れ資産の対象を中小企業のローン債権や外債に拡大
-することなどを継続的に約束させることが重要で、日銀のあり方を定めた日本銀行法の再改正が必要
だと勝間氏は提言する。

一方、デフレと並んで日本経済の不安材料になっているのが、財政赤字問題だ。
3月末時点の国の借金は約883兆円に達し、財政破綻も心配されている。
勝間氏が財政問題をどうみているのか聞いたところ、意外な答えが返ってきた。

「(日本の財政は)破綻しません。
財務省は増税するために財政危機を演出していますが、だまされてはいけません」

公認会計士でもある勝間氏は、国の財政を次のように“監査”してみせた。

「日本の債務総額は確かに900兆円弱ありますが、政府が持つ資産は600兆円にも達しています。
たとえて言うなら、『9億円の借金があって大変だ!』と言っている人が、実は6億円の豪邸に
住んでいるという話です。
日本の場合、その豪邸は特殊法人と呼ばれていて、そこには官僚のOBのみなさんが住んでいます。
特殊法人を全廃し、政府のバランスシート(貸借対照表)を縮小すれば、国の借金はいくらでも減らせる」

 最後に、生活防衛術にも詳しい勝間氏にデフレ時代を生きるサラリーマンへのアドバイスを求めたところ、次の3点を挙げた。

(1)住宅ローンは禁物
「デフレ下では家は持たないほうがいい。リストラに遭って住宅ローンが払えなくなり、
いざ売ろうと思っても売れるかどうか分からない。住宅取得のための税金は高く、管理費や修繕費も
かかりますし」

(2)パソコンは買っても車は買うな
「家計が苦しいとはいえ、必要なところには投資を惜しまない。節約とケチは違う。
たとえば私は、ノートパソコンをよく買い替えます。これは投資財だからです」

(3)教育費は年収10%まで
「子供にかけた教育費は6%の利回りで返ってくるというデータがあります。
親にとっても、子供への教育費は良い投資といえます」

◆熊野英生・第一生命経済研究所主席エコノミストの話 「日銀は以前なら常識外れといわれたところまで
金融緩和政策を行っているのに、インフレになっていない。金融緩和が足らないと日銀に精神論で
ムチを打っても、効果はないだろう。デフレ脱却には企業が払う賃金を持続的に増やすことが重要だが、
日本は人口減少が足かせになっていて簡単ではない。人口問題に取り組んで、外国人観光客から
お金を呼び込み、ベンチャー企業を税制で優遇するなど地道に努力するしかない。
2、3年でデフレ脱却できると考えるのは間違いだ」

◆岩田規久男・学習院大経済学部教授の話 「(勝間氏がデフレ脱却法として挙げた)インフレ目標政策とは、
中央銀行が2%程度のインフレ率を中期的に維持することをコミット(約束)することにより、
人々のインフレ予想を安定化させる政策です。これを採用した国はどこも良好な経済成果を挙げてきた。
日本もこの政策により、人々のデフレ予想を穏やかなインフレ予想に変える必要がある。
1990年代以降の経済停滞で、いまだに試されたことのない唯一の不況対策はインフレ目標政策だけ。
今はそれを試してみるときだと思います」

■勝間和代(かつま・かずよ)
1968年12月生まれ、41歳。東京都出身。慶応大商学部を卒業し、早稲田大大学院を修了。
米監査法人アーサー・アンダーセン、米コンサルティング会社マッキンゼー、JPモルガン証券などをへて、
2007年に独立。
シンクタンク「監査と分析」代表取締役。
内閣府男女共同参画会議議員、中央大ビジネススクール客員教授も務める。
05年、ウォールストリート・ジャーナルの「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれる。
著書に「お金は銀行に預けるな」「日本経済復活 一番かんたんな方法」(共著)など。

ソースは
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100525/mca1005252243024-n1.htm 
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100525/mca1005252243024-n2.htm 
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100525/mca1005252243024-n3.htm 
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100525/mca1005252243024-n4.htm 

[ 2010年5月26日 ]
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