アイコン 金融円滑化の実施状況と今後の見通し 申し込み47万件超(6月まで)

8月の倒産件数において、不況型倒産が過去最高に達しているが、これまでと今後の見通しを・・・・。

<これまでに中小企業対策として採られた措置>
2008年10月自民党政権により不況対策として実施されたセーフティネットにおける保証枠は、緊急保証枠が20兆円に拡大され、別途セーフティネット貸付が10兆円の計30兆円の中小企業対策が採られてきた。
しかし、これらのセーフティネット資金が貸し出されてきたものの、リーマンショックに対する緊急中小企業対策として、民主党政権により、昨年12月から金融モラトリアム法(金融円滑化法、「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」、2009年11月30日成立,2011年3月31日までの時限立法)により、中小企業は金融機関からの借入金の5年間返済猶予措置(申請主義)が採られている。
以上の経過措置を踏まえ、大幅に中小企業の破綻が減少しているものであり、また大企業もADR等の措置が取られ、これまでなら破綻していたと思われる企業の多くが生き延びている。

<これまでの経済>
小泉政権が採った不動産インフレ政策により、不動産関係会社の景気は回復してバブル化、外需も中国経済に牽引され伸長、国内の設備投資も外需の恩恵から外需関連の設備投資も上昇に転じていた。 不動産関係・外需関連以外で最も経済を牽引する消費者支出(GDPの57%)は、可処分所得が増税により減少し続け、百貨店・スーパー等の売上高は頭打ちから減少し続けた。そうした内需経済を背景に、中小企業の景気は、リーマンショック後、不動産ミニバブルが崩壊して急速に悪化、不動産業・建設業・百貨店・スーパー・外食産業・広告産業など不景気業種は拡大し続けている。
こうしたことから、中小企業は一時的にセーフティネット資金を簡単に手に入れたものの、肝心の仕事が減り続け、セーフティネットの借入金も既に底をつき、不況型倒産が増加し始めているのが現状である。
一方で、昨年12月から始まった金融モラトリアムの申請件数は、6月末47万件以上に達し、その額も15兆円を超えている。申し込みは今でも大幅に増加中(期間09/12~11/3月)であるが、借金返済の猶予期間中であっても、早期に各業種の景気が回復しなければ、総体で減少し続けている倒産件数が、不況型倒産で増加に転じてしまう惧れが非常に高くなってきている。
大手企業は、ADRなどで返済猶予・債務免除・DESなどにより、財務内容を改善させて生き延びようが、中小企業の場合は、景気が回復しなければ、財務内容は悪化するのみである。
今日の経済状況は、これ以上外需も期待できず(工場の海外移転も含め)、円高・株安も加わり、中小企業には単価安攻勢・デフレが押し寄せ、中小企業の薄利経営は息切れ状態、整理淘汰の波が、金融モラトリアム法の施行にもかかわらず、半年後を境目として押し寄せてくるものと思われる。

<金融円滑化法の申込状況>(金融庁資料に基づき作成)

金融円滑化の状況 2010/6月
/億円
スーパー11行
地方銀106行
其他銀26行
合 計146行
申込件数
105,133
363,060
6,622
474,815
申込額
53,435
102,582
1,109
157,126
実行件数
83,459
301,712
5,567
390,738
実行額
44,834
89,190
935
133,959
謝絶件数
2,952
8,637
241
11,830
謝絶額
1,586
2,197
58
3,841
審査中件数
14,902
38,932
263
54,097
審査中額
5,671
9,522
71
15,264
取下件数
3,820
13,779
551
18,150
取下額
1,342
2,668
44
4,054
実行率①
96.60
97.20
95.90
97.10
実行率②
79.40
83.10
84.10
82.30
実行率=実行件数/(実行件数+謝絶件数)
実行率=実行件数/申込み件数。 

金融モラトリアム(金融円滑化) 最長5年間返済猶予 申込
/百万円
09/12
10/3月(累計)
10/6月(累計)
平均
申込数
申込額
申込数
申込額
申込数
申込額
 
福岡銀行
1,144
53,359
4,179
219,253
7,441
387,876
52.1
西日本シテ
769
24,707
2,672
89,534
4,464
155,098
34.7
佐賀銀行
379
8,854
1,481
42,330
 
 
28.6
山口銀行
862
32,660
3,168
105,245
5,344
177,888
33.3
三井住友銀行
 
 
 
 
35,258
1,340,962
38.0

 申込みは、金融機関が事業計画さえ了承すれば、最長5年間の元本弁済の猶予措置が受けられる。但し金利は支払う。(返済猶予を願い出れば、金融機関は新規の貸付は渋るものと思われる)

 

金融円滑化法による借入金の返済猶予申し込みは、6月までの7ヶ月間で47万件以上に達しており、最近は周知されてきたのか増加している。資金繰りに厳しい企業は、銀行と相談しながら、早期に申し込みをお薦めしたい。
 

[ 2010年9月 9日 ]
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